運命ってやつがもしあるのならば。 俺とアイツはまさにそれに振り回されてんだろうか。 「「・・・・・・なんでお前いんの?」」 そんな間の抜けた言葉をハモらせながら。 二人して呆然と相手を見据えた。 ハローアゲイン・マイバディ とりあえず解説を。 余りにも話が飛躍しててついていけない方が殆どだろうから。 って誰に説明してるんだって話だけど、その辺はまぁ突っ込まないでおいて。 組織に歯向かったことで、俺と井ノ原は部隊のメンバーと逃亡せざるを得なくなった。 2組、総勢11人。 逃げるにしては非常に多い人数。 状況を考えなくとも、かなり目立つ。 そのため、両リーダーはお互い違う場所へ身を隠すことにしたってわけだ。 拠点である地球からかなり離れたところへ。 東西に、さっくりと。 方向は分かれども、本拠点は知らないまま。 だって、そんなこと知っていたらどっちかが捕まった時に居場所を吐く恐れがあるからだ。 追っ手が来ても恨みっこなし。 自分たちの部隊は自分たちで守る。 冷たいようだけど、それが最善の道だという判断が下されたのだった。 もう出会うこともないやろうなぁ、と寂しそうなリーダーの背中を思い出す。 兄ぃも、太一くんも、長瀬も。 俺だって、あっちの部隊が見えなくなるまでずっと、見てた。 忘れないで。 忘れないから。 そう、願いを込めて。 なのに。 今現在、俺の目の前には悪友の姿があるのだ。 本物かどうか、確かめるまでもなかった。 小さい頃から見知った相手、忘れるわけないだろう。 ヒュゴッ! 大きな音を立てて足元が爆発するのを、跳躍でかわす。 状況が飲み込めていない悪友の襟首を掴んで。 「えええ?!なにこれなにこれなにお前ちょっとなにやらかしたんだよ?!!」 「うるせぇ!買い物してたら見つかっちまったんだっつーの!」 その買い物は袋の中にもう半分くらいしか残ってない。 暴れて中身が飛び出てったんだよね。 多分旅に出たかったんだろう、よかったなぁジャガイモよ。 だから今日は予定変更、コロッケ止めてカレーにしよう。 お金の無駄遣いすんなって太一くん、怒るだろうなぁ。 まぁでも、食うもんありゃウチの人たちは黙るから構わないんだけど。 しっかし、今までこんな風に見つかることなんてなかったのに。 やっぱり何か呼ぶんだな、井ノ原の野郎は。 「ああもう俺まで巻き込むな!!」 「仕方ねぇだろ!どうせそっちだって追われてんだし一緒だろーが!」 「何をー?!」 小競り合いを開始した俺たちだけども。 高まる嫌な気配に恐る恐る辺りを見渡した、ら。 ぐるり、と。 見渡す限り追っ手の山、山、山。 「・・・・なぁ松岡」 「あん?」 「俺の目が間違ってなかったらなんだけど、もしかして俺たち包囲されてない?」 「もしかしなくても包囲されてるな」 「ど、どーすんだよー!俺今丸腰なんだぞ?!」 「は?!護身用のライフルくらい常に持っとけよ馬鹿!」 「だって今日は機体の整備と整体に来たんだもん!」 「いつだって護身は必要だろが!その点俺はいつもここに・・・・・・って、アレ」 「なんだよ」 「・・・・・・逃げてる途中にどっか落としたみてぇ」 「あぁ?!何してんだお前!!格好つけてポケットに差し込んでるから落ちんだよー!!」 「元々持ってきてねぇやつにゃんなこと言われたかねぇよ!!」 「五月蝿ぇっ!」 「ぁんだとっ?!」 ガヒュッ。 掴み合っていた俺の右頬と井ノ原の左頬を掠めて閃光が遠くに消える。 ぶわっと冷や汗が滲み出て。 俺と井ノ原は喧嘩を速やかに中断し、背中合わせに体制をとった。 「・・・とりあえずどうする」 「味方が少なく敵が多い場合は一点突破だろ」 「あぁ、トップチェッカー、か」 トップチェッカー。 作戦を遂行する際、敵の数が余りにも多い場合に最初に動く、所謂一転突破の隊形切り崩し役だ。 俺たちがまだ軍にいた頃は確かリーダーと坂本くんが変わりばんこにやってた。 敵わないだろう数の敵に突っ込んで、まるで舞うように鮮やかに敵陣の隊形を崩す姿は圧巻で。 それが格好良くて、絶対成り代わってやる、と。 井ノ原と二人でしょっちゅう戦法を真似したりしたっけ。 