ディアマイフレンド
吸血鬼が無害に生きていくためには人間と契約する必要がある。
それは家族代々で引き継がれており、吸血鬼の血筋である坂本家の契約主は井ノ原家だった。
兄たちは既に契約を済ませている。
末に生まれた昌行は本日が契約の日であった。
どんなやつと一緒になるんだろうか。
昌行は不安そうに案内された部屋に座り込んでいると。
一人の少年が通されてきた。
齢は3歳くらいだろうか。
漆黒の髪と瞳を持つ、少年。
女の血を吸うことが最良ではあるのだが、別に男の血を吸っても支障はない。
しかし。
彼の問題はそこではなかった。
「お前、チビだなぁ」
大きくなるとは思えない体つきに、がっくりする。
まだ5歳だから小さいのは当たり前なのだが、骨格も細く華奢な様子が昌行には見て取れた。
血、吸ったら倒れそうだなぁ。
大丈夫なのか、ホントに。
ため息をついている昌行に。
少年は人の気も知らずにこてん、と首を傾げてから笑う。
「よしくんとおともだちになってくれるのー?」
おともだち。
自分の立場が全く分かっていない。
幼いにしてもここにくる意味くらいは説明されているはずなのに。
「俺と、千年一緒に生きていくって話、聞いてないのか?」
「せんねん・・・あ、おかーさんがゆってたよ!」
よしくんはきゅうけつきのまさゆきくんとずっといっしょにいるのよって。
「だから、ともだち!」
穢れのない笑顔でそう言われ、昌行は戸惑いを隠せなかった。
友達。
吸血鬼である自分は好かれることはないと思っていた。
本当はみんなと一緒に遊びたかったのに。
自分が近づくと誰もが恐怖に怯えた顔をするから。
いつしか距離を置いて過ごすようになった。
そんな自分に。
彼はいたって普通に声をかけてきた。
友達になろう、と。
ただ、簡単な言葉を使って。
「・・・・・・・・おぉ」
唸るように声を漏らして頷くと、彼はにかーっと満面の笑みを浮かべた。
「あのね、あのね、おなまえはよしくんだよ!」
「俺は坂本昌行。・・・お前本名は?」
「ええと、いのはらよしひこ!5歳!!」
「年は聞いてねぇよ!」
「ねーまーくんはなんさいなのー?」
「うぁ・・・ま、まーくんって呼ぶな!」
初対面後。
昌行は小さい快彦の代わりに彼の両親から彼の話を聞かされた。
身体が弱く、すぐに寝込んでしまうこと。
怖いもの知らずで一人でどこへでも行ってしまうこと。
そして。
境遇が昌行とさして大差のないこと。
坂本家も井ノ原家も人間から忌み嫌われていたことを。
「こんな、素直でいい子なのにな」
快彦は対面に疲れて眠っていた。
乱れた布団を直しながら、昌行はそっと呟く。
無邪気で人懐っこい快彦。
彼もまた、自分と同じ苦しみを味わっていたのかと。
人間なのに。
ただ吸血鬼との関わりを持っているだけなのに。
彼の両親はにこやかに言った。
よしくんの友達になってあげてね、と。
帰ってくる度にしょげている快彦が今日は始終笑顔だったのが嬉しいと。
それだけのことに胸がきゅうっと痛む。
人に声をかけても答えてもらえない、その辛さを昌行は痛いほど知っていたから。
「俺が、お前の友達だ」
何があっても、誰がなんと言おうとも。
ずっと、ずっと。
そう誓いながら、昌行は契約の印を快彦の首筋に残した。
END
2006.12.1
吸血鬼ネタでした。
書きかけの吸血鬼ネタがごっそりある中の一つです。
チビヨシとお兄ちゃんまぁくんの設定がすきですきで仕方ないです。
設定が色々あるんですが、ひっくんは後々ヨシくんが大きくなった時の友達で。
剛ちゃん健ちゃんはひっくんの血の繋がらない家族。
岡田くんはまぁくんとヨシくんの専属の医者だったりします。
これも書いていくと長くなりそうな感じ。
機会があれば書きたいですが、どうなることやら。