負けず劣らず。



「井ノ原って喋るよねー」
口から先に生まれてきたんじゃないかってくらいだよね、と長野くんが言った。
ちょっと待て、と俺は思う。
だって、この人だって結構喋るもん。
凄い時は俺よりも。
「それって俺と長野くんが一緒にいる時だけだよ」
ぱさりと雑誌を机に置いて。
坂本くんと二人の時とか凄いじゃん長野くんと返してみた。
まぁあの人がただ面倒で話さないのかもしれないけど。
「いや、俺は普通だもん」
「・・・・・普通じゃないよ」
「ふーつーうー!」
「違うもん!」
「俺にたてつこうなんざいい度胸だな井ノ原」
笑ってない。絶対この人笑ってない。
顔は笑ってるけど。
「すみませんごめんなさい俺が間違ってました長野さん許して焼肉奢るから」
「・・・まぁいいだろう」



でもなー、絶対喋るんだよな、長野くんは。
もそもそと長野くんから離れて。
向こうに座っていた坂本くんの背を押す。
「なんだよ井ノ原」
「実験実験。長野くんのとこ行って」
「なんだそりゃ」
「いーいーかーらーっ!!」
ぐいぐいと押せば、ため息をつきながらも長野くんの方に向かうリーダー。
「どうしたの?」
「いや、井ノ原が」
「しーーーーーーーーーっ!!」
坂本くんが余計なこと言いそうだったから、口に人差し指を立てて注意。
「・・・・・そうやってした方が怪しいぞ井ノ原」
「あ、そっか」
「・・・で、俺は何をすればいいんだ?」
「喋ってて」
「・・・それだけでいいのか?」
「うん。いいの」
すたすたとその場を離れて、ソファの裏にしゃがんでスタンバイ。
じーっと見れば、二人の視線が俺に刺さる。
「・・・見ないでよー」
「見られてると自然に話せないんだけど」
「あ、そっか」
言われて、片手で目を塞ぐ。
「さ、どーぞ」
空いた手を差し伸べて促せば。
少しの間の後、何故か二人が笑い出した。
「あっはっはっは!」
「なによぉ。ちょっと真面目にやってくれよぉ実験なんだから」
「井ノ原、馬鹿みたいだぞ」
「馬鹿だとー?!」
「よっちゃん、かくれんぼしてる子供みたい」
「こ、子供じゃないもん!!」
立ち上がって二人に近づくとまだ笑ってやがんの。
「俺はただ、俺より長野くんが喋るって言う証拠が欲しいのにー!」
そう叫んだら。
そんなことか、と坂本くんが苦笑して。
「長野も井ノ原も、負けず劣らずだって」
なんて言って、俺の頭を撫でてきた。
どうなのよ、これ!!
「そんなんじゃ納得できねぇよ!!」
「あ、はーい。俺も井ノ原に賛成」
「な!そうだよな長野くん!」
「うん」
白黒ハッキリつけて欲しいなーと長野くんは坂本くんに笑いかけた。
それを見て、坂本くんはずざっと後ずさる。



「どうしたの?坂本くん?」
「ハッキリしろよ。俺?長野くん??」
「どっちだっていいだろうが!」
「ダメv答えによっては今日は帰さないよ?」
「おーれーもー!」
「・・・っ・・・!」



俺たちの板ばさみにあって。
結局リーダー坂本の出した答えは俺の方が五月蝿いってことだった。



「なんでー?!なんでー?!」
「あーもう、そういうところが!」
「くっそー!今日は酒持って訪問するから覚悟しろよー!」
「うっわ、来んじゃねぇよ!今日はゆっくり寝たいんだよ俺はー!」




>とばっちりを食らうのはいつもリーダー。イノさんの方がヒロスよりは怖くないという判断は正しい(笑)