初めてやったそれがあまりにも上手くいったもんだから、調子に乗って実際に命令無視して敵軍に突っ込んだ時もあった。 結果、ものの見事に失敗して、お互い大目玉を食らったわけだけど。 「そういや現役時代は結局決着つかなかったな、その称号」 「この際決着つけとくか。どっちがトップチェッカーか」 「上等。言っとくけどお前には負ける気しねぇ」 「俺もだっつーの。あ、ちなみにお前機体どこに置いた?」 「あっちの方」 指差した方向はまさに、俺の機体のある方向で。 がっくりと肩を落とす。 「・・・何でそれまで一緒なんだよ」 「お前も?」 「だってあそこ以外だと金取られんだもん!」 「だよなー!駐機するのに金取んなっつー話だよな!」 「全くだ!・・・って話それたっつーの。じゃあ目指すは西、無駄な戦いはせずに機体まで!」 「おう!」 がつっと拳をぶつけ。 丸腰のまま二人揃って突っ込んだ。 ・・・・結果的には突っ込む前に体がふわりと浮いたのだけれど。 「ぎゃーーーー高いとこ怖いヤバい怖い怖い怖い死ぬ死ぬ落ちて死ぬっていうかもはや高いとこに上がるくらいならいっそのこと死なせてーーーーって兄ぃなんでここにいんのよ?!!」 「え?何でって・・・いつもより帰りが遅いからさぁ、迎えに来てやったらお前が丁度ピンチだったもんで」 夜飯確保のために出動した、とキョトンとした表情で失礼なことをさらりと言ってのける兄ぃ。 物凄い図なんですけど。 この人、操縦しながら俺を片手で持ち上げてんですけど。 人間技じゃねぇ。 ってか最早、人間じゃねぇ。 「なぁ、あそこのどっかで見たような細目っ子は誰だ?」 のん気にのたまう兄ぃの視線の先に目をやると。 これまた物凄い図なんですけど。 『井ノ原、リンチされる』ってタイトルがピッタリ。 って、落ち着いて観察してる場合じゃねぇ! 「兄ぃ!あれ井ノ原!」 「え?!何でアイツがこんなところにいんの?!」 「機体の整備と整体に来たんだと!それはいいから助け・・・・!」 宙ぶらりん状態で何とか救出の旨を伝えようとした俺の真横を、かなりの速さで何かが通り抜けていった。 こ、怖ぇ。 高い上に飛行経路すれすれ。 ここって、気絶していいとこ? 「松岡ーとりあえず登ってから気絶しろーぉ」 「あいよー・・・」 しがみ付くように機体によじ登れば、いくらか気持ちが落ち着く。 そんで悪友の行く先を見ようと下を見れば。 ヤツの姿は、どこにもなかった。 「あ、あれ?!イノ?!井ノ原ーーー?!!」 「松岡」 「なによ?!イノがいなくなったんだよアイツ敵にやられたのかもしんないから助けに行かなきゃダメだ!降ろして兄ぃ!」 「落ち着け。そんで上、見てみ」 「ええ?!」 言われて上を見れば。 ちょっと前の俺と同じ状況にある宙ぶらりん状態の井ノ原が。 そのまた上に、涼しい顔で井ノ原を片手で支える長野くんがいた。 こ、この人も人間じゃねぇ・・・!!! 「なーーーーがのーーーー!」 兄ぃがブンブン手を振れば、にっこりと微笑む。 「井ノ原がご迷惑かけたようで」 「いやいやこっちこそ。お互い様ってやつだ」 「そう言ってもらえると助かるかな。ほらよっちゃん、早く上がっておいで」 「ほ、ほわぁ〜〜〜い・・・っ」 よたよたと上に移動する井ノ原。 とりあえず、お互いに助かったみたいだ。 って、あ。 「「俺の機体は?!!」」 「「死にたいなら取りに行ってこい」」 ハモった問いとその回答に、がっくりと項垂れながらも。 頼りになる兄貴たちに感謝の意を。 そして、おもむろに無線を手に取った。 俺たちの寿命を延ばしてくれた、文明機器。 スイッチは入れない。 ただ、今思っている気持ちを吐き出したかった。 また会おうぜ相棒。 お前との出会いが運命なら、また会えるだろう。 だから、さよならは言わない。 『ハローハロー』 不意に聞こえた無線からの声。 『ハローアゲイン、マイバディ』 たどたどしい英語で綴られたそれだけを伝えて、スイッチは切れた。 >『知ってる』シリーズ完結編。どれだけ離れていても再会する運命だったりする悪友コンビが書きたかったのでした。 |