もう一回言ってみろ



※『知ってる』の日常風景です。



いつもより遅めに出勤した城島は、部屋に入った瞬間の張り詰めた空気に足を止めた。
このまま黙ってたらかなり気まずいとキョロキョロして。
まったりと隅のソファに腰掛けていた坂本を見つけ、そろそろと駆け寄る。
「なぁ」
「ん?」
「アレ、何?」
城島が首を傾げて指差す先には、頬を膨らませている井ノ原と松岡がいた。
ただし、何故か背中合わせで。
「何か喧嘩したらしいよ」
俺もよく知らないけど、と苦笑気味に状況を説明する坂本。
ふぅん、と余り興味なさそうに返答すると、城島はとすんと坂本の隣に腰を下ろす。
あの二人の喧嘩は日常茶飯事。
しかも大概くだらないので、誰も関わろうとしない。
きっといつも通り、気がついたら元に戻ってるんだろう。
「あ、オハヨー茂くん。遅かったねー」
「ぉん。おはようさん」
にこやかに近づいてくるは、長野博。
手にはスナック菓子(冬季限定の文字有り)を持って、口に放り込んでいる。
その笑顔に何か含まれたものを感じ、城島と坂本はぶるり、と一回身震いをした。
長野は二人の向かい側のソファに座る。
「ご両人、あの二人の喧嘩の理由、聞きたい?」
ニィと口の端を上げ、膝の上で手を組み前かがみになる。
拒否すると後でどうなるかわからないので、二人は同じタイミングで首を素早く縦に振った。




すると。
「本人に聞いてみた方が早いからね」
そう言って立ち上がり、スタスタと足を進めた。
張り詰めた空気の原因がある場所へ、遠慮など微塵もなく。
「「どわっ!」」
おもむろに二人の首根っこを掴むと、彼らを引きずって二人の方に戻ってきた。
軍の中でも山口と対張る位の怪力の持ち主である彼にとっては、自分よりでかい男を引きずるのは容易なことらしい。
「井ノ原、松岡」
「な、なんだよ長野くん」
「何すんだよ急に」
口を尖らせてぶーたれる二人に満面の笑顔を向け、一発。
「ごちゃごちゃ言わずに正座しろ☆」
「「・・・・・・!!!!」」
長野の言葉にかなりのスピードで姿勢を正す井ノ原と松岡。
ぴったりとくっついた肩がコツン、と触れた瞬間、ぴくりと反応して二人同時に睨みあった。
「ぁんだよ」
「今肩ぶつかったんだよ」
「だからどうしたたかが肩のひとつやふたつでウダウダ言ってんじゃねぇ」
「なんだとコラ」
「あ?やるかてめぇ」
いきり立って胸ぐらをつかみ合い一触即発の危機。
「誰が立ち上がることを許したの?」
にっこりと凄む長野によって、それはあっさりと回避されたが。
相変わらず膨れている二人に坂本と城島は首を傾げる。
「なしたん?松岡」
「・・・・・・うー」
尋ねられ、松岡は顔を背けた。
ほんのりと赤くなった耳を見て、余計分からなくなる。
喧嘩してるのに何照れとんのやこの子は。
「くだらないことで喧嘩してんだったら怒んぞ井ノ原」
「く、くだらなくねぇよ!だってコイツが坂本くんのこと馬鹿にするからさー!」
坂本に凄まれてとうとう口を割った井ノ原に、松岡が食って掛かった。
「あ?!お前だってリーダーのこと悪く言ったじゃねぇかよ!!」
「うるせぇ!坂本くんは引きこもりっつったの誰だコラ!!」
「おめーこそリーダーのこと化け物とか人間じゃないだとか好き勝手言いやがっただろーが!!」
「なにをー?!!」
「やるか井ノ原?!!」
「上等だ表に出ろ!!!」
「あぁお前とは近いうち決着をつけようと思ってたところだっつーの!!」
「奇遇だな俺もだよ馬鹿野郎が!!!」
既に周りの見えなくなった二人は再び立ち上がり、小競り合いをしながら部屋を出て行ってしまった。
外に出る前に軽い殴り合いが始まっている。
その姿を3人は呆然と見送っていた。





「・・・・・・あの子ら」
「・・・・あぁ」
「さすがリーダー大好きな子供たちだねぇ」
一人のん気にスナック菓子を頬張りながら長野が言う。
リーダー二組は彼の言葉に思わず微笑み。
重い腰を同時に持ち上げた。
「どこ行くの?」
「わかって聞いてんだろ長野」
「せやで。僕らの所為で可愛い子らが喧嘩しとるんやから、止めなあかんねやんか」
なぁ?と城島が言えばおぅ、と坂本が即答する。
そしてゆったりした足取りで悪友コンビの後を追いかけていった。
残されたのは長野一人。
「・・・・・・何しに来てんだろ、あの人たち」
ため息混じりにそう言うと、空になった袋をくしゃっと丸めて捨て、もう一袋(これまた冬季限定)の口を開けた。








リーダー二人が駆けつけた時、松岡と井ノ原の喧嘩は最高潮で。
容赦なく殴りつけ、殴られては立ち上がり向かっていく。
城島と坂本は顔を見合わせはぁと息をつき、パンパンと手を鳴らした。
「はいはいはいーそーこーまーでー!」
坂本の怒気を含む通った声に、ようやく二人の動きが止まる。
ぺり、と二人を引き剥がし、喧嘩終了。
まだ決着がつかずに目で戦いをしている松岡と井ノ原は城島と坂本にそれぞれ頭を叩かれた。





「ぁにすんだよぉー!」
「ここまで殴り合ったら気が済んだろーが」
「まだまだぁ!」
「いい加減にしねぇと長野に説教してもらうぞ」
「・・・・・・・・・ごめんなさい」
どうやら長野の存在は怖いらしい。
俺の言葉は聞かないのになぁ、と困る坂本。





「邪魔すんなよリーダー!」
「ほれ、ここ血ぃ出とるがな」
「な、いいっいいよそんなことしなくても恥ずかしいなアンタはっ!」
「怪我、せぇへんといて。心配になるやろ」
「・・・・・・・・・ごめん、なさい」
耳まで真っ赤にしながら素直に謝る。
その姿に城島はにっこりと笑みを浮かべた。





二人のリーダーが見つめる中、とりあえず和解の握手を。
引きつった表情で手を握り合う悪友たちが仲直りするまでにはまだ時間がかかるようだったけれど。




>マボイノお題その9。大好きなリーダーをコケにするのだけは禁句な悪友コンビ。