仕事が立て込んでちょっと疲れを感じていた俺は、楽屋のソファで仮眠を取っていた。
遠くから長野くんは超優しい、と井ノ原の声が聞こえてきて、目を開ける。
すると、その隣でアイツの優しさは俺分かんねぇ、と坂本くんが肩を震わせているのが見えた。
ほほーう。
「なになにー?俺の話ー?」
「あ、長野くーん!」
すたすたと笑顔で近づけば、嬉しそうに迎えてくれる井ノ原と、微妙な顔の坂本くん。
この違いは一体なんなんだろう。
俺は誰に対しても変わらず優しく接してるつもりですけど。
「ねぇねぇ長野くん、どっか美味いお店教えてよー」
「あ、それ俺も聞きたい」
「いいよ。何が食べたいの?和?洋?中?」
「俺和食ー!」
「はいはーい。ここはどうかな?」
二、三軒分の名刺を出してあげると、井ノ原は興味深々にそれを読み出す。
その横で今度は坂本くんの注文に耳を傾ける俺。
「俺は和食で、個室付きで、喫煙席があって、どっちかと言えば静かな雰囲気の、値段あんまり高くねぇ場所」
「無ぇ」
全く、この人はいつも注文が多すぎるんだから。
それでもどうにか条件に合うような店の名刺を探してあげる優しい俺。
あーあーあー、しくしく泣かないの。めんどくさいなー。
「長野くんってすげーよな。変態並みに名刺持ってるし」
「なー」
「変態は余計だよーよっちゃん」
「あは」
「いてっ!なんで俺だけ叩くんだよお前っ」
「だって、これ以上叩いたらよっちゃんが取り返しの付かないことになるでしょ」
「ああ、なるほど」
「なるほどー・・・って、長野くん!ちょっと、それ酷いー!」
ぷぅっと頬を膨らませ抗議の姿勢をとる井ノ原を見て、俺と坂本くんが笑う。
それを見た井ノ原はもっと笑わせようと目を二重にさせた。
もうホント、この子はいつでも面白いなー。
「あっはっはっは、っは、おまっ、お前っ」
「あはは、二重止めろよー。坂本くん死んじゃうって」
「超カッコイイでしょ?」
「や、も、っはっはっは、っ腹痛ぇー!」
「よっちゃん、アイドルアイドル!」
「あ、そうだった。俺アイドルだった」
俺の言葉に井ノ原は我に返り、顔を両手で覆って元の表情に戻った。
というか、余計に変な顔になった。
彼なりにかっこつけたらしいそれは、面白い以外の何物でもなく。
俺と坂本くんは再び腹筋崩壊寸前まで笑い転げることになる。
「えっ、ちょ、駄目?この顔駄目??」
「・・・・・・っ!!!」
「よっちゃん さすがに それは 面白い・・・!」
「人のアイドル顔を面白がるなよっ!失礼だなアンタらはー!」
心外だとばかりに怒り出す井ノ原と、笑いが止まらなくなる俺たち。
それを見て、段々と井ノ原の機嫌も直っていく。
なんなのよーとか言いながらも一緒に笑い出すんだから凄い。
そして、ふと気付く。
さっきまで感じていた疲れが、いつの間にかどこかに行ってしまったことを。
どっちかと言えば、笑いまくりで余計に疲れそうなもんなんだけど。
いい人だと定義される俺が、気兼ねなく素になれる場所。
それがここだから、かな。
「いいねー、トニセンって」
「いいなー・・・っつーか井ノ原の存在自体が面白い」
「俺は見世物じゃありませんー」
「あ、それいいねー。井ノ原見世物にしたら絶対金取れるよ」
「うわ出たブラック長野。お前近々売られるぞ井ノ原」
「儲けた分くれるならやるぜ俺、なんつってー・・・って、長野くん目が怖い」
「あはは。坂本くんを虫かごの中に閉じ込めて見世物にしてもある意味金取れそうだねー」
「そうなったら俺多分自害すると思う、舌噛んで」
こういう会話が成り立っちゃうんだから、居心地悪くないわけがない。
ノリのいい坂本くんと井ノ原に大感謝しながら。
とりあえず本気で怯える二人を見たいがために、俺はわざと黒い笑みを浮かべてやるのだった。
END
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ヒロスさんが一番素を出せる場所=トニのような気がします。
ブイでも出してるけど、トニのヒロスさんは凄すぎる(笑)
2009.5.12