堪えて、堪えて。
耐え切れずに君の上にこぼれたそれは、きっと。
誰よりも早い空からの贈り物。





















































































初めの一滴は君のもの




























































































「あ、降ってきた」






剛の言葉に俺は横を見て、次に上を見る。
曇った空は今にも泣き出しそうで。
だけど、まだ俺のところにその涙は届いてこない。
俺の方が背、高いのにな。
そういうのは関係ないんだろうか。





「どこに当たった?」
「鼻の頭」
「ロケ、中断かなぁ?」
「中止になればいいのに」
「だよねー」





スタッフとか坂本くんに聞かれたら怒られそうなことを、二人揃って口にする。
基本、俺も剛も真面目なんだけど。
そう思われるのが嫌で、わざと不真面目なことを言ってみたりするのだ。
A型の悲しい性分ってヤツですかね。
松岡も、そうだし。
・・・って何で俺アイツのこと思い出してんだ。





「雨、やだなー」
「ですよねー」
「ちょっと止めてよ井ノ原くん降らせんのさー」
「俺にはそんな権限ありませんからぁ」
「うひゃひゃひゃひゃ!何その顔、ガキみてぇ!」
「だって剛が意地悪言うんだもん」
「降らせてるくせによく言うよ」
「だーかーらー降らせてないっつーのー!」





弁解する俺を見て楽しそうに笑い声を上げる剛。
いいだけ笑って、はー、と溜め息。





「井ノ原くんの所為で俺明日、腹筋筋肉痛だ」
「いいじゃん東くん並みに鍛えれば」
「・・・俺ドラマ中何度も腹筋させられたんだけど」
「あの人、趣味腹筋だからね。俺小さい頃腹に乗せられたことあるし」
「あ、俺も乗った」
「剛まで乗っけちゃうんだ。すげーなあの人」





しばし先輩の話をして。
二人で馬鹿みたいに笑ってたら、ぽつんと。
俺の耳元に、雨の雫。








「あ、きた」
「今?」
「うん、ぽつっと」







そして、その数は徐々に増えていき。
慌てたスタッフがビニール傘を持って俺たちのところに走ってきた。
ロケは一時中断です、と。
そう告げられ、雨が止むまで車の中で待つことになった。















バスに乗り込むと。
俺が座ったとこから一つ前に、剛が座る。
隣、来ればいいのに。
ぽつぽつと音を立てて窓を滑っていく雨。
外ではスタッフが忙しそうに右往左往している。
その中の一人が濡れながらタオルを渡しに来てくれて。
それを受け取って初めて、自分たちの頭が少し湿っているのに気づいた。









「濡れてたな、そういや」
「ほんのちょっとだから気づかなかったよね」
「・・・あれ」
「どしたの?井ノ原くん」
「タオル、一枚しかねぇや」






貰ったタオルは広げてみても、一枚でしかなくて。
需要は二人。






えーと。






少し考えてから、俺は手に持っていたタオルでぐしゃぐしゃと剛の頭を拭いてみた。
うん、後部席に座っててよかった。
すっげぇ拭きやすい。






「うわ、何・・・っ」
「何って、頭拭いてあげてるんだけど」
「ちょちょちょ、アンタすっげぇ乱暴っ!」
「ちゃんと拭かないと風邪引くんだぞー」
「知ってる、けど、ちょ、自分で拭けるから!!」







わたわたと手が慌てたように動いて、タオルを掴む。
そうか、と自分の手の力を緩めてタオルの主導権を剛に手渡せば。
さっきまで剛の頭を拭いていたそれが、今度は俺の頭に向かってきた。



























え。










「うわっ剛っ!」
「へっへっへ、お返しだっつーのー」
「お前、いのっちのせっかくのご好意を仇で返すつもりか痛たたたたたたたたた抜ける毛抜けるっ!」
「もうハゲるまで拭く!」
「変な宣言しないでいのっちアイドルだから腐ってもアイドルだからハゲたらファンの子誰も居なくなっちゃうからー!」
「うひゃひゃひゃひゃひゃv」






俺の頭を拭きながら笑う剛。
ムキになってタオルを奪って、また頭を拭く俺。
何度か主導権が入れ替わる中で、はたと我に返って辺りを見回せば。
仕事が終わったのか、雨宿りをしていたスタッフたちが笑いながらこっちを見ていた。
手にタオルを持ちながら笑っているマネージャー。
いつから見てたの、と問えば、10分前からと震える声で返事。
あちゃー、すっげぇ恥ずかしい。






「剛、オメーが悪いんだからなー」
「始めたのは井ノ原くんだろー?」
「そうですけどーそうなんですけどー」
「あーもうせっかくセットしたのにぐしゃぐしゃだよ髪」
「俺もだよ剛」
「え、井ノ原くんセット何てしてたの?」
「おまっ・・・お前なぁ!」






怒って見せた俺を見て、剛は再び腹を抱えて笑い。
スタッフやマネージャーにまで笑われて。
恥ずかしいんだけど、満更でもない俺がそこに居た。






























































































































































雨が降り始めて、30分。
どうやら雨脚も遠ざかり、スタッフが重い腰を上げ出した。
俺たちどうすればいいの?と聞けば、指示あるまで待機してて、とマネージャーが言いながら外に出て行く。
残された俺と剛。
席は相変わらず後ろと前で。
背凭れに顎を乗せて剛の後ろ頭を見つめていたら、不意に。












































































































「・・・俺が一番かな」





















































俺の方を見ないままで剛が口を開いた。






「何が?」
「さっきの雨の初めの一滴、俺のヤツかな」






ならいいのに、と。
言って剛は窓の外を見る。















同じ風景。
同じ視野。
ちょっと変わってる剛の思考。
何となく岡田に似てるところがあるよな、と思う。
少し、違うんだけど。
岡田の考えは理論の元に溢れてきた、妙に大人びたもの。
それに比べて、剛の考えは本能で出来ていて、少し子どもっぽいから。




































































「剛のなんじゃねぇ?」

































だから。
俺はいつも剛の考えを肯定する。
そうなんじゃない、と。
本能から出来た言葉に、理論は必要ないから。








「剛がそうやって思うんだったら、そうなんだよ」







まるで子ども相手に諭すように。
お兄さんぶって言ってやれば、剛は少し驚いた表情をした後、にひっと笑って。
一番かぁ、と。
余りにも嬉しそうに言うもんだから、俺も一緒に嬉しくなる。











もうすぐ止むかなと、空を見上げれば、
敷き詰められていた雲の隙間からほんの少しだけ、青空が見えた。








END
珍しくお兄ちゃんイノさんと弟な剛ちゃんになってみたの図。
剛ちゃんは何でも一番が好きそうな気がします。
いつまでも二人して馬鹿なことをやってる本番ボーイズで居て欲しい。
2007.7.13