変な居候が増えた。
細目で、底なしに明るくて、天使っぽくない天使。
彼、イノハラは色んなことを喋った。
俺の好きな銘柄のお酒を口に運びながら。
・・・天使って酒飲むのか・・・?
「なぁなぁさかもろくんっ」
「なんだ?」
もはや呂律も回ってない。
顔もほんのり赤くなってるし、これじゃあただの酔っ払いだ。
「さかもろくんのさぁ、てんしのイメージ?ってどんなだった?」
「天使のイメージ、ねぇ」
まずは白い羽と金のリングは必須だろ。
それから綺麗な顔立ち。
髪の毛は金髪で、目は青か茶色。
全身真っ白な感じがするかも。
「イノハラはちょっと想像と違ったな。お前みたいな口悪くて酒飲みな天使がいるなんて、ちょっとショックだ俺」
グラスに口をつけながらそう言うと。
イノハラは悲しそうにふにゃんと眉を曲げた。
おい。
「泣くなよ」
「ないてねぇよっ」
「泣いてんだろ。想像と違うって言われたからか?」
俺の問いにふるふると首を横に振る。
泣きながらお酒をぐいっと口の中に流し込み、グラスを俺に差し出した。
「・・・っぷぁー、オカワリ!」
「ダメ。飲みすぎ」
「ちぇー」
口を尖らせながら下を向くイノハラ。
落ち込んでんのかな、と思って覗き込んでみたら。
口の端が嬉しそうに歪んでいた。
「・・・ねぇ、きいてくれる?」
グラスに酒を注いで口をつけた辺りで。
ぽつり、と。
呟くような声でイノハラが喋りだした。
「ぁん?」
「おれ、みかけすっげぇてんしってかんじ、しないっしょ?」
言われて上から下まで目線を滑らせて見る。
白い羽に、金色のわっか。
それだけで俺にとっては天使なんだけど。
「・・・敢えて言うなら顔が普通だ」
「あえていわなくてもわかってますぅ〜」
「それから口調。もっと綺麗な言葉遣いじゃねぇのか?」
ですます口調で畏まってるもんだと思ってたんだけど、と。
言ったらイノハラははー、とため息をついた。
呆れた、というよりは感嘆のため息、のような。
「・・・・さかもとくんって、ほんとてんししんじてんのね」
「・・信じてねぇよ」
「だって、ここきれいだもん」
言いながらイノハラは俺の胸元に手を置いた。
その下には心臓がある。
見えるはずないものに目をやり、イノハラは幸せそうに微笑んだ。
「・・・見えんの?」
「うん。こんなきれいなこころ、もってるひともめずらしいよ」
「へぇ」
見えないけど、綺麗って言われて嬉しくなる。
天使の言ってることだしな。
それに。
イノハラの表情が子どもみたいに可愛くて。
子どもにするみたいに頭を撫でてやると、こてんと肩に頭を預けてきた。
「・・・で、さっきの話の続きは・・・」
「・・・・・・」
「・・・・イノハラ?」
「・・・・・すふー・・・」
「寝てんのかよ」
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