丸くなったよねー、としみじみ言う井ノ原の声が耳に届いて。
そうだねー、と長野がまったり相槌を打つ。
雑誌を読んでいた俺は、その言葉の意味を理解出来ずに何度か瞬きをした。




「・・・誰が?」
「坂本くんに決まってるでしょ。ねぇ、長野くん」
「うん」
「そうか?どっちかっつーと最近体重落ちてきた方なんだけど」
「へっ?」
「ぷっ」




腹辺りを弄りながらの俺の言葉に井ノ原は素っ頓狂な声を上げ。
その顔が面白かったのか、長野が思いっきり吹き出す。
すると、調子に乗った井ノ原が益々変な顔で変な声を上げ出して、俺も吹き出した。
コイツは本当、人を笑わせる天才だと思う。
散々変な顔と変な声と、加えて変な動作で俺たち二人を笑わせていた井ノ原だったが、はた、と我に返り。
そして、大袈裟にため息をつき、呆れて見せてきた。




「あのねぇ、丸くなったっつーのは見た目じゃないのよ?リーダー」
「え?」
「性格とか雰囲気とかの話してたんだよね、よっちゃん」
「そうよー。なのに坂本くんがボケるからさぁ、俺ものっちゃってさー」
「のっちゃったねー。すっげぇ変な顔だった」
「うわ、ひでーよ長野くーん!」
「・・・・・・あ?あー。なに、そうなの?」




ようやく合点がいった俺を見て、この人遅ぇよー、と長野に報告する井ノ原。
そんなアイツの髪をくしゃくしゃと撫でながら、長野は笑って説明をし始める。




「坂本くんって昔は尖っててさ、近寄るもの全てぶった切るみたいな感じだったでしょ」
「・・・うん?」
「それが今じゃすっかりへたれちゃって、ホント丸くなったねーっていう話をしてたわけ」
「・・・ふーん」




だから何だと言えば、ただそれだけ、と井ノ原が言い、そこで俺たちの話は終了する。
なんだよ、オチねぇのかよ。
話題は長野の行った美味しいラーメン屋さんに移り。
井ノ原が今度連れてってよ長野くーん、と目一杯甘えたな声を出していた。
俺はといえば、元々読んでいた雑誌に目を落としながらも、さっきの話を思い出す。




年月をかけて段々と丸くなってきたらしい俺。
だけどそれは、年を取ったからでも無いし、妥協しているわけでも無く。
多分、トゲトゲしていた昔の俺を最後まで見捨てなかった二人のおかげだと思う。




俺がカミセンに怒鳴り散らした後、影で長野がフォローしてくれてたのを、知ってるし。
一人で背負ってないで俺らにも話してくれよ、と井ノ原が声をかけてくれたことも、覚えている。
理不尽なことで怒れば、それは違うと必死に身体を張って俺を留め。
無理なアドリブやフリに戸惑う俺をカバーするかのように、二人が身代わりになったことだってあった。
人に馬鹿にされて腹を立てると、何言ってんのアンタ今超美味しいじゃん、と笑い。
空気の読めない俺の動作にいちいち突っ込みを入れ、笑いに変える。




そんなさり気ない優しさがきっと、今の俺を作り出していて。
結果的に丸くなったんだろうと思うわけで。









「・・・ありがとな」




突然俺が発した言葉に、きゃっきゃとはしゃいでいた二人は動きを止め。
何か物凄く変なものを見るみたいな目で俺を見つめてきた。
何がありがとうなの?と尋ねるような視線に、俺は少し考えて。




「俺に見切りつけないでくれてありがとう」




と。
なんともへなちょこな言葉を紡ぐことになって。
予想通り、井ノ原がまたすっげぇ変な顔でへぁ?!とか言って。
それを見た長野が吹き出し、思いっきり笑い出す。
一応真面目に言ったつもりだった俺は、再びきょとんとする羽目になり。
そんな俺に、長野が再び笑いながら説明を始めるわけで。




「坂本くん、それは流石に丸くなりすぎ」
「・・・なんで?」
「どんだけヘタレなんだよアンタよー!俺ビックリしちゃったじゃん!」
「リーダーに見切りつけるメンバーなんて居ないって」
「・・・え」
「え、とか言うんじゃねぇよ。ウチのグループのリーダーはアンタしかいねぇんだからさー」
「しっかりしろよー」
「・・・や、えっと、うん」




こくん、と首を縦に振れば、にぃっと笑う顔、二つ。
ふざけた調子で、でもいつも俺を励ましてくれている。
俺より年下の二人の存在は、むせ返るほど甘く、そう、まるではちみつのようで。
軽い胸焼けを覚えながら、ああ通りで丸くなるわけだと一人納得する俺だった。





END
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一人で頑張っているリーダーの周りで必死にフォローしていた二人。
特に初期の頃の映像を見ると顕著だったりして、胸がきゅんとしたりします。
結局はリーダーに甘い二人、という結論。


2009.5.12