■駄犬五題(まーくんside)





1.「待て」ができない







うちにペットが出来た。
名前はヨシヒコ。
どういう漢字か聞いたら、漢字って何?って返されたもんで頭が痛くなってカタカナにした。
ここまで読んだら気づくだろうけど。
ヨシヒコは普通のペットじゃない。
犬の耳が生えた、人間。






どこかの文献か、いつかの新聞か。
忘れたんだけど確かにどこかで読んだことがある。
話し相手になるペットを開発した研究所の話を。
でもそこは違法業務を行なってたらしく、すぐに潰れたと聞いた。
作られていたペットたちも処分されていったらしい。
人間の、勝手な都合のためだけに。
ヨシヒコは処分される直前に運ばれていたトラックから落ちて助かった。
・・・アイツの話はちょっとおかしかったけど、要約するとそんなもんだろ。





トラックから落ちてなかったら今頃ヨシヒコはいない。
それはとても悲しいことだ、と思う。
こんな、子どもみたいな純粋なヤツが殺されるなんて想像したくないし。
この笑顔がなくなることを、残念に感じるから。











「サカモトくんサカモトくん」





くいくい






「ぁんだよ」
「おれ、はらへった」
きゅうんと器用に鼻を鳴らし、見上げてくる。
無邪気で無垢。
ヨシヒコにピッタリの言葉だと思う。
まさにペットだな、と俺は心の中で呟いた。
時計を見ると、もうすぐ朝の8時。
俺は仕事で疲れてるからさっさと寝たいんだけど。
「はーらーへーったー!!」





ゆさゆさゆさゆさゆさ





遠慮気味だった行為が大胆に変わる。
どうしても食べたいらしい。






「・・・眠いから寝る」
「ごはんたべてからねようよー!」
「やだ。俺はこのまま寝たいの」
「ごーはーんーっ!!!」













耳元でぎゃんぎゃん騒がれたから、耳を手で塞いでため息をつく。
あー、ワガママ。
一応ペットだろコイツ。
ペットはご主人様の言うことを聞くのが筋じゃねぇのか?






「ヨシヒコ」
「なになにっ?」
「・・・待て」





とりあえず言ってみた。
気休め程度に。
ペットは言わないとわからないだろうから。






でも。
ヨシヒコはキョトンとして首を傾げてから。
「まてって、どのくらい?」
と聞いてきた。
どうしてそこで人間っぽさが出るんだコイツは。
「ぁー・・・と。俺が起きるまで?」
「えー!!だってサカモトくんぜったいおきないもんっ!!」
「起きるよ・・・いつかは」
「いつかっていつー?!」














ああもうコイツは。
どれだけワガママなんだコノヤロウ。









「いーから黙ってお前も寝ろ!!」
言ってヨシヒコをベッドの中に引きずり込んだ。
何すんだよーともごもごするヨシヒコをぎゅうぎゅうに抱きしめる。





知ってるんだ。
ヨシヒコは誰よりも寂しがり屋で。
ご飯よりも何よりも一緒にいるのを望んでることを。
なんでかはよく分からないけど。





あっという間にもごもごはなくなり。
代わりにすりすりと頭を擦り付ける動作になった。
「サカモトくーん」
俺を呼ぶ声もとろんとして、今にも寝そうだ。
返事をしないまま目を閉じていると、すりすりするのもなくなって。
ゆったりした寝息が聞こえてきた。





・・・ベッド、毛だらけだろうな。
まぁ、ワガママ言われ続けて寝れないよりマシか。





>飼い主さん一人称登場。ペットに弱い。
































2.絶対忠誠!







夜、起きて。
隣を見るとヨシヒコが寝てた。
あー、昨日一緒に抱き込んで寝たんだっけ。
予想通りベッドは毛だらけ。
耳と尻尾しか毛生えてないのに、どうしてこんなに毛だらけになるんだろう。
尻尾はくてんと床についたまま。
耳も伏せてる。
髪は寝癖ついてるし。
口開いてるし。
あ、よだれ。
こうやって見ると、ペットよりは子どもって言った方がいい感じだ。
髪の毛を撫でてやったら、小さく身じろぐ。





「ヨシヒコ」





名前を呼べば、少し唸る。
悲しそうに眉を顰めて、どんな夢を見てるんだろうか。










「・・・まーくん・・・」










小さく小さく。
ヨシヒコはいつもその名前を呼ぶ。
まーくんって、前の飼い主とかか?
いやでも、コイツは俺が初めての飼い主さんだって言ってたし。







・・・そしたら誰だ?













