大人びた子ども
きらきら輝く海原を見る。
隣にはメンバーの岡田准一がいる。
男二人突っ立って何やってんだか、空しいけど。
可愛い可愛い後輩ですから、嬉しかったりもして。
「いいもんですねぇ」
「そうやなぁ」
言ってから気づく。
あれ、俺って年下だっけ。
何で自然と敬語になっちゃってるんだろ。
その答えは横を見たらすぐに出た。
出会った頃に比べてかなり大人びた横顔が。
俺が見てるのにも気づかないくらい、真剣に海の輝きを見てる。
マイペースなのは変わらない。
けど、格段に大人になった。
こうやってじっくり見てるとわかる。
いつもは皆と一緒だし、坂本くんや長野くんが大人だから気づかないけど。
「ねー岡田ー」
「なんや」
「やっぱ、俺カミセンじゃダメ?」
真顔で聞いてみたら。
でかい目を更に真ん丸くさせて、かなり遅れてぶはっと吹き出された。
「いのっち、まだ諦めてなかったん?」
「バカヤロウ、諦めたなんていつ言ったよ」
「・・・・・無理やで、今更」
俺が欠けたらカミセンちゃうもん。
そう自信満々に言い放った岡田にガクッと項垂れて見せると。
いのっちはいつもおもろいなぁ、と楽しいんだかつまんないんだかわかんない口調で言われた。
「お前っていっつもそう」
「何がー?」
「・・・なんでもねぇよっ」
ぐいっと伸びをして、ん!と一声。
ロケはまだまだ始まったばっかりだし。
「がーんばろうぜーペンション♪」
はしん、と背中を叩けば。
「いつの話持ち出してんねんジャンボリー・・・」
「しっかり乗ってんじゃねぇかよお前も!」
わざとらしくため息をついた岡田の後頭部に、ばしっと痛快な俺のツッコミが決まった。
「でも、よかった」
急に岡田がそう言ったのは、夕日が海に溶け始めた頃で。
お弁当を並んで食べていた俺は箸を銜えたまま、岡田を凝視した。
「何の話だよ」
「え、いのっちの話」
「どこからどうなって『よかった』に行き着くんだよー」
「だって、爪」
綺麗な指が俺の手を取る。
おっきくなったなぁ、この手も。
なんつって見てたら俺の手は岡田の両手で包まれて。
優しくゆっくりと撫でられて。
ををを。
「岡田さーん、何始めてんすか・・・」
「んー、俺すきやねんいのっちの手」
「恋人じゃねぇんだからよー」
「なんでいのっちはいっつもそっちにいくんよ。手触ったって恋人にはならへんやろ」
博やまーくんにはしてもらっても何も言わんくせに、って。
何で知ってんだコイツは。
で、何気に拗ねた声して言ってんだコイツは。
「爪、ちょっと齧ってる痕見えたから寂しいのかな思て」
「・・・・・・あ」
困ったように言われてみて、初めて気づいた。
寂しい時の俺の癖。
一時期に比べたらそんなに酷くないけど。
確かにかんだ痕が残ってた。
「よく気づいたなーお前」
「だから、すきや言ってるやん」
いっつも見てるんよ、なんて。
整った顔で笑いかけられた日には、勘違いしちゃうぜ?
「・・・恋人じゃねーんだからよー」
「手や手。いのっちはすきあらへんもん」
「おい!それはそれで俺が傷つくだろー!!」
バシッと再び俺の手が岡田の手からすり抜けてヤツの頭にヒットした。
・・・・ってか逆じゃねぇの?普通。
大阪人が突っ込むんじゃねぇの?
もぐもぐと弁当のから揚げを口に突っ込みながら、そう思ったりした。
「もう、大丈夫やな」
満面の笑みで岡田がそう言った時。
俺は沈みきった夕日を名残惜しく思いつつ。
うっすらと暗くなる空を見ながらコーヒーを啜っていた。
ヤツの突拍子もない言葉にはもう慣れたけど。
如何せん内容はまだ理解できない。
「何が?」
「まだ、寂しい?」
「・・・いや、ぜんっぜん」
「そか。ならよかったわ」
にっこり。
満面の笑みでご満悦の岡田くんですが。
俺、ちょっとわかりません。
「結局、何がしたかったんだよお前はー」
「まーくんと博のモノマネしたかってん」
コーヒーを口に含み、さらりと言ってのけたその言葉。
あー確かに。
言われてみるとそんな感じもするけど。
「何で急に?」
「やって、いのっちがカミセン入りたいて言うたから」
「そっからどうしてそうなるんだよ」
「やー、いのっちがカミセンなら俺はトニセンになるのかなぁ思て」
「・・・・結構乗り気だったんかいっ」
本日三回目。
俺のツッコミも手馴れたもので。
スパーンと爽快な音を立てて岡田にヒットした。
「なにすんねん!」
「あはははは」
「笑いすぎやんいのっちー!」
照れてか怒りからか、真っ赤に染まった岡田の頬を見て。
ああ、全然変わらないな、なんて。
坂本くんみたいに懐かしく思ってしまったのは内緒にして。
俺はぐりぐりと岡田の頭をかき混ぜたのだった。
END
2006.11.16