まとまりの無い日々
坂本が楽屋のドアを開けた時。
井ノ原と松岡がソファの上で何やらエキサイトしていたので、何も見なかったことにしてドアを閉めかけたのだが。
それを上手い具合に誰かの足が妨害し、彼は襟首を掴まれ半ば無理矢理部屋の中に引きずり込まれた。
引きずり込んだ男、長野はにっこりと笑っていない笑みを浮かべ、坂本を見下ろす。
見るなりこれは我慢の限界を超えた表情だ、と坂本は背筋を寒くした。
「おはよう」
「・・・見なかったことにさせてくれ」
「お前が止めないで誰が止めるんだ坂本昌行」
「山口が来たら止める」
「山口くんは遅れるってさっき連絡が」
「嫌だ!俺一人で止めるのは嫌だ疲れるー!」
「何子どもみたいに駄々こねてんの。早く行けよ」
「うおっ」
長野に背中を押され、二人のテリトリーに強制的にインする。
ソファの上でぎゃーぎゃーと騒ぐ二人は坂本の存在に気づいてはいない。
ラッキーとばかりに撤退しようとした坂本に、刺さる目線。
それが長野のものだけではなく太一のものも追加されていることで、坂本は逃げられないことを本能で悟った。
あの二人の闇のオーラに平然と騒いでいる悪友コンビも凄まじい。
一日の始まりに酷く疲れを感じつつ、坂本は井ノ原と松岡のソファに近づいて、二人の頭を軽く叩いた。
「「いてっ」」
「お前ら五月蝿ぇよ。何やってんだ」
「愛を深めるために真剣勝負のあっちむいてホイを」
「おいこれは愛を深めてたのか?違うだろただのあっちむいてホイだろ」
「オメーが弱すぎんだよ何回やらせんだ馬鹿野郎」
「イノが無駄に強ぇから悪い負けず嫌いの俺の性格は知ってるだろう?」
「あー知ってる一回でも勝たねぇとしつこいのは百も承知だ」
「だったら負けろ!」
「オメーにだけは負けるか阿呆!」
「五月蝿ぇ!!!」
坂本の怒鳴る声にぴたりと動きを止める二人である。
ついでに周りを見回して、長野と太一の闇のオーラにも今頃気づいたらしい。
二人はバッと離れると、まるで何事も無かったかのように個人個人の行動を始めた。
変わり身の早さに脱帽である。
・・・目線だけはまだバトル中ではあったのだが。
放置しておくとまた火がつきかねないので、坂本は井ノ原を捕まえてズルズルと引き剥がした。
「何だよ坂本くんっ」
「お前は長野の傍で暫く反省してろ」
「楽屋は楽しむ部屋なのに何で駄目なんだよー」
「お前らが楽しくても他の人は迷惑なんだっつーの。頼むから勘弁してくれ朝から疲れる」
「・・・ごめんなさい」
おや、と坂本はビックリして、珍しく素直に謝る井ノ原を見る。
どうやら反省はしているらしい。
が、ここで甘い顔を見せては舐められる、と思い、坂本は井ノ原を長野に引き渡した。
「粗品ですが」
「え、結構ですv」
「ひでぇよ笑顔で断んなよ長野くん」
「もーよっちゃんってば冗談も通じなくなっちゃったの?」
「あは、そっかv」
コロリと機嫌を直す井ノ原に、坂本は可哀想な子を見る目線を送ってみた。
長い付き合いで分かるのだ。
今の長野の言葉はほぼ本気モードだったということが。
そんな長野だが、やはり井ノ原には甘く、隣で楽しそうに喋る彼の話を聞きながら相槌をうっている。
遠くでは、太一が松岡の話を聞いて爆笑していた。
坂本からすれば、悪友コンビは最強の男に好かれている分、役得のように見え。
二人のことを少しだけ羨ましく思うのだ。
「ちーっす」
入り口付近から声がして目をやれば、剛がトニセンの居る方に顔を向けているのが見え。
それを見た井ノ原は剛ちゃんvとよりテンションが跳ね上がる。
が、剛がすたすたと向かったのはそちらではなく、松岡達の居る方で。
すとんと松岡の隣に座ると、二人は太一を交えて談笑を始めた。
その様子を見て、井ノ原の頬がぷくーっと膨らむ。
それを珍しげに坂本と長野が見守っていると、井ノ原はすっと立ち上がり、二人の方に向かっていった。
不思議そうに彼を見る二人の前に立ち。
何を考えたのか、松岡と剛の間に無理矢理割り込んで座ってしまう。
「なに、井ノ原くん。どうしたの?」
「べっつにーぃ」
「コイツ、俺と剛の仲の良さに妬いてんだよ」
「妬いてねぇよっ」
ぷいっとそっぽを向く井ノ原はもはや子ども同然で。
珍しいこともあるもんだと、太一と松岡は顔を見合わせて首を傾げる。
そんな中、剛だけは楽しそうにうひょ、と声を上げて笑った。
「何だよ、剛」
「井ノ原くん、構って欲しいんだろ?」
「・・・なんで?」
