泣き方を忘れた。
悲しくても辛くても、泣けねぇの。
ね、俺って冷酷?
人の痛み感じて泣くことできねぇって。
人間、失格かな。
存在価値理論
歩き疲れて、その辺にあった電柱の下に座る。
電気を発明した人って老後とかぜってぇ困んねぇよなぁってくらいの電灯の量に目がチカチカした。
なぁ、今って夜だろ。
昼みたいに明るいってどうなのよ。
お日様も商売上がったりってなもんで。
営業妨害の罪でいつか電気全部なくなっちゃったりして。
「井ノ原ぁ」
背中から声がして振り向く。
でかいガタイの人懐っこい笑みを浮かべた男。
今は同じ職場で働いている俺の、幼馴染み。
「松岡じゃん。なしたの?」
「なしたの?じゃねぇよ。お前最近なにしてんだよ」
連絡もないし顔も見せないし寂しかったんだぜって。
口尖らせて言う年はとっくに過ぎただろ。
俺もお前も、もうさんじゅっさい。
イイトシしたオッサンってやつなんだからさ。
「相変わらずひねてんなぁ」
「ひねてて結構。それある意味褒め言葉」
「もしもーし井ノ原さーん褒めてませんよー」
笑ってる。
すげー普通に。
・・・なぁ。
「んー?」
俺、お前がいてくれてよかった。
「何だよ急に」
人、信じらんなくなってもさ。
お前だけは信じられる気がすんの。
だってお前。
俺があんなことした時もずっとそのまんまでいてくれたから。
不意に。
松岡の顔が強張った。
「馬鹿、あれはお前のせいじゃねぇだろ?!」
「俺のせいだよ」
「ああしてなかったらお前、ここにはいなかったんだぞ?!」
「そっちのがよかったかもね」
誰かを犠牲にして生きてくほど、俺の命なんて価値ないから。
言った途端。
頬に鈍い痛みが走る。
後から続く、鉄の味と。
目の前にいる松岡の、傷ついたような顔。
・・・ああもう。
俺、どうしてコイツにこんな顔させちまうんだろう。
「・・・・・っにすんだ・・・」
「価値ねぇとか、言うんじゃねぇよ」
神妙な顔して。
そうやって言うの、お前くらいだよ。
でも。
怖ぇんだよ。
「お前が生きてんの、少なくとも俺だけは嬉しいんだからな」
そうやって、言ってくれる時がなくなったりしたらって。
ずっと、不安で仕方ねぇんだよ。
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