実際のところ。
二人にとっては、俺はいつまで経ってもオチビちゃんで。
事ある毎にこんなに大きくなっちゃって、なんて言われたりする。
若い頃はガキ扱いされてるみたいですっげぇ嫌だったんだけど。
少し年を取ってみると、それは意外と心地いいものだということに気付いた。




だって。
坂本くんは相変わらず俺のことを常に心配してくれてるし。
何処かに遊びに行けば必ず奢ってくれる。
長野くんだって、美味しいお店を教えてくれたり、差し入れを分けてくれたりして。
年下のカミセンが居ない分まで、二人から伸ばされる手に思いっきり甘えられるんだから。





だからなのか否か。
今の状況がとてつもなく嫌なのである。
言うまでもなく、トニセンの楽屋でのDS流行事件で。
いつもは構ってくれるはずの二人の目線は、揃って手元の小さなゲーム機に注がれていた。






「坂本くーん」
「あー?」
「俺ここに来る前にさー、すっげぇ変な車見つけちゃってねー」
「あーそうなんだよかったな」
「おいまだ話終わってねぇよー!」
「あー」
「・・・ねー、聞く気あんの?」
「五月蝿ぇな決算までちょっと待て」




桃鉄に夢中な坂本くん。
この人はこういう人だって知ってる。
何かに夢中になると絶対話を聞いてくれないので、俺は早々に諦めて長野くんの方に向かう。
優しい長野くんなら、俺が話しかけたらゲームの電源を切って、ちゃんと話を聞いてくれるはず!




「ねーねー、長野くんっ」
「・・・」
「ちょっとー、なーがのくーん!」
「・・・」
「聞こえないの?なーがーのーひーろーしー!」
「・・・・・・」




しかとかよ!
うわ、すっげぇムカつく。
何か分かんないけど、胸の中ぐるぐるして苛々する。
思いっきり頬を膨らませてみても、見て貰えないんじゃただの一人芝居だ。
こっち見ろよ!
そんで、仕方ねぇなっつって構えよ俺のこと!
可愛い後輩だろ?!
昔みたいに猫可愛がりしろよー!
ぐるぐるが最高潮に達した時、とうとう俺はブチギレてしまった。





「もー!坂本くんも、長野くんも、人の話聞けよっ!!」





思ってた以上にでかい声が出て。
しかもそれは情けなくなるくらい震えていて。
それでも二人の顔は上がらないから、どうしようもなくなって。
俺は怒りを持て余したまま、楽屋を出るためにドアに向かって歩き出した。






そしたら。
笑いを堪えるような小さい音が聞こえてきて、思わず足を止める。
それはどんどん大きくなり、どっちかがぶっと吹き出して楽屋内が笑い声で包まれた。
え、なに?なに?なんなのよ??
何で二人とも笑ってるわけ?




「あっはっはっは!井ノ原、お前かわいいなー!」
「なに、ゲームにやきもち妬いちゃったの?よっちゃん」
「・・・え?え?」
「んなことで半べそかくなよ、馬鹿だなぁ」
「話聞いてあげるからこっちおいでー」




ぱち、とDSの電源が落とされる音がして。
笑いが止まらない感じの二人に同時に手招きされて。




そこで、ようやく。
俺がまんまと二人の仕掛けた悪戯にハマったことに気がついた。




「な、なんだよー!わざとかよ!」
「はいわざとでしたー」
「あまりにもよっちゃんがコンサートのMCでいじけるから面白くなっちゃってね」
「そんで二人揃って無視してたら案の定怒ったっていう」
「ってことは、グルで俺のこと騙したの?!」
「そうだな」
「そうだねー」




にやにやという効果音がぴったりな顔で笑う坂本くんと長野くん。
二人の背中には黒い羽が見える。
ついでに、バイキンマンみたいな尻尾まで。
やだこの人たち。
俺より輪をかけてガキみたいじゃん。
しかとがわざとでよかった、ってホッとしつつも。
かなりムカついたので、俺は二人から目を逸らしてぷいっと一人ソファで体育座りを決め込んだ。
すると、楽屋の中の空気がふ、と変わる。




「井ノ原ー、怒った?」
「・・・別に」
「ゲームしないからこっちおいで?」
「いいよ、ゲームすりゃいいじゃん。もう俺いいもん、話す気無くした」
「えーっと、じゃあさ、お前も一緒にやろうぜ」
「結構です。俺はアナログで生きる」
「ほら、よっちゃんの好きなアイスあるよー」
「アイス・・・は、貰うけど!俺今日一日喋りませんからー」




長野くんからアイスを受け取って、それをぺろぺろ舐める。
二人の顔を見ないように背を向けた状態でそうしていると、頭に手が触れて。
くしゃくしゃと撫でられるもんだから、ぐらりと決意が揺れそうになった。
・・・いかんいかん。
俺は怒ってんだぞ、ってところを示さなきゃ。
そのままされるがままになっていると、急に手が離れて。
え、と思った次の瞬間、四本の手によって俺は擽りの刑に処された。




「あっはっはっはっは!ちょ、や、やめろよー!」
「やめねぇー!笑えコラ」
「拗ねちゃいやよー井ノ原さんっ」
「あははっ、もー、降参っ!ギブギブ!」




人が腋辺り弱いの知っててわざとそこを攻められ、俺は呆気なく降参する。
っていうか、本気で怒ってたわけじゃないし。
俺のこと騙した二人が楽しいだけじゃ悔しいなーと思ってやっただけだから。
DSの電源消してくれたんなら、それで。
・・・なんて、相当甘いな俺。
へにゃ、と笑ってみせると、坂本くんも長野くんもホッとした顔になった。




「お前はホント、可愛いねー」
「あは、そうでしょ」
「自分で言っちゃうんだ」
「だって俺、可愛いんでしょ?」
「「うん、可愛い」」
「あははは、ハモるなよー」




大きくなった俺が可愛いって言って貰える場所なんてそうそう無いんだから。
二人の前でくらい、言っちゃったっていいでしょ?




END
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この頃イノさんは自分の可愛さというか、可愛がられ加減に気付いてきたなぁと(笑)
ブイではお兄ちゃんお兄ちゃんしてるのに、トニになると途端末っ子気質になる。
そして上二人に弄られ可愛がられきゃっきゃしているイノさんが好きです。


2009.5.12