「ヨシヒコ、起きろ」
何故かイライラしてヨシヒコを揺らす。
細い目がゆったりと開いて俺を見た。
「・・・まーくんは?」
寝ぼけ眼でふわん、と俺を見上げる。
迷子の子どもが聞いてくるみたいで、心が和んだ。
「まーくんって誰だよ?」
「あんね、おれのにいちゃん」








にいちゃんっていっても、いちばんうえのにいちゃんでね。
おれ、ろくにんきょうだいで。
みんなとずっとずっといっしょで。
でも、ひとりずつどっかにつれていかれたんだ。
おとうとさんにんがいなくなったとき、おれないちゃって。
そしたらにいちゃんふたりがずっとなでてくれて。
だけどふたりともどっかいっちゃって。
おれだけがのこったんだ。








ぽつり、と話すヨシヒコの話は俺の質問からかなり外れていたけど。
どれだけ恋しいかは痛いほどに伝わってきた。
生まれた時から6人一緒で。
一人ずついなくなっていくのを最後まで見てたんだ、コイツは。







手を差し伸べると、もそもそ動いて俺の方にやってきた。
ぎゅうっと抱きつかれて。
すん、と鼻を鳴らす音が聞こえたから、泣いてるんだろうと思った。









「サカモトくんは、かえってこなきゃやだよ」
「・・・おう」
「おれ、ちゃんといえでおとなしくしてまってるから」
「わかったよ」






だからもう、泣くな。






そう、言ったら。
ヨシヒコは顔を上げ、きゅうっと口の端に力を入れて涙を堪えた。
「うん、泣かない」







飼い主さんの言葉は絶対だから、とヨシヒコは言った。
でも、それは違う。
絶対服従は俺の求めてるものじゃない。











「泣きたい時は思いっきり泣け」










でも、ずっと泣くな。
泣き続けることに意味なんてないから。
何かを引きずるくらいなら、前を見る方がよっぽどマシだ。







言った俺の顔をヨシヒコはキョトンとして眺めた。
「なんだよ」
「・・・それ、まーくんもいってた」
「またまーくんかよ」
「うん。でも、サカモトくんのほうがじっかんこもってる」
「・・・・・ったくお前は。一言多いんだよっ」
「いてっ」
ぽい、とベッドに放り投げると、なにすんだよーと抗議の声が返ってくる。







「そろそろ時間だし、用意しなきゃ」
「えー!いっちゃうのかよー!」
「お仕事だお仕事!大人しく待ってろ!」
「いっしょにいきてーよー」
「ダメだ!お前連れてったら売られちゃうだろ」
「そっかー・・・」
しょぼん、と項垂れるヨシヒコ。
どうしてこうもコイツは人を引き止めるのが上手いんだろう。
そんな顔されちゃ、無視出来なくなるだろうが。







「ちゃんと、帰ってくるから」
「うん」
「・・・お前、何でも食べれんの?」
「なんでー?」
「や、なんとなく。まぁ食べてみりゃわかるか」
「うん」








大人しく留守番してたらご褒美あげないとな。
言って撫でればにこにこと笑う。
帰ったら誰かがいること。
もちろん損得勘定しないやつが。
それはとっても幸せなことなんだろう。
だって、仕事に行くのにこんな楽しい気持ちになるのは初めてだから。






絶対忠誠。
まごころがあれば俺は十分だよ。








>無理矢理こじつけた感たっぷり(最悪)









































3.しっぽは口ほどに





ヨシヒコと喧嘩した。
理由はなんてことはない。
俺の帰りが遅くなっただけだ。
あんまりにも遅い遅い言うもんだから、俺がキレた。
仕事なんだからしょうがねぇだろワガママ言うんじゃねぇこのチビ、と。
思いっきり怒鳴ったらビックリしたように目を丸くして。
それからだんだん潤んできて。
バカーーー!と捨て台詞を吐いてソファの影に丸まってしまった。
垂れた耳。
鼻を啜る音が微かに聞こえる。













・・・ちょっと言い過ぎたかな。














「・・・ヨシヒコ」
「・・・・・・」
「ヨシ」
「・・・・・・」
「ヨーシーヒーコー」
「・・・・・・」











こりゃ重症だ。
ヨシヒコのヨの字を聞き取った瞬間駆け寄ってくるやつが。
呼んでも返事しないなんて。














ごめん、と言えればいいんだけど。
今回あいにく俺は悪くないから。
悪くないことに謝る主義じゃない。
そんなことしてたら女になめられて利用されて捨てられるのがオチだ。
職業柄、そう思ってしまう俺。
・・・ヨシヒコは女じゃねぇけど。









