1.背伸びをしたり、しゃがんでみたり。





トニセンでは弟。
カミセンでは兄貴、みたいな。
そんな、俺のポジション。
大変そうに見えるかもしれないけど、結構気に入ってんの。





だって。
甘えたい時とか疲れてる時は上の二人に甘えられて。
たくさん騒ぎたい時はカミセンをからかう。
それぞれに俺の居場所があるから。





その都度。
俺は背伸びをしたり、しゃがんでみたりする。
坂本くんや長野くんと一緒の時はやっぱ、対等に並びたいわけで。
カミセンたちとは同じ目線で楽しみたい。
こういう気持ちがなくなっちゃったら、きっとこの居場所はなくなってしまうから。
それに俺はこの行為が嫌いじゃない。
むしろ、大好き。





これって俺だけの特権だもん。
大事にしなきゃね。





>トニとカミで役目の違うよっちゃん。



































2.手を差しのべる





ウチの末っ子ちゃんは最近モテモテなのである。
映画にCM、ドラマまで。
そりゃもう色んなところから引っ張りだこ。
ブイロク一家のお兄ちゃんとしては嬉しいところなんだけど。
マイペースな性格が災いしてか、疲れを溜め込んじゃってるみたい。
楽屋のソファで本読んでる姿はいつも通りだけど。
いっつも見てるお兄ちゃんは騙されないぞー(だからってストーカーじゃないぞー)
ソファの後ろから奇襲、決定。











「おっかだーー!!」








がばーーー







「なにすんねんイノッチー」
「えーと、抱擁?」
「そんなん見たらわかるわ」





ふぅ、なんてため息ついて。
俺に抱きつかれたまま本に目を戻す。
大人びた横顔になっちゃって。
まだ、25歳のくせに。





「何読んでんだよー」
「イノッチには言うてもわからん」
「おっ、上等だコノヤロウ。やるか?」
「やらへん。疲れとんねん俺」





そっとしといて、と絡めていた腕をぐいっと解かれた。
ノリ、悪いの。
でもそれと引き換えに手に入れた情報。
イノッチは見逃さないのです。





「・・・疲れた?」
「・・ぉん。人付き合い苦手やねん」
「だろうねぇ」
「思いっきり人事やなぁ」
「だってそうだろ?」
「そーやけどぉ」






口を尖らせて文句を言いたげな岡田くん。
俺はソファに後ろからダイブした。







ばふーん
よっ、10点満点。






「埃立てたら健くんに叱られるで」
「いーのいーの」






疲れてる准ちゃんのためだって言ったら。
優しい健ちゃんはきっと仕方ないねって許してくれるから。






足をきちんと揃えて座って。
ぽんぽんと太ももを叩いてアピールする。







「なんなん?」
「イノッチ膝枕」
「・・・そんな子どもみたいな」
「たまには甘えろよ」






な?と同意を促せば。
少し考えた後でこくん、と縦に振られる首。
そして。
俺の太ももの上は少し重くなった。







甘えたっていいんだよ。
それが例え誰だって。
頑張ったら自分にご褒美、あげないと。
ぎゅうぎゅうに詰め込みすぎて倒れちゃうんだからさ。







「お疲れ、准ちゃん」
「・・・子ども扱いせんといて」
「いーじゃん☆」
「・・・・・・・ええけど」





>メンバーの疲れに敏感そうだといい(いっつも見てるから)







































3.音を楽しむ





〜♪





ギターの奏でる音が好き。
それを元にたくさんの楽器が合わさって。
いろんな人の声が絡まって。
そんで、ひとつになった瞬間がたまらなく気持ちいい。





楽器に限らず。
この世界には色んな音があって。





例えば、朝鳥の鳴く声。
カーテンを開ける時の音。
風で木がざわめく音。
車の走り去っていくエンジン音。
おはようございますって挨拶も、音には変わりなくて。
耳にする度に心地よく感じるんだ。

















