きっと、きっとね。
お前らは似たもの同士だから、上手くいくと思うんだ。
































































あの頃の俺と、今の君








































































デビュー当時。
健と岡田は何の抵抗もなく俺たちになついてくれたんだけど、剛は少し違って。
特に坂本くんと剛はグループ一と言ってもいいくらい仲が悪かった。
理由はよくわからないけど、多分、坂本くんが大人で剛が子供だったからだろうと俺は思う。
グループ内で仲が悪いと目に見えない派閥みたいなもんが意識の中に自然に構築されてって、何をするにもそれが気になってしまうようになった。
俺は二人の真ん中にいて、どちらかと言えば剛に年が近かったんだけど、坂本くんの気持ちが分からない程若くはなかった。
かと言って、剛の気持ちが分からないと言えば嘘になる。







二人をどうにかしたい。
最初はそんな願望を。
でもいつしかそれは、どうにかしなきゃに変わってた。
このままじゃ後悔だけが残ってしまう。
俺にも、二人にも、そしてグループ全体にまでも。









「井ノ原くん?」
覗きこまれ名前を呼ばれたことで思考が停止した。
楽屋に一番入りしていろんなこと考えてたら周りに気を回せていなかったようだ。
「・・・あら、剛ちゃん」
「うひゃひゃひゃ!井ノ原くんてば近所のおばちゃんみてぇ!」
手を叩いて爆笑する剛はすっかり心を開いてくれているようで、じわ、と嬉しくなる。





健とは元々仲がいいみたいだし、岡田は後輩だからってこともあって一生懸命面倒を見ようとしてるのか分かる。
長野くんは人柄もいいし取っ付きやすいタイプだから、論外。
問題はやはりあの男だ。
強面で短気で一番年上のリーダー、坂本昌行。
あの人はなーパッと見怖いし短気ですぐ怒るんだけど。
付き合ってみたら意外と悪い人じゃないってことが分かるのに。
実は寂しがり屋で、ヘタレで、笑うと強面はどこに?っつーくらい可愛くて、やることなすことボケボケで、でもいざって時は頼りになる、そんな人なのに。
なまじ尊敬してるもんだから嫌いになれないだけなのかもしれないけど。





ぐるり、と辺りを見回す。
他のメンバーはまだ来ていない。
ってことは剛とふたりっきりってことで。
今しかないな、と思って口を開いた。
「・・・なぁ、剛」
「ん?」
ヘッドホンを耳につけながら首を傾げる剛に声をかければ、神妙になってどうしたの珍しい、と失礼なことを言いながらもこっちを見た。














ええと。
どう切り出せばいいかな。
遠回しか、単刀直入か。






・・・ああもう。
何めんどくせぇこと考えてんだ。
俺はメンバーだぞ。
んな遠慮してたら腹割って話すことなんて一生無理だっつの。










「坂本くんのどこが気に入らないの?」
かなり単刀直入な俺の言葉に目に見える程反応する剛。
自覚はあるわけね。
「気になるんだよ、一緒にいると特に。俺が口出すことじゃないと思って言わなかったけど、結構限界なんだ」
大好きなメンバーがいがみあってるのを見るのは嫌だし、それを見ながら他のメンバーが辛い顔をしてるのはもっと嫌だ。
そう言えば、うっと詰まる。
「何か理由あんだったら、俺から坂本くんに直接言ってもいいし、この際洗いざらい話してよ剛」
ね、と促すと剛は無言になってうつ向いてしまった。
「あ、言っとくけど責めてるわけじゃなくて!坂本くんにも同じこと言うつもりだしっ」
「・・・何慌ててんの」
苦笑気味に返ってきた言葉。
剛はがしがしと頭を掻いて俺を見る。
気まずそうな表情。
















そういや俺もこんな時があった。
今の剛があの時の俺で。
今の俺があの時の長野くんで。








「・・・別に気に入らないとかじゃなくて、さ」






そう。






「ただ、気づいたら反抗してて」






そうなんだよ。










「「謝ろうにもあの人そんな雰囲気じゃなくて」」







見事にハモッた台詞に。
剛は驚いて俺を見たから、笑ってみせる。







「剛ってば、あん時の俺と同じこと言ってるんだなぁ」



























































































「おはようございまーす」




聞き慣れた声が挨拶をして入ってきた。
俺はあの時、長野くんがしてくれたように剛の背を押す。
でも、と渋るから、細い腕を取って半ば引きずるような格好で坂本くんの元へ。





