たまには甘えて
井ノ原くんはウザい。
多分俺の知ってる人の中で一番ウザい。
俺や健を見つけた瞬間に、あの細い目を線みたいにしてラブ光線を発射してくるのだ。
今日もソファで寝てるところを襲撃されたから、無視して寝たふりしたらダーリー剛が無視するー!と拗ねた声で坂本くんを呼びながら行ってしまった。
それが、30分前。
今、俺はどうしようもなくそわそわしている。
何故なら、俺の目の前で井ノ原くんが坂本くんと楽しそうにしてるから。
「井ノ原〜」
「なぁに〜?」
「・・・・笑って?」
「またかよーホントにダーリーは俺のことが好きだなー」
「いいから笑えよー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あは☆」
「ふはははは!相変わらず変な顔だなお前ー!」
「なによーアンタがやれっつーからやったんでしょー」
「あー・・・元気出たってか笑った。やっぱお前の笑顔はいいなー」
「でしょでしょ??」
「おー」
はたから見たらどこのバカップルだって感じのやりとり。
寝たふりをしながら薄目を開けてその様子を覗く。
っていうか井ノ原くんって不思議だ。
カミセンに絡む時は兄貴風吹かして変なオカマ言葉で飛びついてくるくせに。
坂本くんや長野くんに絡む時は急に可愛くなっちゃうんだから。
俺の時もそんな井ノ原くんなら構ってやってもいいのにな。
っていうか、何だこの言い知れないそわそわ感は。
「坂本くーん」
「ぁんだよ」
「この前俺が出てたドラマ見た見た?」
「あー・・・ビデオに録ったまままだ見てねぇや」
「えー!!どうしてだよーちゃんと見て感想聞かせてくれっつったじゃんよー!」
「悪ぃ悪ぃ。今日帰ったら見るから」
「絶対だぞ!見なかったら長野くんと一緒に襲撃しに行くからなー!」
「おいちょっとそれは勘弁してくれ井ノ原長野怖い俺」
「誰が怖いって?」
「あ、長野くんだ!」
「おおおお、お前気配消して近づくのやめろ怖い!!!」
長野くんが加わって、井ノ原くんの顔はより輝く。
まるでお兄ちゃんたちに構ってもらって嬉しくて仕方ない弟みたいだ。
ああいう風にして来たら俺だって可愛がってやるのに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああもう、なんだこれ。
どうしてむしゃくしゃしてんだ俺。
仲良きことは美しいことじゃん。
ただ、井ノ原くんの見たことのない姿を見て動揺してるだけで。
何でもないんだ。
ちょっと寂しいなんて思ってるのは気のせいなんだ。
・・・・・・・・・うん。
「あー・・・」
「坂本くんどこ行くの?」
「ヤニ切れたから補充してくる・・・」
「あ!なら俺も俺も!!!」
「よっちゃん、健に煙たがられてもいいのー?」
「うっ・・・で、でもでも俺だってドラマあるから我慢してたんだもん!!」
「おい井ノ原ー行くのか行かねぇのかハッキリしろぉ」
「行く!!行くから待ってダーリー!!」
そう叫ぶと、バタバタと慌ただしく井ノ原くんは走っていった。
むくりと身体を起こしてその背中を見送る。
同じくらいの背丈の二人が楽しそうに何かを話しながら歩いていくのが見て取れた。
・・・・・・・・・・・・・・ずりぃな、坂本くん。
井ノ原くん独り占めじゃん。
「剛、起きた?」
おはよ、と長野くんが上から俺を覗き込む。
まさか寝たふりしてたとも言えずにんーと返事をした。
喫煙場所に向かって歩く二人を見ていたら、ああ、と長野くんが何かを納得したような素振りを見せる。
「・・・・なに?」
「真剣に坂本くんと井ノ原見てどうしたの?」
知ってて聞いてきてんじゃないのこの人。
その印に顔がにっこにこ綻んでる。
長野くんがそんな顔をしている時は決まって相手の弱点を掴んでる時だから。
「・・・・・・・・・・仲いいなぁと思って」
思ったことをそのまま口にすれば、笑われた。
「なんだよー!」
「いやいや・・・・剛って可愛いな」
「・・・は?!」
井ノ原くんみたいな台詞を吐かれて反応に困る。
困ってたらぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
「坂本くんにヤキモチ妬いてるんでしょ」
「へ?!どこをどう解釈したらそういう話になるんだよ?!!」
「剛の拗ねた声と目線と真っ赤な耳と寝たふりしてる時のそわそわ感から何となく」
げ。
長野くん、俺が寝たふりしてたの気づいてたのかよ。
がーっと顔の温度が上がっていくのがわかる。
あたふたして顔を両手で覆ってみれば、手がひんやり冷たく感じた。
「べ、別に!ただ井ノ原くんが甘えんの珍しいなって思ってただけだよっ!」
「へぇ。こっちにいる時はいっつもあんな感じだけど」
「・・・俺とか健とかには甘えてこないのにさー」
「ほら、やっぱりヤキモチだ」
「長 野 く ん ! ! ! ! 」
怒鳴った俺を前にケラケラ楽しそうに笑う長野くん。
かんっぺきこの人俺で遊んでる・・・!!