拗ねるヨシヒコを見ながら。
俺は手に持っていた袋を振ってみせた。











「これ、なんだー?」
ちら、とヨシヒコの視線が一瞬向けられる。
しかし、すぐにくるんと丸まってしまう。







ぱた、と。
尻尾が一回だけ揺れた。
興味有り、だな。











「お前食べたいって言ってたよな?たこ焼き」










ぱた












「この店に行ったから遅くなったんだよ。並んでたんだぜ」












ぱた













「中はとろとろ、外はカリカリ。あつあつのとびきり美味しいやつだぞ」


















ぱたぱた















ぱた・・・



































ぱたぱたぱたぱたぱたぱた





















「嬉しいんだろ」
「う、うれしくねーもんっ」















ぱたぱたぱた














「尻尾、振れてんぞ」
「こ、これは・・・っこれはおこってんだよっ!!いらねーもんっそんなの!!」
「あっそ。じゃあ俺が全部食べようっと。あー腹減ったー」








カタン、と椅子に座ると、あ、と悲しそうな声がした。
それを見ないようにして箱を開けると、ふわっと蒸気と共にいい匂いが立ち込める。
さすがグルメ長野博。
いい店知ってんな。
爪楊枝を刺してぱくりと一口。
んー、美味い。








くいくい








服を引っ張られた感覚。
それも見ないフリ。
いっつも俺ばっかり折れてるんだから、たまにはお前が折れろ。








「サカモト、くん」
「あー美味ぇなぁたこ焼き。俺が独り占め出来るなんて幸せだなー」
「・・・れ、も・・・」
「ぁ?聞こえないんだけどー?」
「・・・っっっおれもくいてーんだよぉーーー!!!」







じたじたじた








地団駄を踏んで怒り出すヨシヒコ。
口の端からはヨダレ。
漫画みたいな展開に半分吹き出しそうになりつつ、堪える。
あくまでも冷静に。








「いらないんじゃなかったのか?」
「・・・いるもん」
「じゃ、ちゃんと言え」
「・・・・・・・・ちょーだい?」






首をくりん、と傾げて言う姿は微笑ましくて、ついつい許しそうになるけど。
ここはちゃんとだな。





「違う。ワガママ言ったらどうすんだっけ?」
「・・・あー」
「ほら、言え」
「・・・ごめんなさい」





へこ。
頭を下げるヨシヒコに俺は満足そうに頷いて見せて。
その頭をわしわしと撫でてやる。





「よしよし」
「あやまったから、ちょーだい?」
「はいはい。元々お前のために買ってきたんだから、食えよ」
「わーい!!」
「お、おいこらっ」
許すなり箱に頭ごと突っ込もうとしたもんだから、慌てて止める。







そうだ。
たこ焼きの食べ方、教えてなかった。






「たこ焼きはこう食べんだぞ」
言いながら爪楊枝を持ち、たこ焼きに刺して食べる真似をする。
おー、見てる見てる。
真剣にその動きを見て覚えようとしているヨシヒコ。
俺は爪楊枝に刺さったたこ焼きを口元から離し、くるくると彼の目の前で回した。
ほっそい目でたこ焼きを追って。
ヨシヒコは思惑通りに目を回してコテン、と後ろに倒れる。
あっはっは。





「お前素直だなー」
「うう〜サカモトくんひっでぇ〜」
「悪ぃ悪ぃ。ほら、口開けろ」
ぱかん、と大きく開いたヨシヒコの口に。
たこ焼きをぽろんと入れてやる。





もぐもぐもぐ。
ごっくん。







「あーーうめぇーーー!!」
「だろ?・・・ってかお前口悪くなってきたな」
「さっきサカモトくんがこうゆってたもん」
「・・・俺のせいかよ」
「うまいーうまいー」





もごもごもご、と口いっぱいにたこ焼きを入れて嬉しそうにするヨシヒコを見て。
叱るのも忘れて微笑んだ。
ペットって、癒されるなぁ。







>やっぱりペットバカなサカモトくん。














































4.躾不足です







ずるずるずる




「・・・ヨシヒコ」
「なにー?」
「今何してるのかな?」
「え?えーと、ほっかいどうみそらーめんっていうのたべてるー」
「それはどこにあったやつだ?」
「サカモトくんのへやのつくえのうえー」
「・・・フタに何か書いてなかったか??」
「うん!ナガノってかいてあったよー」
「・・・・・・まずいな」
「???」









