おいでおいで 「おはよー」 「はよ」 短く終わった挨拶。 俺はソファに腰を下ろす。 今日はイノッチと一緒のロケで。 かなり久々なわけで。 いつぶりやろ・・・って考えても簡単に思い出せないほどで。 まぁ、面倒やから考えるのを止めて、本を開いた。 読みかけの本。 実はイノッチが俺に薦めてくれた本だったりする。 いっつも小難しいの読んでるから、たまにはこういうのもいいだろ?って。 手渡されたのは恋愛小説。 普段からこういうの読んどるん?と問えば、まぁねーと割とあっさりした答えが返ってきた。 内容はよくある流れの恋物語で。 ひとつひとつが短編集になってるから読みやすくて。 仕事の合間合間にちょこちょこ読んでたりする。 読んでいる途中でちらり、とイノッチに目を向ければ。 真剣な顔でノートパソコンと格闘していて。 ああ、あれ例の日記かなと。 思った辺りでその作業が終わったらしく、ぱたんと画面が閉じられた。 「何?」 俺の目線に気づいたイノッチが訝しげな顔をする。 かけていたメガネを外して、目と目の真ん中をぐりぐりしながら。 「何って、見てた」 「うん。見てたのはわかる」 「じゃあ、何?」 「聞いてるのは俺だってーの」 「いや、だから見てたんだって」 なかなか噛み合わない会話。 見てただけなのに、イノッチはその答えだとご不満らしい。 どうすればいいんだろう。 考えて、考えて。 「・・・・・・剛くんと健くんがおらへんと静かなんやなぁ、思て」 と、ふと思ったことを口に出してみた。 途端、緩む目元、口元。 「やきもち?やきもち??」 「・・・どこをどう取ればそう言った答えに持ち込めるんやろ」 「俺にはあの二人には構うのに俺一人やと構ってくれへんっていう岡田の心の声が聞こえた!」 「物凄い想像力やな。ある意味尊敬するわ」 「あは。もっと褒めて褒めて」 「褒めてないっちゅーねん」 びしっと返せば、なんだよーと拗ね始めた。 あ。 何か。 「今の、まーくんと博と一緒にいる時のイノッチみたい」 言うとキョトン、として首を傾げる。 本人には余り自覚が無いらしい。 けど。 「何だかおいでおいで、って言いたくなるわ」 うん、そんな感じ。 自分で言って酷く納得した。 博が構いたくなる気持ち、分かる。 普段はお兄ちゃんポジションに立ってるのに。 そんなイノッチが子どもみたいになる瞬間。 剛くんと健くんがいる時には絶対見せない顔。 こんな表情をいつも見られるなんて。 ずるいなぁ、まーくんも博も。 「・・・岡田って変な子だよな」 「おん、よく言われる」 「よく言われちゃったら駄目だろーが」 「ええやん。おいでおいでー」 「・・・・・・いくー。あ、それ俺が薦めた本じゃん!」 よかっただろ?と偉そうに言うイノッチはお兄ちゃんポジションに戻っていて。 俺は密かに心の奥で残念に思うのだった。 >この二人だけになるとゆったりとした空気が流れそう、なイメージから。 |