誕生日が近いこと。
それは、嬉しくもあり、少し寂しくもある。
何故なら、俺と松岡の誕生日はいつも合同で祝われて。
どちらかの生まれた日が疎かにされている感があるからだ。





俺達の場合は決まって前日に祝われる。
1月10日の俺の誕生日に、メンバー全員におめでとうを言われ、プレゼントを貰うのだ。
グループ内で一番料理の出来る男は、主役なのにも関わらず進んでキッチンに立ち。
メンバーの好きなものを作っては振る舞い、食べ終わったものを片付け。
美味いと絶叫する末っ子に当たり前だろと自信有りげに言い。
ケーキを前に嫌そうな表情をする太一に、ビターなガトーショコラ(勿論既製品)を差し出し。
酒を一定のペースで飲み込んでいる茂くんに飲みすぎだと突っ込みをし。
兄ぃ誕生日おめでとう、と一言こっそりと俺に伝えて、キッチンへ戻っていく。
そんな風に、一人だけずっと忙しなく動いていた。
いつもなら俺も深酒をしてご機嫌になっているところなんだが。
誰も労ってやらない可哀想な明日の主役を、何だか見ていたかったのだ。





ちびりちびりと酒を飲み、騒がしい周りを見渡す。
このグループは本当に仲がいいな、と心底思う。
相手の誕生日を覚えて、祝ってやるという口実の元、飲みたいだけなのは分かるけれど。
忙しい中こうやって集まってくるなんていうのは、簡単に出来ることじゃない。
今日の集まりは毎年恒例のようになっていた。
誰が言い出すというわけでもなく、そろそろやりますか、と一斉に腰を上げる。
まぁ、火種はあのアヒルが持ってくるわけですが。
忙しいのに騒がしいことをするのが大好きな、下から二番目の青年。
自分に大変なことが回ってくるのにも関わらず、いつもお祝いごとに首を突っ込む。
いつまでも子どものようなそれに、メンバーが巻き込まれていくのだ。
いくつになっても、幾ら季節を通り過ぎても。
そうこう思っているうちに、さっきまで騒がしかった部屋が静かになったのに気付いた。
テーブルに突っ伏したまま眠っている茂くん。
太一は長瀬に技をかけたままぐーと鼾をかき、長瀬は痛がった表情のまま眠りについている。
器用だな、お前ら。













「はー、ようやく静かになった」





言いながら、キッチンからアヒルがやってきた。
休日にセットするのが面倒臭いと、髪の毛は下ろしたまま。
前髪を弄り、一人で伸びたなぁなんてぼやいているから、面白い。
同じ手で腰をぺしぺしと叩き、どっこらしょ、と俺の目の前に腰を下ろす。
おいおい、それじゃあウチのリーダーと大差ねぇだろうがよ。
俺の視線を素早く感じ取ったのか、松岡の目がぷわっと見開く。





「・・・兄ぃ、起きてたの?」
「おう」
「あれ、酒全然飲んでないじゃん」
「せっかくだし、お前が落ち着くのを待とうかな、と思って」





おらよ、とワインの瓶を差し出せば、どーもと言いながらグラスを持ち上げる。
とくとく注がれる赤を松岡のグラスに注いだ後、自分のにも注ぎ足した。
兄ぃにはワインはちょっと似合わないよね、なんて憎まれ口を叩きつつ、誕生日おめでとう、と松岡が俺のそれにカチンとぶつけて。
俺もその言葉を返そうと思って、留まる。
目に入ってきた時計は明日になる20分ほど前で、今日の日付だったからだ。
まだ、松岡の誕生日じゃない。
そう変にこだわってしまって、おう、とただ返すだけになった。
ヤツはごくりと喉を鳴らしてワインを身体の中に流し込んでいく。
ようやく飲めた一杯、といったところだろうか。
















