それは偶然という名のハッピーデイ(Side M)



真っ青な空。
浮かぶ雲を突っ切るようにして俺と井ノ原の戦闘機は真っ直ぐ飛んでいた。
標的はあの馬鹿でかい戦艦唯一つ。
それにぶつかることだけを考えて、ただただ真っ直ぐに。
横目でちらりと井ノ原を確認すると、同じタイミングでこっちを見たからにやりと笑い返してやった。
おー悔しがってる悔しがってる。


「井ノ原ぁ!」
無線を手に取り、名前を叫ぶ。
『なんだ松岡ぁ!今更怖くなったか?!』
「人が聞こうと思ってたことを先に言うな馬鹿野郎!」
『俺はもう突っ込むことしか考えてねぇよ!』
「同感だ!死ぬ間際までお前と同じこと考えてる俺が小寒いぜ!」
『あーホントだ寒気がするお前のせいだどうしてくれる松岡!!』
「とりあえず小言と文句はあの世に行ってからにしようや悪友!標的が近い!あと・・・・・・300メートル!」
『それもそうだな死ぬ気になりゃあ人間なんでも出来るってとこを見せてやるか!あと200メートル!』


距離をカウントしていく中で。
ああもうコイツとは出会ってからずっと腐れ縁だったな、なんて。
思っていたら、勝手に口が動いた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・井ノ原」


こんなことを言ったらアイツは笑うだろうか。
くっせーんだよこのナルシスト野郎が、なんて爆笑しながら。
でも、それでも言っておきたい一言で。
死んでしまうのだから、とどこか自棄になっていた部分もあるのかもしれないけど。


『なんだよ』
「俺・・・・・・・・・・・お前に会えてよかった」



噛み締めるように言った俺の言葉に。
俺も、と途切れ途切れに聞こえたような気がしたその瞬間。
それに被さるように物凄い衝撃と身体中にくる猛烈な痛みを受け。



意識が、飛んだ。









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誰かが話している声がする。
うるっせぇなぁ。
人が寝てるんだからもうちょっと考慮しろよその辺。
・・・・・・・・・・あれ、寝てるって俺。
死んだんじゃなかったのか・・・・・・・・・・・・・?


「マボが死んでるーーーーーーーーーーー!!!」
「死んでねぇよこの馬鹿・・・・・・・・・・っぐぁ・・・・っっ!!!!」
耳に突き抜けて聞こえてきた長瀬の叫びに反応していつも通りツッコミを入れようと起き上がった俺の体が悲鳴を上げ。
あまりの痛さに俺はベッドに沈み込んだ。
目に映ったのは瞳に涙を一杯溜めた長瀬で。
コイツも死んだのか?っていうか夢?いやでもこんだけ痛みあったら夢なわけないじゃんじゃあなんだこれなんて回らない思考をフル回転させていたら。
「マボが生き返ったーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
長瀬は目を大きく見開いてさっきよりも大きな声で絶叫し、ドタドタと足音を立てて病室を出て行った。
なんなんだアイツ。
何しにきたんだ一体。
現状を飲み込めない俺はとりあえず辺りをキョロキョロ見回してみる。
白い天井。
薬の匂い。
そして、横たわるミイラ状態の井ノ原。
よく見てみれば上下に胸が動いていて、しっかり呼吸をしている様子が伺えたのにホッとする。


・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・?


「何俺もしかして助かっちゃったの・・・?」
自分を見てみれば、隣の井ノ原とはさして変わりないミイラ具合で。
激痛に耐えながら無理矢理身体を起こした。


途端。


「松岡ぁぁあぁぁーーーーーーーーー!!!!」
「マボーーーーーーーーーーーーー!!!」


リーダーと長瀬のダブルタックルを食らい、激痛と共に再びベッドに沈む俺。
いや、ホント勘弁して。
泣いてくれてんのは嬉しいんだけど、痛ぇ。


「何勝手に伝令盗み見て勝手に行動に移しちゃってんだ無駄死にしようとすんじゃねぇよこの馬鹿野郎がーーー!!!」


すっぱーんと頭にチョップが決まる。
見上げれば仁王立ちの太一くん。
口調は厳しいけれど、部隊一涙脆い彼らしく顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
そしてその横には兄ぃが立っていて、俺の頭を優しく撫でてくれた。



・・・・・ねぇ。
俺、愛されちゃってるって自惚れてもいいのかねコレは?



「シゲ」
「あぁあ・・・そうやった、時間がないんやったな」
「時間?」
二人に埋もれながら首を傾げた俺に、
「もうすぐ上層部が崩壊するから、面倒ごとに巻き込まれないように逃げんだよ」
と、太一くんが説明してくれた。
って、上層部が崩壊?!
マジかよ、正気か?!
「井ノ原をこんな姿にしたアイツらには責任取ってもらわねぇとな・・・やて。全く、坂本も長野も井ノ原絡みになると無茶しよるんやから」
「ま、アイツらがしなくても俺たちがしたけどな」
にっこり達ちゃんスマイル。
目が笑ってないのが非常に恐ろしい。
坂本くんたちが先に動いてくれてよかったと心からそう思う。
「ってなわけでマボ!わけわかんないかもしんないけどとりあえずここから逃げますから担ぎますよ!!」
「・・・・・っあでででで!ちょ、長瀬!!井ノ原は?!!」
「イノッチは坂本くんたちが何とかしてくれるから大丈夫ですっ!ほらマボ大人しくして!!」
「ぐっさん、車は?」
「バッチリ。だん吉外に用意してある」
「ソーラーカーで逃げれるんか?!!」
「大丈夫。今日は雲ひとつない快晴だそうだ」
「へぇ〜そうなんや」
「何そこで二人して和んでんだよ早く出るぞ急いで!!」
太一くんの言葉のすぐ後に、大きな爆発音。
きっと坂本くんたちが暴れだしたんだろう。



なんて素敵なハッピーデイ。
のん気に寝てる悪友へ。
生きてるってやっぱいいもんだわ。
練乳たっぷりイチゴを嬉しそうに頬張る長瀬も見られそうで何よりだ。
次会った時はとりあえず途中で止まったままだった喧嘩の続きをと心に決めながら、俺はでっかい長瀬の背中の上で目を閉じた。



>マボイノお題『知ってる』の続編、マボバージョンでした。