「おはよう、坂本くん」
「はよ」
「ほら、剛も挨拶。人間関係を素敵にするためにはまず挨拶から!」
「・・・・・・何の話だ?」
「いーいーの。坂本くんは黙って立ってて」





ぱす、と背中を押せば。
ちらり、と目線を上にして。

















「・・・・・・はよっす」







小さな小さな声だったけれど。
確かに、聞こえた。















剛の言葉に呆然とする坂本くん。
彼の隣に移動して肩を組み、その背中もぱすぱすと叩く。





「・・・・・・なんだよ」
「剛はちゃんと言いましたよ?」
「・・・・・・?」
「次は坂本くんの番だっつってんの。あ・い・さ・つ!」
「・・・・・・でも」
「でもだって何?挨拶忘れちゃったんならこの井ノ原先生が一からきちんと教えてあげますよ?なんなら見本だって見せちゃうぜ。朝の挨拶はー「おはよう!」さんはいっ」
「・・・・・・井ノ原」
「さんはいっ」
「・・・・・・」
「さんはいっ・・・つってんだよ。タイミング作ってやってんだからさっさと言え。さんはいっ」





















































「・・・・・・おはよう」

「・・・・・・はよっす」
















































「・・・・・・うーん、ちょっと暗いけどよしとしましょう!二人ともよく出来ました!」





背の高さの違う二人をがしがし撫でれば。
同時にバシッと払われた。












「「子ども扱いすんな」」















ハモッた言葉に二人は顔を合わせて。
そんで一緒に俺の顔を見て。
そしたらだんだん肩が震えてきて。
何がおかしいんだか腹を抱えて笑い出した。






「え、なになにどうしたの?」
「うっひょっひょっひょ・・・っだって井ノ原くん・・・っ」
「お前なー手ぇ払われた位でショック受けた顔すんじゃねぇよー!」
「超悲惨な顔してやがんのー捨てられた犬みてぇ!」
「あ、それ俺も思った!しかも眉毛マジックで悪戯書きされた犬な!」
「そうそれ!リーダーわかってるー!」






オロオロしている俺の前で。
いつの間にか意気投合してお互いを叩き合ってる剛と坂本くん。
いいけど。
すっげぇいいけど。






取り残された俺、寂しい。







「二人ともひっどーい!いくら俺だって傷ついちゃうよー?」
「傷つけること言ってないじゃん!」
「そうだって!ある意味褒め言葉だって!」
「褒めてないー!絶対褒めてないー!」
「よっちゃん、何馬鹿みたいに暴れてんの?」
「うわー長野くんまで酷いー!」
「いのっち馬鹿やから仕方ないやん」
「井ノ原くんより馬鹿な人が居たらちょっと見てみたいよねー」
「岡田も健ちゃんもどうしてそういうこと言っちゃうのよ!あーもー傷ついた!たった今俺のハートは傷ついた!」
「はいはい。じゃあ傷ついたよっちゃん置いといてミーティング始めよっかー」
「はーい」
「うーっす」
「ぉん」
「無視かよー?!おいダーリー逃げんなっ」
「ぐぅえっ!おい、井ノ原絞まってる絞まってるー!」





ぎゅむーっと坂本くんを絞めて離さないように踏ん張っていた俺。
健が来たからそっちに移動した剛と、目が合って。
ぱくぱく、と口が動く。





―――――――――――さんきゅ。





そして、にひ、と八重歯を見せて笑って。
長野くんを追うように健と一緒に部屋を出て行った。





























































残ったのは俺と坂本くん。
ぽつん、と。
え、俺たちがいなくてもミーティング成り立っちゃうわけ?みたいな。
そんな寂しさが二人を包む、ってか。
あはー。




「・・・いのはらぁ」
「あは☆」
「俺がこういう位置に納まったのはお前が原因だ」
「ヘタレなのは最初からv」
言えばがっくりと項垂れた。
その行動がヘタレだっていうのに気づかないのかねこの人は。
否定しろ否定。







「・・・でも、久々に話した気がする」
「?」
「剛と、目ぇ合わせて」
「・・・そっか」
「さんきゅ、井ノ原」


















ほら。
やっぱり、似てる。
似てるからぶつかるし、なかなか上手くいかないんだ。
でも。
似てるってことは上手くいけば気が合うってことで。
その手伝いが出来ればなぁ、なんて。
剛にはお兄ちゃんとして。
坂本くんには弟として。
そう、思うんだ。











END
>セオリー通りのこの時期の話でした。
 何故この時期が好きなのか、ちょっとよくわかりませんが(笑)
 イノさんがお兄ちゃんぶってるところをたまーにわしわし書きたくなります。
2007.4.11