長野くんの車でたどり着いたのは、小さな幼稚園だった。
料理が上手だって言うから、てっきりレストランかなんかかと思ってた。
降りるとこっちだよ、って手招きされて。
門の前で手を振ってる人に向かって歩き出す。
エプロンをした、ちょっと強面の男の人。
あの人が、長野くんの友達なのかな。









「さかもとせんせい、さよーならー」
「はい、さよならー」






「またあしたねー」
「あしたなー」






「さっかもっとせんせー!」
「・・・・・・・・・・長野ぉ」













呆れたように肩を落とす彼(坂本さんって言ってたよな)に。
笑って接する長野くん。
何かを話しているようだけど。
どこか、違和感を感じた。
なんだろう。
楽しそうじゃないっていうか。
笑ってるのは長野くんだけで、坂本さんはただそれを真顔に近い感じで聞いてる。
本当に仲、良いのかな。













あ、こっちみた。










ぺこりと頭を下げてみれば。
一瞥されて。
それからくるりと踵を返される。
























・・・・は?




















「長野くんっなにあの人っ!」
戻ってきた長野くんに思ったことを吐き出す。
だって。
俺、ちゃんと挨拶したのに。
あの人無視したんだから、悪いのあっちでしょ。
「今仕事中だから戻っただけだよ」
「だけどさー!」
「気にしない気にしない」
ぽんぽんと頭を叩かれる。
こども?俺子ども扱いされてんの??









「仲いいの?あの人と」
さっき思ったことを素直に長野くんに聞いた。
一瞬、長野くんの目に焦りと戸惑いが浮かんだのを、俺は見逃さなかった。
「なに、やきもち?よっちゃん」
「よっちゃんって何?!」
「井ノ原快彦だから、よっちゃん」
「だから俺は子どもじゃないんだってばー!」
・・・上手くはぐらかされちゃったけど。







































「悪ぃ、遅くなった」







低めの声が横から聞こえて、バッと振り向く。
ラフな格好で立っている男の人。
幼稚園の保父さんとしてはかなり、顔怖い。







「あのー」
恐る恐る声をかけてみる。
っていうか。
さっきのあの態度に張り合いたくなったというか。
「なんだ」
「子ども、顔見て泣いちゃったりしません?」





あは。
これ絶対この人の地雷。
聞いた瞬間にぴくっとでかい反応するんだもん。
「・・・・・長野、コイツ殴っていいか?」
ぎぎぎ、と錆びたロボットみたいに長野くんの方に顔を動かす。
聞かれた長野くんは俺達の間に割って入った。
「はいはいはい。大人の喧嘩はみっともないよー」
「だってさっきこの人俺のこと無視したっ」
「無視してねぇよ」
「したもん!」
「してませーん」
「絶対したって!」
「被害妄想の激しいヤツだな」
「ぁんだとぉ!!」





食って掛かろうとした、その時。


















「お前ら黙らないと俺の車の後ろに縛り付けて家まで転がすぞコラ」



















笑顔の長野くんの恐ろしい台詞に俺たちは同時に口をつぐんだ。
て、天使の皮をかぶった悪魔ってこういう人のことを言うんだー・・・。
そろっと隣の坂本君を見れば、目が合って。
口ぱくで長野を怒らせたらヤバイって伝えてきた。
た、確かに・・・。









「じゃ、いこっか♪」
「「・・・はぁーい・・・」」









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