1.態度のデカさは超一級






初めて会った日。
バレーをやれと言われて集まった体育館で。
俺は剛と会話を交わした。





元々年離れてるし、こういう機会がないと話せない。
井ノ原がきゃんきゃん喚きながらも俺たちに主導権を譲ってくれる。
潤滑油としては最高のヤツだ。
にこやかな表情の博はすぐに打ち解けだしたんだけど。
こんな顔の俺はどうも、怖いみたいで。
困った。
きょろきょろ視線を泳がせれば、一人。
むうっとした表情で溶け込めないでいる男がいて。





「よろしく」
と、手を差し伸べれば。
ちらり、と俺に目をやって。
「・・・おー」
なんて無愛想に手を握ってきた。






今から考えれば剛なりに頑張った行動だったんだなぁって言えるんだろうけど。
その時の俺にとってはかなり逆鱗ポイントだったらしい。
外で厳しい社会を見てきたわけですし、ね。
年功序列。
フツーはお前から挨拶で。
しかも敬語も使わねぇのかよ?!
どういう躾されてんだコイツはよ!








そんなことをぐるぐる考えてたら。
剛は俺を無視してさっさと健のところに行ってしまった。
なにアイツ。
なんだアイツ。




































































練習が終わって井ノ原と長野と3人になっても俺の怒りは収まらなかった。
「なぁに仁王さまみたいな顔しちゃってんの坂本くん」
キョトンとして井ノ原が俺に尋ねてくる。
「うるせぇ!あんのやろぉ、俺が礼儀ってもんを叩き直してやる!!」
「あの野郎って誰よ」
「あの・・あのチビで茶髪の生意気なガキだよっ」
「えー剛?剛可愛いよねぇ長野くん」
「うん」
二人は顔を見合わせて頷きあった。
「どこがだどこがっ!体ちっせぇくせに態度だけでかいじゃねぇか!」
「だってまだ15歳だもん。成長期真っ盛りじゃん」
のほほんと言う井ノ原は論点がずれている。
「とーにーかーく!俺はアイツだけは無理!腹立つ!!」
「全く、子供なんだから坂本くんは」
「俺のどこが子供なんだよ?!」
「はいはい。今日は朝まで付き合ってあげるから」
ね?と長野の笑顔に半ば脅されるようにして。
俺は口を噤み、こくんと頷いたのだった。





>お題を見つけた瞬間、初期に仲の悪かったこの二人が浮かびました。
 ゴつんがまだ今みたいな余裕がない時期中心です。

























2.聞き捨てならないその一言






バレーをきっかけにグループを組むことになった俺たち。
V6という名前らしい。
グループに必要なのはリーダー。
さすがに下の3人にやらせるわけにはいかないだろうと。
俺と長野と井ノ原が集まり。
何故だか当然のように俺がリーダーに任命された。
「ってことでー今日からこの坂本くんがリーダーです!」
井ノ原が高々と宣言し。
ぱちぱちと手を鳴らされて悪い気分じゃなかった。


























が。















「は?アンタがリーダーなの?」





という剛の言葉にぴしり、と固まる。
今なんっつったお前・・・!
聞き捨てならねぇ。
っつーかアンタって誰だよ。
俺か?俺のことなのか??








「剛」
「だって、ここ仕切ってんのって井ノ原くんじゃん」
嗜めるように名前を呼ぶ健に、あっさりとそう返答する剛。
おい、俺はアンタで井ノ原は君付けっておかしくねーかちょっと。
「ヤダ。俺はリーダーなんてめんどくせぇの嫌いだもん。それに年だって坂本くんの5個下なんだから」
「え?!井ノ原くんって一番年上じゃなかったの?!」
「ぁんだと?!どーせ俺は老け顔ですよっ!!」
つーんとそっぽを向く井ノ原に、メンバー皆が笑う。






・・・・俺以外は。





















ぐに。
両頬に鈍い痛みを感じて我に返ると。
長野が俺の頬を抓っていた。
「にゃ、にゃに」
「坂本くん暗すぎ」
リーダーなんだからしっかりしてよね、と言われる。
そうだそうだ。
剛がなんと言おうと俺はリーダーなんだから。
これからしっかりしないと。
「・・・さんきゅ」
頬を摩りながら長野に礼を言うと。
なんてことないよ、という風に笑われた。





>軽く夫婦が入ってますがきにしないでください(笑)


























3.その口利けなくしてやろうか





そう、人に思ったのは初めてだ。
たった五分前の、剛のあの一言に。
俺は今まで溜まった鬱憤と共にブチぎれてしまった。
















「坂本くんってさぁ、五月蝿ぇんだよな」
ちょっと遅れたぐらいで怒るし。
少し服がだらしなかっただけで突っかかってくるし。
人のことそんなに干渉するんじゃねーっつーの。
そう、健と岡田に愚痴っていたのを、耳にしてしまったのだ。













