そこのアナタ。 そうそう。アナタ、アナタ。 幸せ、欲しくない? メイクミーハッピー 寂しい男の一人暮らし。 買い物の帰り道を歩いていた俺は、突然現れた男にそう尋ねられ、呆然とする。 だってそうだろ。 身なりはボロボロ、髪の毛はぼっさぼさで顔が隠れてるくらい長い。 隙間から覗く瞳は子供のようにきらっきら輝いてたけど。 全体的に目力が強くて怖い。 知り合いならともかく、見知らぬ人にそんなこと言われちゃ、ねぇ。 無視するしかないっしょ。 すたすたと足を進めれば待って待って!と声をかけられる。 仕方なく振り向いた俺はかなり後悔した。 ヤツの表情が捨てられた子犬っつったらしっくりくるような、そんな感じだったから。 こう、引きとめられるっつーか、無視出来ないっつーか。 「・・・・・・なんだよ」 「あの、ね。俺、ここんとこぜんっぜん飯食ってなくて、ハラペコなの」 「そりゃ飯食ってなかったらハラペコになるな。んで?」 「・・・出来ればでいいんだけど、夜ご飯をご馳走していただけないかなー、なんて」 えへへ、と笑う男。 悪びれもないその様子に、俺は怒りを通り越して呆れてしまった。 がっくりと全身の力が抜ける。 「・・・・・・俺が何にも作れなかったらどうするつもりだったんだよ」 「その心配はない!」 「なんで?」 「えーと、俺の勘は当たるから」 勘って。 今の時代で勘って、お前。 っていうか俺。 いつの間にかご馳走する流れになってるんだけど。 ・・・・・・なんで? 男を引き離すようにすたすた歩き出すと。 慌ててついてきては、横に並ぶ。 「今日は何?」 「ええと、ひき肉が安かったから麻婆豆腐でも」 買い物袋の中を見ながら言う。 そしたら目をキラキラさせて鋭く挙手。 「あ!それ俺の大好物っ!」 「やめた。ハンバーグに変更」 「それも俺の大好物っ!」 「やっぱやめ。豆腐のそぼろあんかけにでも・・・」 「はいはいはいっ!それも好き!大好き!!」 「・・・・・・嫌いなものを言ってみろ」 「レーズンとシイタケと鶏皮」 「・・・・・・」 再び買い物袋を覗いて、落胆。 該当するもの、無し。 あーあ。 これはご馳走しろっつー神様のメッセージかね。 話してみたら別に悪いやつでもなさそうだし。 万が一悪いやつで家に上がった瞬間金要求されてもうち、貧乏だし。 「・・・本当に幸せくれんのかよ」 「あげるよ!だって俺幸福運搬事務所所属だから!」 「・・・んな胡散臭ぇ事務所、信じらんねぇ」 「ま、俺の成功率は五分五分なんだけどね。新人だから」 「あ?!なら自信満々に言うなよ!」 「大丈夫大丈夫。食べ終わったらリーダー呼ぶからさ」 「そのリーダーってのは大丈夫なのか?」 「完璧!みんな幸せになって帰ってくよ!!」 「・・・ふーん」 にっこにこしながらリーダーってやつについて語る男。 それがあまりにも幸せそうで。 いつの間にか俺まで幸せな気分になる。 「お前、名前は?」 「智也!」 「智也か。俺は昌宏」 「昌宏・・・・・・じゃあマボだね!!」 「ま・・・・マボって初めて言われたぞオイ!」 「マボマボマボ。うん、ぴったり!」 満面の笑みをひとつ。 変なあだ名をが拒否する間もないまま勝手に決定。 ま、いっか。 短い付き合いだろうし、な。 「よろしく、マボ!」 「・・・・・・あぁ、よろしく」 差し伸ばされた手を掴み、握手をする。 俺と同じくらいの大きさの手。 何かを予感させる手触りに、鳥肌が立つ。 運命の出会いってヤツ? 俺の第六感がひしひしと訴えてくる。 幸せ、ね。 面白い。 見せてもらおうじゃないのよ。 >ツインタワーコンビ。短い付き合いで終わらないこと請け合い(え) |