君が居るから僕が居て。
僕が居るから君が居る世界。
それがとても、心地よくて、大好きなんです。
君は僕の、僕は君の
『今日ヒマやねん、遊ぼう』
そんな単純なメールが俺の携帯に届いた。
普段ならきっと、喜び勇んで返信するメール。
けれど、俺は。
今日の俺は、どこか変だった。
さっきの仕事先の偉い人の言葉が、耳に張り付いている。
メンバーは気にしなくていいって言ってくれたけど、それでも。
雨が家に当たる音さえも、それを消し去ってはくれなかった。
体育座りで、膝を抱えてため息。
こんな落ちた俺を見たら、光一はどう思うだろう。
似合わないと笑うんだろうか。
ソイツ超ムカつくヤツやな、と憤慨するんだろうか。
・・・どっちも、ヤだな。
だって、笑われるのはもう嫌だし。
光一が怒るのだって、それと同じくらい嫌だから。
ぱたんと携帯を閉じ、見なかったことにした。
寝てた、と言えばいい。
仕事で疲れて爆睡してたってことで。
とにかく他の人と話をするという行動が面倒で、俺はぷちん、とテレビの電源を入れた。
繋いだままのゲーム。
そういやまだあそこクリアしてないっけ。
コントローラーを手に、体育座りのままゲーム再開。
ぴんぽーーーん
誰だよ、タイミング悪いな。
ああもう、無視無視。
ぴんぽーーーーん
しつこいな。
新聞の集金ならもう払ったし。
光熱費も水道代も電気代もちゃんと振り込んだって。
天気も悪いしさ、こういう時はみんな休めばいいのに。
「おらんのか長瀬ー」
ドアを挟んで聞こえてきた声に、俺は思わずコントローラーを落としてしまった。
ゴトッと大きな音がして、それを来客はしっかりと聞き取ったらしい。
居留守すなやー、とドアをガンガン叩き始めたから、慌てて玄関に行ってドアを開けた。
そこにはビニール傘を差した光一がいて。
よ、と穏やかな笑みを見せると、勝手に上がってきた。
うわ。
「な、何で??」
「あれ、さっきメールしたやろ?遊ぼうって」
「そ、だけど・・・って、あ」
「見てないはず無い思て。返信無いからいいんやなーと」
駄目?と尋ねられてぶんぶんと首を振る。
確かにそう取られても仕方ないと思う。
そんな俺を気にも留めずに、光一は手に持っていた買い物袋を漁ると、あるものを俺に差し出した。
あ。
「イチゴ牛乳だ!」
「せやで〜いっつも飲んどるん買うてきた」
「たまに飲みたくなるんだよねぇコレ」
「やろ?」
パックのイチゴ牛乳はいつも光一の家にいくと出してくれる飲み物で。
俺しか飲まないから需要が低いって光一が笑ってた。
袋からストローを出して、ちゅーちゅー吸えば、ほんのりとイチゴの味。
隣では光一も俺と同じことをしてた。
吸ってるから、当然無言になる。
ちらっと目をやれば、目が合って、自然と笑顔になった。
傍から見たら変かもしれない。
でも、光一の家の俺はいつもこんな感じだから。
飲み終わったパックはくしゃ、と潰して捨てた。
光一も同時に飲み終わったから、彼の分まで一緒に。
やることがなくなった俺は、さっき中断していたゲームの続きをすることにした。
コントローラーを手に、やり進めていく。
一人でやってた時よりも、ほんの少しだけ楽しい。
別に一緒に盛り上がってやってるんじゃないのにな。
そういえば、さっき言われた言葉もやんわりと薄らいでいる。
珍しく、太一くんが優しくて。
珍しく、怒ってるマボをぐっさんが止めなくて。
・・・そんでもって、珍しく、リーダーが笑ってなかった。
『長瀬くんは顔がいいから黙って座って笑ってればいいんでしょ?楽だよねぇそんなんでお金貰えるんだから』
いつも、なら。
俺はその言葉にだってへらりと笑ってそうですね、って言ってた。
けど、今日は違った。
俺は俺なりに頑張ってるのに、どうしてそんなことを言われなきゃいけないんだろうって思った。
笑えなくて俯いた俺の横で、凄ぇマボが怒ってて。
すいませんねコイツ阿呆だから短気で、って笑いながら言うぐっさんの声が無くて。
太一くんが俺の腕を引っ張るようにして、二人で部屋の外に出て。
あんなもん気にすんなお前の良さは俺たちが一番知ってるから、って。
震える声で言う太一くんは、半分泣いていた。