今まではこういう言葉を聞いても長野にやんわりと止められてきた。
長野がいなけりゃ井ノ原に。
しかし、今日はあいにく俺一人で。
歯止めになるヤツは誰一人見当たらず。
俺の怒りも結構限界値に達していたのか。
ずかずかと断りもなくやつらの楽屋に入っていき。
剛の襟首を掴んで軽く引っ張った。
・・・つもりが持ち上がってしまった。
コイツ、かなり軽い。





「・・・っにすんだよぉ」
ガッと振り向いた剛は、俺の顔を見てあっという表情になる。
「ほーぉ。ある程度悪口に対する罪悪感は持ってるわけだ、お前でも」
「・・・悪口って、何が」
「さっきからお前の話してることは全部俺の耳に入ってました」
「・・・・・・」
「坂本くん!剛は正直なだけなんだよ!」
フォローに入る健の言葉が、やけに耳に響いた。
「あーのーな。正直でいいのは子供だけなんだよ」
大人の社会でまで正直でいたら、絶対叩かれるんだよ。
俺も長野もそうだった。
・・・井ノ原はちょっと別格な気もするけど。







「五月蝿ぇと思うなら言われないようにやれ。干渉されるってことはそれだけお前がなってないってことだ」
「・・・・・・」
「頑張ってもいねぇのに文句ばっか言うヤツなんか、ただのガキだ」
「・・・・・・」
「お前がしっかりすりゃ俺も何も言わねぇから」






言っててなんか説教臭くなってきたから。
俺は剛を掴んでいた手を離し、踵を返した。
楽屋を出ようとして、くるっと振り向いてみると。
剛が健と一緒に俺に向けてあかんべーをしていたもんだから。
一瞬冷めた頭にまた血液が上がった。
逆戻りしようとしたら、ぐんっと後ろに体が引っ張られる。
「坂本くんv」
おいたはそこまでね、と現れたのは長野で。
その後ろから剛ちゃん健ちゃん准ちゃん!と三人の名前を呼んで駆け寄る井ノ原が見えた。


























楽しそうにじゃれ始める3人をぼぉっと見つめてると。
長野がゆったりとした口調で話し始めた。
「・・・剛も健も、反抗期真っ盛りの年齢だからさ、仕方ないんだよ」
「・・・・・・」
「坂本くんだって15歳の時は荒れたりしたでしょ?」
尋ねられて、考えてみる。
15歳の頃。
確かに俺も周りに反発してて、怒られまくった記憶がある。
こくん、と頷くと、長野は笑って俺の頭を撫でた。
「そういう時、叱ってくれる人がいないと人間ダメになっちゃうから。だから、坂本くんは叱る人になってよ」
フォローは俺と井ノ原が頑張るから、と長野は言った。









ああ、もう。
俺ってどうして、いつも支えられてばっかりなんだろう。









「坂本くーん!剛ちゃんと健ちゃんが虐めるー!」
泣き真似をしながら俺にしがみついてくる井ノ原。
それを追って剛と健が近寄ってくる。
「だって井ノ原くんウゼーんだもん!!」
「坂本くんもリーダーなんだから何とか言ってよー!」
頬を膨らませて俺に訴える二人。
さっきまでの態度はなんだったのか。
でも、二人の目は少し不安で揺れていて。
悪かったと思ってるんだろうな、と思うと、愛おしくも思えてきた。
「何やったんだよ井ノ原」
「何も!俺はただ剛ちゃんと健ちゃんにでこちゅーしようとしただけなのにー!」
「あー・・・そりゃ井ノ原が悪い」
俺の決断に、井ノ原は納得できないと騒ぎ出し、剛と健の目はきらきらと輝いた。









反抗期に。
俺がして欲しかったことを。
俺が周りにされたことを。
あいつらにしてやればいいんだよな。
それだけのことなんだ。








だから俺は。
とりあえず、しばらくは説教臭いリーダーでいようと思ったのだった。




>怒るのは夫、フォローは妻。



























4.生意気言ってる割に





こんこん。





仕事のためホテルに泊まっている俺の部屋のドアを叩く音がした。
時間はもう12時を過ぎている。
ホテルマンは来ないだろう。
掃除の人なんて持っての他だ。
ってことは。




















・・・・・・・・・誰?

































恐る恐るドアに近づいてみる。
覗き穴・・・なんてものはついてない。





「誰だ?」
ドアに向かって問いかけると、俺、と返答があった。
声ですぐにわかる。
「剛?」
ホッとしてがちゃり、とドアを開けると。
俺が予想していた剛の姿はなく。
代わりに白いシーツがもそもそと動いていて。
「っっっ・・・・・っ!!!!!」
俺は悲鳴をあげそうな口を手で押さえ、へたり込んだ。
なにこれなにこれ。
お、おおお、オバ・・・オバケ・・?!





