四人して一緒に歩いていたら、いのっちの家が見えてきて。
じゃあ、と別れを告げようとするいのっちの声を遮るかのように。
「今日泊めてよ」
と、博が言い出した。
でも、と困った表情でいのっちが声を出したけれど。
「一人になりたくないんだ。よっちゃんと一緒に居れば、少しは安心するから」
なんて、どこぞの口説き文句張りの台詞を吐いた博を断れるわけも無く。
長野が泊まるなら俺も、と便乗してきたまーくんまで流れで泊める羽目になっていた。








この流れ、流石やな、と改めて思う。
トニセンには長い付き合いという名の流れがある。
カミセンには無い、見えない絆が。
それを上手く駆使して、博とまーくんはいのっちの家に泊まることを難なくやってのけたのだ。
きっと、剛くんや健くんや俺やったら駄目やったろうな。




































































































家の中に入り、勝手知ったるかな、二人はテキパキと寝る用意を始めた。
ソファに沈んでその様子をぼんやりと見るいのっち。
あっという間に川の字にひかれた布団構成が出来上がる。
「よっちゃん、真ん中ね」
博はそう言ってぐいぐいといのっちを真ん中の布団に押しやった。
まーくんは右。
博は左にそれぞれ寝転がって。
再び、無言になる。
















































































































































































































































「・・・・・・ながの、くん」





































































































































長い沈黙の後で。
最初に口を開いたのは、意外にもいのっちだった。























































































「ん?」
「・・・さむい」
言って、ぶるり、と身じろいだ。
今はもう春真っ只中で、寒いわけないのに。
けれど博はその言葉の隠れた意味を的確に救い上げて。
もそもそといのっちの傍に自分の身体を移動させた。





「俺も、寒い」





言いながらぴたりとくっつく。
くっついて、博の顔が小さく綻んだ。





「おれもさむい」





まーくんまでそんなことを言って、いのっちにくっつく。
三人が一箇所にまとまるようにしてくっついていたら。




















































ふへ、と。
変な笑い声が漏れた。



















「よっちゃん・・・?」
「へんなの、おれたち、いい年なのに、一箇所にくっついて」
へへへ、と笑い声が口から零れる。
ほんの少しだけ戻った笑顔に、二人が揃って安堵するのが分かった。
「寒いんだから、仕方ねぇだろ」
「そー、だね」
ふにゃり、と顔を歪めて。
いのっちは久しぶりに普段のような笑顔を見せた。
そして、笑顔がふいっと揺らいで。
あ、泣く、と思ったんだけど、いのっちはそれを堪える。
泣く代わりに二人にぎゅうっとくっついた。


























































































































「・・・岡田、どうしてっかな」
「さぁ?」
いのっちの問いに首を傾げるまーくん。
いや、ちょっとくらい予想してくれてもええやん。
「案外その辺に居てよっちゃんのこと見てるのかもよ」
ふふふ、と俺の方を指差して含み笑いをした博に、脅える二人。
いや、三人。
博の指はしっかりと俺に向かって伸びていて。
見えてるんやないの?!とかなりドッキリした。

























































































「・・・岡田ぁ?」







































いのっちが俺を呼ぶ。
博の言ったこと鵜呑みにしてどないすんねん。
まぁ、居るけど。


























「長野くんの隣、空いてるからな」


























言ってへら、と締まりなく笑う。
見えてるわけないのに、いのっちが真っ直ぐ俺を見てくるから。
そっと博の横に移動して、身体を倒してみる。

























「・・・・・・来たかな?」
「どうかな」
「来るんじゃない?岡田、ずっと一人で居るんだから寂しいに決まってるもん」
















だから、博、その確信はどこから来んねん。
・・・合っとるけど。
ずっと寂しさは感じてたけど。


























笑ったいのっちを見て、心の支えが軽くなる。
でも、まだちょっとだけ何かが残っていて、気持ち悪い。
何だろう。
博の背中を見ながら考えてみて。
ふと、気づく。



























































































いのっちがまだ泣いてへんということに。
























































ここまで来たら、泣かしたくなってくる。
っていうか、泣いて欲しい。
メンバー皆に泣いて見送られたい。
そんな欲がむくむくと心の底から湧いてきて。
どうにかしていのっちに会いたいと思った。
見えないけど。
声も聞こえないけれど。
いのっちに会って、泣けって一言言ってやりたい。









それに。
泣けば幾らか楽になるだろうから。
自分の中に悲しみをぎゅうぎゅうに詰め込むより、涙にして外に出してしまえば。
ほんのちょっとでも、楽になるから。









『夢枕にでも、立てへんかなぁ』









なんて思いながら、目を閉じた。





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2007.5.17