「自分が居ないところで盛り上がってると寂しいんだろ?」
「・・・何で?」
「その反応がすっげぇ面白ぇからやってみろって健が」
どうやら井ノ原を使って遊んでいただけのようであるそれに、騙された本人は開いた口がふさがらない状態で。
しかもそこに健と岡田が揃って楽屋に入ってきたから、むがっと怒って立ち上がる。
「健ちゃんっ!」
「あ、井ノ原くーん!おはようっ」
「おはよう、いのっち」
「あは、おはよう〜v」
しかし、彼の怒りは健の笑顔であっさりと霧散されてしまった。
カミセン好きな井ノ原にとって、彼らの行為は例え悪戯でも可愛くて仕方ないのである。
その反応がまた面白くて、剛がうひょひょ、と笑い声を上げ、井ノ原に絡む。
珍しくカミセン全員に囲まれた井ノ原はかなり幸せそうにあはあはと笑った。
それをツートップが微笑ましげに見つめる。
「ねぇ、坂本くん」
「何?太一」
「これが普通なの?そっちのグループって」
太一に尋ねられ、坂本はうーんと唸った。
「そうだなぁ。普通だよな?長野」
「うん。カミセンが井ノ原に絡み過ぎてる感はあるけどね」
「「幸せそうだからいいじゃない」」
「・・・・・・あっそ」
もはや親馬鹿の域まで達した二人に、太一は呆れた目線を送ってみせた。
けれど、そういえばと思い当たる。
自分たちのグループも似たような現象が起こる気がしたのだ。
それを気の所為にしようと自己完結する手前で、どやどやとメンバーが揃ってしまった。
「おはよーさん」
「あ、おはようリーダー!」
剛と井ノ原が居なくなって手持ち無沙汰になっていた松岡が、リーダーの登場にいち早く気づく。
久しぶりじゃんお元気?と話し出す松岡はとても嬉しそうで。
それを太一が温い目で見つめていたら、ばったーんと大きな音を立ててドアが開き。
グループ一でかい男が、空気も読まずに松岡に抱きついた。
「はよっすマボーーー!!」
「げふっ」
「久しぶりっ超久しぶりー元気?元気??」
「あー元気元気。お前は・・・聞かなくても元気そうだなぁ」
「うん、俺元気!」
彼が犬だったら多分、尻尾が振り切れてるだろうというくらいに懐いている。
松岡はリーダーとの会話を邪魔されて少し唇がアヒルになっているものの、井ノ原と同じように後輩が好きなので、満更でもなさそうだ。
二人の様子を見て、リーダーが仲ええなぁとまったり口走る。
何だか幸せそうなのがムカつくので、太一もそこに参戦することにした。
とりあえず手近にあった長瀬の足にガッと技をかける。
「いでででででででっ太一くん太一くんっ痛い痛い痛いっ!!!」
「テメー先輩の俺に挨拶も無しっつーのはどういうことだ?」
「あ、寂しかったです がっいでっいでででででっイタ、イタタタタタタタタタターーーーっ!!!」
「そんなに新しい技かけて欲しいんだな長瀬」
「イヤです俺壊れるからっすみません失言ありまくりました許して許して太一くんごめんなさいっ」
「太一ぃ、その辺にしときぃや」
「リーダーって長瀬に甘いよねいっつも」
「何?松岡も優しくして欲しいんか?」
「バッ・・・ち、違ぇよ馬鹿っ!」
「あでっ・・・何すんねんなこの子はー」
「俺はお前の息子じゃねぇっ」
片方ではプロレス、片方では漫才が始まった彼らを、温い目で見つめる男、一人。
彼に坂本が声をかける。
「よう、山口。お疲れ」
「おはよう」
「お前らんとこ、いっつもあんなんなの?」
「まぁ、大概は」
「へぇ」
「お前らんとこと一緒じゃね?幸せそうでなによりだ」
「まぁな」
温い目が三人になり、それに囲まれながらわいわいと賑やかになる楽屋。
幸せそうなその情景に、ついついまったりと父親目線になる二人。
二人を含めてにこにこと笑いながら長野が見つめる。
まとまりの無いそれが彼らの日常であり、普通なのだった。
END
裕美さまリクエストの『坂本君と井ノ原君と松岡君メインでV6、TOKIO全員出演で現実設定でほのぼの』でしたー!
あの、どうしても11人全員出演が無理だったので、名前だけの出演の人がちらほらと・・・すみませんっ(へこへこ)
ぶいと東京全員で現実設定というとどうしても楽屋しか思い浮かばないボキャ貧な私です(遠い目)
こっそり『仲良しの俺ら流定義』の続きチックだったりします。5歳差コンビにきゅんきゅんな管理人です(笑)
ちょっと趣旨がずれた駄文ですが、楽しんでいただければ嬉しいですv裕美さま、リクエストありがとうございましたー!
2007.10.1