しかし。
そのシーツオバケからぴょこん、と顔が出てきて、安堵する。
「なんだよぉ。お前かーびっくりさせんなよー」
「言ったじゃん、俺って」
「そうだけどさ。なに、どうした?」
尋ねてみても、剛は何も言わずに俯くだけ。
どうしたんだろう。
そう思った俺の目に、微かにだけど震える剛の手が映った。
コイツも怖いのか。
からかってもいいんだけど、それで上手くいった試しがないことを思い出し。
「・・・・・中、入るか?」
とりあえずはと、当たり障りのない言葉を投げかけてみたら。
潤んだ目で見上げられて、こくんと頷かれた。









































部屋にあったお茶のパックにお湯を注いで。
それを剛に差し出すと、どうも、とお礼を言った後で口をつけた。
まだシーツを被ったまま。
たまにキョロキョロしている。
「あれ。お前そういやさっきまで皆といたんじゃないの?」
「・・・・・・んー」















そう。
ホテルに着くなり、井ノ原が夏といえば怪談話でしょと言い出して。
自分の部屋に集合だとメンバーに呼びかけていたのだ。
俺はそういう類の話は苦手だから、パスして自分の部屋にいた。
弱虫といわれようと構わん。
虫とオバケは苦手中の苦手だ。
断ったのは俺と岡田だったはずで。
他のメンバーは楽しそうに井ノ原の部屋に入っていったのを見た。
もちろん、剛の姿も。






「終わったのか?」
「うん」
「それで、なんでここに?」
「・・・・・坂本くんが、一人で寂しいかなって、思って」


















剛の嘘はすぐにわかる。
普段からたくさんつかれてるから。
でも、今回のはかなり可愛らしい嘘で。
怪談話が怖くて一人じゃ眠れないから俺のところに来た、なんて。
口が裂けても言えないだろう。









そうか。
いつも生意気言ってる割には、こんなところもあるんだな。


















「そっか」
「うん」
頷く剛の頭がかっくんと揺れる。
被ってるシーツのぬくもりに眠気がきてるのだろう。
「眠そうだな、剛」
「・・・ん」
「眠い時のお前危なっかしいから、ここで寝てけ」
とん、と背中を押せば。
ふらふらとベッドに向かっていって、こてんと倒れた。










「・・・さかもとくん」
「ん?」
「おれのまえにねたらぜってぇだめだかんな」










とろけた目で言った剛の言葉。
お前そりゃ怖いって言ってるようなもんだろ。
でも。
その様子があまりにも駄々をこねている子供のようだったから。
俺は笑ってああ、と頷いて見せた。
瞬間、ふにゃと安心した笑顔になって。
今度こそ本当に、剛は夢の中に落ちていった。












ベッドに近づいて寝顔を拝見。
普段は生意気だけど、寝顔は可愛いんだ。
ソファで寝ることを余儀なくされた俺だけど。
頼られることの嬉しさの方が、それよりも勝っていて、困った。











>このお題の中でこれを一番書きたかったんです(笑)





























5.可愛いところもあるんだな





「坂本くん、誕生日おめでとー!!」





ぱぱぱん、と鳴らされたクラッカーを頭から被り。
飛び切りの笑顔×5に迎えられて。
俺は部屋に入れずにただ驚いて立ち尽くす。
「なにボケッとしてんの。ほら、早く入って入って!」
「あ、あぁ」
ぐいぐいと井ノ原に背中を押され、部屋の中に入ると。
そこには、チョコレートを基本にしたケーキが用意されていた。
「もっときちんとパーティっぽくしたかったんだけど、時間なくてさ」
ごめんね、とすまなそうにする長野に、首を横に振ってみせる。







だって、俺祝ってもらえないと思ってた。
この時期色々忙しいし。
寂しく過ごすことになるのかと思ってて。
だから。







「・・・・・ぅお」
口からうめき声が漏れて。
目の前がじわり、と歪んできた。
「ぅっわー!坂本くん、目ぇ潤んでるぜー!」
人の泣き顔を見て、異様なほどに飛び跳ねて喜ぶ井ノ原。
作戦成功だな、と剛とハイタッチまでしてる。





















立ち尽くす俺に、長野がそっと耳打ちしてきた。
「今回は珍しく剛がやろうって言い始めたんだよ」
誰の誕生日でも何も言わない剛がねぇ、と長野は感嘆の声を上げる。
「坂本くんが年をとる日なんだから、お祝いしてやろうぜって」
忙しくても絶対出席!なんてメールを回したり。
ケーキの予約も井ノ原と一緒にしに行ったらしい。
「そう、なのか」
「うん。お礼言いなよ」






長野にぽんっと背中を押され。
俺は剛の前に立つ形になり。
剛は俺と目が合った瞬間、照れくさそうに笑った。







「・・・さんきゅ、剛」
「ん。俺が一番こん中で世話になってるし」
当然でしょ、と言ってにひっと笑って見せる。
その笑顔が今までで一番可愛くて可愛くて。
俺はぎゅううっと剛を抱きしめた。









「可愛いなーお前ー!」
「ぅげっ!坂本くんが井ノ原くんみてぇになったー!」
「ちょっとー俺の特権取らないでよリーダー!!」








>可愛いところも、っていうか可愛いところだらけです(リーダー談)






2006.9.19
ttp://lonelylion.nobody.jp/
リライトさまからお借りしました。