〜♪






あ。
坂本くんが歌ってる。
相変わらず上手いなー。
でも歌古いなー。





「懐かしいねぇそれ」
「だろ?」
ひょこひょこと近づいて言うと、歌を中断して俺を見る。
「でもなんで急に?」
「ふと頭に浮かんだんだよ」





楽しそうに声を出す姿を見て。
俺も一緒に歌いだした。
たまに歌詞がうろ覚えで不協和音みたいになっちゃうけど。
それはそれでまた面白い。










坂本くんの柔らかい声と、俺の声。









「なになにー?なに歌ってんの二人とも」








横から長野くんが興味津々って感じで入ってくる。
曲名を教えてあげる前に、長野くんも参加してきて。
思わず顔が綻ぶ。










坂本くんの柔らかい声と、長野くんの可愛い声と、俺の声。








隣の楽屋はカミセンがいるところなんだけど。
そこからも何か聞こえてきた。








どうやら、俺たちの歌声があっちまで届いちゃってるらしい。











坂本くんの柔らかい声と、長野くんの可愛い声と、健と剛のキャラメルボイスと、岡田の低めの声と、俺の声。







壁一つ隔ててはいるけど、確かに6人で歌ってた。





いいね。
音って、楽しい。





>音楽大好きなよっちゃん。
































4.嬉しみ、悲しみ





「今日の楽しみや嬉しみが〜♪」
楽屋で俺が作った曲を自分で歌ってたら。
健が首を傾げながら近寄ってきた。



「ねぇ、井ノ原くん」
「なんだー?」
「嬉しみって、日本語おかしくない?」
さすが、正しい日本語を使うことに気を配ってる健ちゃん。
伊達に難しい言葉使ってないねー!
「よくぞ気づいてくれました!これは俺の造語なのよ〜」
「作っちゃったの?井ノ原くんが??」
「うん」




楽しみとか悲しみとかって言葉あるじゃない?
それなら嬉しいのも嬉しみって言ったっておかしくないよな、って思って。
そう言ったら、急に。
健ちゃんが吹き出した。



「な、なんなのよぉ」
「だって、井ノ原くんらしーんだもん!」
「俺らしいから、笑うの?」
「そーだよ。勝手に元のもの変えちゃうの得意だね〜」



それは大好きです。
健ちゃんのスニーカーの色も勝手に変えたし。
家具とか買ってきたものの色が気に食わないと塗っちゃうし。



「ねぇ、井ノ原くん」
「なんだー?」
「嬉しみはいいけど悲しまないでね」



たまに酷く核心を突いてくる健ちゃんは。
普段通りに笑いながらも、少し心配してくれてる顔になってた。
だから俺の頬元は嬉しさでゆるゆるになる。
こーゆーところが可愛いんだよねぇ。



「健ちゃん愛してるっ!」
言って抱きついたら。
「ばっか、キモいよ止めろよ馬鹿井ノ原っ!」
って胸元辺りを強打されて。
呻いて仰け反った俺を放置して健ちゃんはどっかに行ってしまった。



俺、悲しみ。



でも。
健ちゃんの耳が真っ赤になってるのに気付く。
知ってるよ。
俺の事が好きで好きで仕方ないことくらい。



でへ。
俺、嬉しみ。



>イノさんお題より。健ちゃんはよっちゃんの変化に敏感だと嬉しい。


































5.ムードメーカー





井ノ原の存在って、本当に大きいと思う。
楽屋の様子を見て俺はふとそう感じた。
メンバーは井ノ原以外はみんな揃っていて、それぞれが自分の好きな事に没頭している。
楽しいんだけど、何か足りない気がする。
そう思っているのは俺だけじゃないはずだ。


本当に。
人を笑わせる天才と言うか。
いっぺんに人を引き込む技術を持ってる男だと思う。


ムードメーカーって言葉がぴったり合う。
イコール井ノ原でいいんじゃないかと思うくらいに。










「おーい、坂本くーん」
俺の目の前に手が現れて横に何度か振られる。
見上げれば剛がいた。
「なした?」
「や、ボーっとしてるからさ。ボケたかなぁって心配になって」
「お前なー!」
少し怒りを含んだ声で言えば。
ジイサンが怒ったーと剛は笑いながら健のところに報告しに走っていった。
誰だってボーっとしてる事くらいあるだろ。
人のこと年寄り扱いしやがって・・・まだ35だっつーの。
ぶつぶつ言っている俺の前に、ことんと。
・・・湯のみ?
「はい、おじいちゃん」
にっこりと。
長野がとっても楽しそうに毒を吐く。
「・・・お前1歳しか違わねぇだろ」
「ざんねーん。ただいま2歳差でございますー♪」
この男は本当に嬉しそうにそう言い放った。
言い返そうとしたけど、止める。
逆に追い詰められそうで怖いもん。