マボが怒ったことで相手側のお偉いさんはヘソを曲げ、仕事は無くなり。
楽屋に戻った時、ごめんな、って。
ぽつりとマボが言った。
俺の所為で仕事無くなっちまって、ごめん、と。
そんなマボの肩を叩きながら、俺ももう少しでアイツぶっ殺すところだったから気にすんなって、ぐっさんが怖いことを言い。
太一くんはあー清々した!サンキューマボ!と言いながら背中をぶっ叩いていた。
・・・俺は、何も言えなかった。
多分、あの場所で気にしてないよって、笑えればよかったのかもしれないけど。
そうする余裕すら、無くて。
帰り際、リーダーが俺の頭を優しく撫でながら言った。
お前が笑っとらんと何やこっちまで寂しくなるなぁ、って。
何だかお父さんみたいだった。
ゲームの効果音だけが鳴り響く部屋。
外の雨が奏でる音が、それにハモっている。
そういえば、と俺は光一を放置していたことを思い出した。
せっかく遊びに来てくれたのに、一人にしちゃった。
「光一・・・っ」
慌てて振り向いた俺の前には。
ソファに埋もれて眠る、光一がいた。
「・・・・・・何しに、きたんだろう?」
こてんと首を傾げてみるも、何も考え付かない。
さっき来た時だって暇だったから、としか言わなかったし。
でも、寝るなら家の方が落ち着くと思うんだけど。
・・・何で、俺ん家?
とりあえずそのままにしておくと風邪引くから、手頃な毛布をお腹にかけてやる。
そんでもって、観察してみた。
光一、一応王子さまなのになぁ。
寝てる顔とか、全く王子さまじゃない。
ぐーとかイビキ掻いてるし。
至ってマイペースな彼を見ているうちに、何だか自分の悩みが馬鹿馬鹿しくなってしまった。
何ウダウダ気にしてんだろ、俺。
俺をどう思っている人が居ようと、俺には自分を分かってくれる仲間が居て。
どんなことが起きてもマイペースな光一が居て。
そして、自分のことが好きな自分が居る。
それでいいんだよな、きっと。
俺は独りぼっちになったわけじゃないもん。
うん。
「光一〜〜〜!」
「・・・んぁっ!な、何やねんっ」
「俺、元気出た!」
「・・・元気無かったんか?」
「そう!でも、出た!」
「そっかぁ。よかったなぁ」
何か分からんけども、と呟きながらも、光一は俺の頭を撫でてくれた。
寝てる光一見てたら元気出たっていうのも不思議な話だけど。
光一の存在は確かに、俺の中を照らしてくれる。
必要不可欠な、存在。
「光一が居てくれてよかった、俺」
「俺も長瀬が居てくれてよかったわー」
「え、ホント??」
「おん。やって暇潰しに困ること無いもん」
「・・・暇、潰れてるの?」
「長瀬のゲームやってる後姿見てるとよく眠れるんや。家だと全然やのに」
「何で?」
「知らん」
「そっかー」
・・・俺も。
俺も少しは光一の中を照らす存在になっているんだろうか。
そう尋ねたら、少なくとも寝やすい環境にはなってるな、って言われた。
安心して眠れる場所。
それが光一にとっての、俺。
何だかちょっと嬉しくなった。
そして、もう。
俺の耳に届くのは、ゲームの音と雨音だけで。
眠そうな光一をもう一度夢の中に戻す為、俺は再びコントローラーを手に取るのだった。
END
雪光さまリクエストで『現実設定の長瀬&光一、雨をアイテムとして使用』でしたー!
って、ちょ、これ、大丈夫です か・・・?(オロオロ)
とりあえずNeighborシリーズで適当に書き始めたコンビだったものですから、光ちゃんの性格がなかなか分からず。
雪光さまのメールの中にあったお話は、個人的解釈で『一緒に居て和む相手』のような形にしてみました。
ただ存在しているだけで、お互いがお互いの道を照らしあってるんじゃないかな、と。
二人とも天然っ子なのであまりそういうのには気づいてないというか。
ううーん、何だか自分で言ってることがどんどん分からなくなってきました(え)
何にせよ少しでもご希望に添えていれば嬉しいです。
雪光さま、10万打リクエストありがとうございましたー!
・・・さて、みなさま。
マボやんの行方は気になりませんか?(え)
親友コンビを書いていると悪友まで書きたくなるという管理人をお許しください(笑)
ってことで、気になる方は短いですがこちらからどうぞ。
2007.10.1