「・・・悪ぃな、いつもいつも」





俺の言葉に松岡の目が限界まで見開いた。
それを気にせずに、俺はヤツのグラスにワインを注ぎ足す。
松岡は、俺のその行動に気付かずにグラスに口をつけた。





「何よ急に。気持ち悪い」
「お前の誕生日だから、少しは気ぃ抜かせたいんだけど」
「んはははは。俺が気ぃ抜いたらお祝いどころじゃなくなっちゃうでしょ」
「まぁな」





確かにそうだと頷けば、苦笑いが返ってくる。
俺はぐいぐいと嵩を減らしていく松岡のグラスの中身を切らさないように、さり気なく。
瓶の中に入っている赤をそれに注いでいくのが楽しい。
それを続けていると、段々と酒が回ってきたのか、松岡の口が滑らかに動き出した。





「いいのよ、別に料理作るのは。俺大好きだし、どっかの評論家に食わせるより、アンタたちのがよっぽど喜んでくれるから、俺も嬉しいし」
「そうか」
「うん。みんながさ、この忙しいのに俺達のためにスケジュール合わせて、来てくれて、おめでとーって言ってくれて。それだけでもう俺は満足なわけ。分かる?」
「献身的だなぁ、それ」
「そうよー俺が居ないとこのグループ、駄目んなっちゃうんだからねー」





たまには優しくしてよね、と口を尖らせる。
甘え下手な弟は、酒が入ると少しだけその術を身に着けるらしい。
近くにある癖っ毛な髪の毛をぐしゃぐしゃしてやったら、嬉しそうに笑った。
ふわふわと酔い気に任せて気持ちよさそうに揺れている。





「あにぃ、たんじょーび、おめでと」
「おう、さんきゅー」
「ことしもいちねん、よろしくおねがいねー」
「・・・おいおい、新年の挨拶かよ」





かなり酔い回ってねぇか?と的外れな松岡の台詞にそう突っ込めば。
本人もそういやそうだな、なんて首を傾げる。
どうやら自分が酔っていることを自覚してなかったらしい。
自覚した途端、ふらふらとした身体に呂律の回らない口調が映えて感じたのか。
ふるふると首を横に振り、それをまたこてんと傾げた。





「あー、なんでおれ、こんなによってんの・・・?」
「疲れ身の上に空きっ腹で酒流し込んだからだろ。もう寝ろよ」
「・・・うんー」





そうするー、と言いながらコテン、と横倒れする松岡。
ひょろ長いそれに、手近なところから毛布を引っ張ってきてかけてやる。
もそもそと上半身をまるごと埋めるようにしてそれに包まり。
そこから覗く、色素の薄い瞳。
ほんのりと抗議の意が込められているようで、どうした?と声をかけてみるも。
松岡は何も言わず、ただ目だけで俺をじぃっと見ていた。





「どうした、松岡」
「・・・あにぃ、まだおれになんにもいってくれてない」
「あぁ、だってまだお前の誕生日じゃないだろ?」





見てみ、と時計を指差せば、松岡の目もそれに向いて。
ほんとうだ、なんて納得してしまうものだから、可愛いもんだ。
後10秒。
・・・松岡の家の時計が時報と同じ時を刻んでいれば、だけど。
ちっちゃい声でその秒針を数えている松岡の目蓋はもう、限界に近くて。
















「誕生日おめでとう、松岡」







俺がそう言った時にはぱたりと閉じられていた。
ロケだらけの年末年始で疲れたんだろう。
それに加えて俺たちへの気遣いと、大量調理ときたもんだ。
お疲れ、松岡。
そう小さく言った自分の言葉に、コイツももう31歳かぁなんて感慨に耽ってみたりしながら。
俺は一人、手元のグラスをぐいっと呷ったのだった。





END
今年のバースディはリズム隊で。
この二人は仲良しさんで、いつも見ててにこにこします。
必要以上にくるくる回る喋る動くマボやんと、それを見守ってみたり一緒に加わってみたりなぐっさん。
血は繋がってなくとも兄弟みたいだなぁと感じることが多かったり。
でっかい図体の弟を軽々と片手で支える、そんなリズム隊が大好きです。
おめでとーリズムー!!なんてテンションでついつい勢いで書いちゃったお話でした(笑)
2008.1.11