「おっはよーございまーすっ!!」


あ。


「井ノ原くんだー!」
「おっせーぞ井ノ原くんっ」
「ごめんごめーん!でも二人が寂しがってくれて嬉しいー!」
抱きしめにかかった井ノ原を健と剛はあっさり引き剥がす。
「別に寂しがってねーしっ!」
「寂しがってよー!ねぇ、長野くんは寂しかったでしょ?俺いなくて」
矛先が急に長野に向き。
ヤツは普段と変わらず井ノ原に微笑んだ。
「そうだねぇ。でも楽屋が普段より静かで快適だったよね?岡田」
「ぉん。そうやな」
長野の毒に同意する岡田。
そしてそれを聞いて太目の眉毛をきゅうんと垂れさせる井ノ原。
「皆ひでぇよぉ!ちょっとダーリー!何か言ってよー!」
腕を掴まれゆさゆさ揺らされる。
今度は俺か。


えーと。


「・・・ん。寂しかった、ような」



言ってこくん、と頷けば。
俺以外のメンバー全員の目が丸くなった。


あれ。
今のって、切り捨てるところだったか??


首を傾げていたら。
井ノ原の瞳がみるみるうちに潤んできて。



がばっ



「ダーリーってば、優しいっvv」


ぎゅむー


く、苦しい苦しいっ。
ぎぶぎぶ。



こんな俺たちの様子に。
残りのメンバー全員が腹を抱えて笑い出した。



「おい離れろ井ノ原ーっ」
「い・やv坂本くんが寂しくならないように今日は一日中俺が傍にいるからねっ☆」
「ぎゃーそれはえんりょしますー!!!」



ほら。
こんな風にいつも。
ヤツの周りには笑顔が溢れてる。
・・・・ちょっと激しい愛情表現ではあるけれど。



>イノさんお題より。空気の読めないリーダーにも対応します。

































6.メンバー大好き!






よっちゃんほどメンバーのことを好きな人はいない。
断言できます、俺。
俺がラーメンを好むくらい。
それくらい、よっちゃんはこのグループが大好きだ。



「俺がもし女だったら5股かけるぜ」



コンサートのMCで彼は自信満々にそう言った。
俺には絶対言えない言葉。
そんなこと想像したこともないしね。











「おれ、ほんとみんなすき」


いい具合に出来上がっちゃったよっちゃんが。
焼酎の入ったグラスを手に持ちながら潤んだ目で言った。
打ち上げ会場のど真ん中で。
泣き上戸始まっちゃったよなんて剛がからかったけど。
その言い方が余りにも柔らかい物言いだったから。
まるで子どもがお母さんが好きって言うみたいな口調だったから。
俺は毒を吐くのも忘れて微笑んでしまった。
かわいい子じゃない、ホントに。


「さかもとくんもながのくんもすきだよー」
「はいはい。ありがとよっちゃん」
優しく井ノ原の髪の毛を撫でながら、笑う。
坂本くんはトイレに出かけていないけど。
あの人も絶対、よっちゃんのこと好きだから。
「ほんとだよぉ?」
「うん。わかってるから」
笑って見せると安心したようにぱぁっと笑った。
「ごうもけんも、おかだのじゅんちゃんもすきだかんなー」
「ありがと、井ノ原くん」
「・・・ぉー」
「イノッチ飲みすぎ。目が二重になっとるで」
カミセンも反応はそれぞれだったけど、みんなどこかしら嬉しそうな顔をしてた。
くてん、と井ノ原がテーブルに伏せて。
夢の世界に旅立ったのは、それからすぐのことだった。


「・・あー、井ノ原寝たのか」
トイレから戻ってきた坂本くんが開口一番そう言って目を細める。
「タイミング逃したね坂本くん」
「え?なんでだよ??」
「さっきよっちゃん可愛かったんだよー」
みんなのことすき、って。
子どもみたいに笑ってたことを坂本くんに告げると苦笑した。


「素直だなぁ井ノ原は」
「年重ねれば重ねるほど好きって言えなくなるのにね」
「照れってもんがないのかコイツは」
「ないんじゃない?」


つん、と頬元をつつけば。
口をもごもごさせて愚図る井ノ原。
その様子に俺と坂本くんは同時に吹き出した。


「まだまだ子どもだ」
「だね」



俺はきっと。
みんなが大好きな井ノ原が大好きなんだ。
多分、メンバーもきっと。



>イノさんお題より。メンバーが好きで好きで仕方ないよっちゃんが好き。