ほら、手貸せ



雪のチラつく12月の半ば頃。
マフラーで首元を包みながら黒い空に向かって白い息を吐く。
お互い忙しい中まるで裏から調べて合わせたかのように俺と井ノ原のオフが重なって大した用事も何もなかったもんだから何故か一緒に遊ぶことになった。
そこまではまだ普通だ。至って普通の流れだったのだけど。
奴に案内されるがままに車に乗りたどり着いた場所が最悪だった。


「・・・・なぁ、井ノ原」
「なによマボやん改まってv」
「俺たち、ぜっっっったいこの場所にいるの間違ってると思うんだけど」


ふざけた悪友の顔面に拳をめり込ませながら言う。
目の前に広がるはかなり広範囲のイルミネーションとそれを見てラブラブイチャイチャを繰り返しているカップルの群れ群れ群れ。
そりゃクリスマスも近いですしねいちゃつきたい気持ちはわかるっちゃわかるんだけどってかこれが隣にいるのが可愛い女の子だったりしたら俺もきっと同様の行為を取るんだろうけど残念ながら隣にいるのは俺と同じ男だったりするもんだから苛立ち度増加しまくりだったりする。
しかし。
「俺イルミネーション見に来たかったんだよね〜!」
隣の井ノ原は至って楽観的。
多分、周りが全然見えていない。
綺麗を連呼しながら子どものように周りを見渡す。
ってかイルミネーション見たがる女はいるけど男なんてそうそういないと思う。


「今は結構凝ってんだなぁ」
「どれどれ」


井ノ原の言葉に俺もイルミネーションに目をやればただ飾られてるだけじゃなくて何かの形を作っていたり青が混ざっていたり(そういや誰かが開発したとか何とか言ってたっけ)意外にこだわった作りだったりして思わず見とれる。
「ほーぅ」
「あぁ、こうやって作るのな。よく考えてんなぁ」
「何お前、まさか自分ちの玄関をイルミネーションで飾っちゃおうなんて馬鹿みたいに単純なこと考えてるとか言うなよ」
じろりと睨みつけて言うと、井ノ原は細い目を一生懸命に見開いて俺を見返してきた。
「何お前まさかエスパーだったのか?!」
「ふっばれちゃしょうがねぇ実は俺は兄ぃ直伝のエスパー・・・・んなわけあるか!ったくエスパーじゃなくてもお前の行動なんて丸見えだっつーの。なぁホント馬鹿?お前んちイルミネーションつけても喜ぶ奴なんて買い物帰りに近所の通りかかったオバちゃんたちと馬鹿な友人共くらいじゃねぇかよ!」
「下手な一人ボケ突っ込みは見苦しいぞ松岡」
「俺 は わ ざ わ ざ お 前 に 付 き 合 っ て や っ て ん だ よ 阿 呆 ! ! ! ! 」
ぽんと俺の肩に手を置いた珍しく真面目な井ノ原の台詞を聞いてとうとうキレた俺は井ノ原の後頭部に思いっきりグーで突っ込みを入れた。







そんなこんなでようやく場違いなイルミネーションから開放されたと思ったら次は電気屋に直行されイルミネーション用の電球を無計画に買い漁った挙句井ノ原の家まで行くことになった。


「や、ホントふざけんなお前俺の貴重なオフを返せ今すぐ返せそして顔が見えないくらい遠くまで行って1ヶ月は顔見せんなテレビにもラジオにも出んな馬鹿野郎」
「そーんな冷たいこと言わないで付き合ってよマボやんvついでにこんなに大量に電球買ったんだし早く玄関に付けちゃいたいから手伝ってv」
「死ねいっぺん死ねっていうかいっぺんと言わずひゃっぺんくらい死んでしまえこの能天気野郎が」
「ついでのついでに晩飯もよろしくv」
「あーそうかそうか一人で死ねねぇのなら俺が自ら手を下してやるよどんな死に方がいい水死か首切りか自殺に見せかけた転落事故か俺の故郷の雪の中に頭から突っ込んで凍死って線でも全然構わねぇぞ気にすんなそれくらいの手間でお前がいなくなるなら安いもんだ」
「俺がいなくなったら寂しいくせにーv」
「誰がだ誰がっ!!」


喧嘩をしつつも憎めない癒し系の顔で犬みたいに頼み込まれ嫌だとも言えずに結局手を貸してしまう俺は大概お人よしだ。



>マボイノお題消化その5。イルミネーションを見てなんとなく。