「怒んない怒んない。俺でよければ相手になるけど?」
「結 構 で す ! ! ! 」
再び30分後。
長野くんのおかえりって声で喫煙室から戻ってきた二人に気づいた。
相変わらず井ノ原くんは弟の顔で笑ってて。
知らず知らず俺は膨れていたらしい。
つん、と長野くんに頬を突かれハッと我に返った俺は、腋の下に手を入れられひょいと持ち上げられた。
うお。
ぷらんぷらんと足を揺らしながら長野くんに運ばれる俺。
ハッキリ言って、ダサい。
「井ノ原ー」
「何ー?って剛ちゃん!!」
会いたかったよーと満面の笑みでハグしてこようとする井ノ原くん。
しかし、長野くんがそれを上手く交わす。
「何すんのさ長野くん!剛ちゃんを俺にちょうだい!!」
「剛は井ノ原のものじゃないでしょ」
「うー・・・ズルイー!俺が抱っこしようとしたら本気で嫌がるのに長野くんはいいのかよー?!」
「日頃の行いじゃないの?」
「俺だって毎日ちゃんといい子にして生きてるもん!!」
ぷぅっと拗ねる井ノ原くんに、長野くんは笑いながら物凄いことを口走った。
剛は甘えてくるよっちゃんが好きなんだって、と。
「なーんだ!そうなのぉ??」
拍子抜けしたとばかりのテンションで井ノ原くんがそう言い。
否定する間もなくだったら今からでも甘えてあげるvとぴったり俺に寄り添ってきた。
「剛〜」
「・・・・何、井ノ原くん」
「俺、肩揉んで欲しいな〜vv」
「・・・・・・」
「あとねあとね、一緒にシャワーも入りたいな〜vv」
「・・・・・・」
「ついでにというかこれは一番のお願いになるんだけど剛に俺の目を見て話して欲しいな〜っつーか明後日の方見るの止めて俺だけを見て剛vv」
「・・・・・・!!!!!」
甘えてくればいいのに、と。
思ったのは認める。
認めるけど、何か違う。
これっていつもとぜんっぜん変わってなくねぇ?!
ってかいつもよりも悪化してんじゃねぇの?!!
「剛ちゃ〜んvv」
「・・・・・・・・・・やっぱダメだ」
「何が何が?」
「井ノ原くん、ウザい」
そう言い捨て、ガーンと自己効果音付きでショックを受ける井ノ原くんを置き俺はソファを後にしたのだった。
END
20000ヒット、ときはさまからのリク小説でしたー!
ここここ、これはどうなんだろう・・・!剛ちゃん寂しがって・・・る・・・のかな・・・?(不安)
シリアスにすると別の道に走って行きそう(爆)なので、ギャグオチになっちゃいましたが。
だ、ダメだったり気に入らなかったりしたら遠慮なくどうぞときはさまーー!!(土下座)
ちょっと別のパターンも思いついたので、気になった方はこちらからどうぞ!
ちなみにこっちはぶいろく家族もの設定ですのでパラレルです。
管理人としては書いててとっても楽しかったですvときはさま、リクエストありがとうございましたーー!!
2006.12.31