3. 張り合い 天井。 時折吹き出す白い煙。 俺を心配する声と、駆け寄ってくる足音。 差し伸ばされた手を拒絶して自力で起き上がる。 アイツの蹴り食らって誰かに手ぇ貸されなきゃ起きれねぇようじゃ終わりだ。 そん時ゃきっぱりレーベルの頭、降りるって決めてんだ馬鹿野郎。 「こんなもんかよ・・・大したことねぇな」 口の端を袖でぐいっと拭いながら立ち上がる。 軽い脳震盪のような揺れを感じるけど、それも見せないように。 んなもんで手、抜かれちゃ困る。 俺の前に立ちはだかる無駄にでかい男を睨み付ければ。 眉をくいっと上げて口を尖らせるという、特有の仕草をした。 「・・・章吉くん!映児くん!もう止めてよ!」 「五月蝿ぇ。コイツにゃ言ってもわかんねぇんだ」 「・・・ってなわけだ。裕介、口出すなよ」 悲しそうな表情で俺たちを引きとめようとする裕介。 心配すんな。 コイツと何か言い合う時は、言葉より拳の方が手っ取り早いんだよ。 お互い、馬鹿だからさ。 長い付き合いの中でそれを分かってるんだろう。 裕介からの二度目の制止は無い。 大げさなくらいのため息は聞こえてきたけれど、俺にしたらそれは肯定の意だ。 きっと、映児にとっても。 小細工一切なしで思いっきり突っ込んで蹴りを入れれば、吹っ飛んだ。 手加減はしてない。 する必要ないし、したらしたでアイツ、五月蝿ぇから。 仰向けになったその体は、ゆっくりと起き上がる。 「・・・あんなもんでキレるなんざちっせぇ男だな章吉ちゃんよ!」 長い腕から繰り出される右フック。 「あ?あの場所にあったのはあれだけなんだよ詫び入れろコラ!」 がら空きな腋にアッパー。 「詫び入れて欲しいくらい大事だったら目立つところにマジック使ってでかでかと名前書いて置いとけっつの!」 鋭い右ストレート。 「トイレに行って帰ってくる短い時間にやっちまうおめぇが悪いんだろうが!!」 顎に思いっきり拳を叩きつける。 「「ぜってぇ負けねぇ!!」」 ほぼ同時に顔面右ストレートを食らい食らわせて。 二人揃ってぶっ倒れた。 「・・・あーあ」 裕介は二度目のため息をついて床に横たわっている二人を見た。 「あのー・・・裕介さん」 「何?」 「この二人、一体何で殴り合ってたんすか?」 「・・・・・・牛丼」 「「「・・・は?」」」 レーベルの何人かが声を揃えた。 単語だけではよく理解出来ないらしいことを悟ると、説明を付属する。 「章吉くんの買ってきた牛丼を映児くんが食べちゃったの」 言いながら、もそもそと起き上がり喧嘩を再開させようとする二人に近づき、両方の額を叩いた。 その行為にレーベルの新入りらしき何人かは血気盛んに飛びかかろうと構えるが。 それを古株のメンバーが抑える。 「待てって」 「でも・・・っ!」 「いいから。裕介さんに任せとけ」 「何すんだよ裕介!」 「まだ勝負はついてないっつの!来い章吉!」 「おう!」 「帰るよ二人とも」 章吉と映児の腕を取って帰ろうとするも、振り払われる。 「邪魔するならお前も殴る!」 「右に同じ!」 どうやら意地でも決着をつけるつもりのようで。 裕介は何度目になるかもうわからないため息を付いた後、すぅっと息を吸った。 「・・・・・・・刑法」 「「??」」 ぼそり、と呟いた裕介の言葉に、首を傾げる二人。 「刑法第283条第1項脅迫の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役なお2人以上が共同して第1項各号に列挙された罪を犯したときは、各刑法本条に定めた刑の2分の1まで加重する!!」 「「!!!!!!(滝汗)」」 いくらアホでも有期懲役の単語くらいは知っているらしい。 急激に青ざめて直立不動状態に早変わり。 裕介はその様子を見て満足そうに笑い、二人の背中をぽんぽんと叩いた。 「今日お小遣い入ったから奢ってあげる。それなら文句ないでしょ?」 その台詞を耳にした瞬間、二人同時に満面の笑みになりぴょーんと飛び上がった。 「おー!奢りだってよしょうきっちゃん!」 「やったぜ映児さん!裕介、男に二言はねぇな?」 「はいはい。ただし二人が喧嘩しなければの話だよ」 裕介が言うと、映児と章吉は素早く肩を組み出す。 普通なら腕がぶつかりそうなところだが、息がぴったり合っているため問題ない。 「喧嘩なんてしません!俺、しょうきっちゃん大好き!」 「俺も映児さんが好きですvでも、裕介くんはもーっと好きでーすvv」 「あははは。ほら、行くよー」 迷惑かけてごめんねー、とレーベルのメンバーに裕介が頭を下げ。 その背中をはしゃぎながら二人が追っていく。 残されたレーベルの面々は、温い笑みを浮かべながらその姿を見送るのだった。 > な ん だ こ れ ( 知 る か ) サイコメ設定で最強裕介くんを書いてみたかったのでした。あの3人組大好き!! |