「ごめーん。坂本くん、俺忘れ物しちゃったー北海道期間限定品のミソラーメンなんだけどー」
「うわ。よりにもよって期間限定品かよー」
「あーナガノくんだーコンニチハー」
「こんにちわー・・・って、よっちゃんそれ・・・」





ぴしり、と空気が凍った音が聞こえた。
長野が。
長野が怒った。
しかし。





「んぐんぐんぐ。これ、おいしいねー!!」
ヨシヒコは変わらず無邪気にラーメンを食べて笑っている。
く、空気読めヨシヒコ・・・!
「・・そ、そう?」
「うん!ナガノくんもいっしょにたべよー!」
「あ、う、うん」





口に海苔をつけて箸をぶんぶん振るヨシヒコに。
長野は思わず頷いて隣に座った。
はい、と箸を渡されてずるずると麺を啜り。
「うん、美味しい」
と満面の笑みに変わる。
さっきまで引きつった笑みを浮かべていたのに。





長野の調子をも狂わせる。
恐るべし、ヨシヒコ。














その行き場のない怒りの矛先が俺に向かってるのは気のせい、だよな・・・?(滝汗)



















「らーめんって、おいしいねー!」
「気に入った?」
「うんっ!」
「そしたらこれから俺のお勧めの店に行っちゃおうか」
「ホントー?!やったー!!」
「勿論、坂本くんの奢りでねv」
「な、なんで俺が・・・」





文句を言いかけたその時。
長野はヨシヒコから離れ、俺の耳元に顔を近づけた。














「坂本くんの躾不足でこうなったんだから、当然でしょ?」













ラーメン一杯だけで許してあげる俺って寛容だよねーなんつって笑ってる長野。
笑ってんだけど笑ってない。
ついでに何気に俺の足がギリギリと踏みしめられてるんだけど。
これは、どうなんだ・・・!












「黙ってちゃわかんないんだけど??」
「・・・・・・・おおお、お、奢らせていただきます・・・!!(泣)」
「よしv」








満足そうに頷いてヨシヒコの元に戻る長野さん。
あの。
俺が躾けられてるような気がするのは気のせいでしょうか・・・・?








「なにしてたのー?」
「んー?坂本くんとこれからの予定について話してたのv」
「そ、そうそう・・・(う、嘘ばっか・・・!)」








>しつけ不足な坂本さんとよっちゃんで。坂本さんの飼い主は長野くんだったりして(笑)












































5.愛しくってしょうがない






「やだーーー!!!!!!」





じたばたじたばた。





「ダメだろヨシヒコー」
「やだ!!おれ、ナガノくんとサカモトくんといっしょにいるんだもん!!」
「よっちゃん・・・」
「俺も長野も仕事なんだっつってんだろ?」
「・・・・ぅぅぅ〜・・・」
「な、泣くなよ」
「よっちゃん、帰ってきたらまた遊んであげるから。ね?」
「ぅええぇー・・・やだよぉ・・・」
「ワガママ言うな!」
「ぅえーん!サカモトくんがおこったぁぁぁーーー」
「ううっ」
「・・・泣かれるの苦手なら怒らないでよ坂本くん」
「ご、ごめんなさい」
「うっ・・・うっ・・」
「よっちゃん」
「ぅうっ・・・うー・・・?」
「俺たちとどうしても一緒にいたいの?」
「うん・・・・うんっ」
「じゃ、大人しくするって約束する?」
「じっとしてればいいの?」
「そうだね。出来る?」
「・・・やる!おれ、おとなしくしてる!!」
「わかった。連れてってあげるね」
「お、おい長野・・・」
「いっしょ??」
「一緒だよ。でも騒いだらもう二度と連れてかないからね」
「うん!!」









という前フリの元で。
ヨシヒコは俺と長野の職場についていくことになったのだった。







しかし。








「この耳と尻尾、どーすんだよ・・・」
「ええと、パーカー着せちゃえば誤魔化せるんじゃない?」
「サカモトくんのパーカー?!おれ、きたい!!」
「なんで着たがるんだよー」
「だってサカモトくん、いいにおいするんだもんっ」
「坂本くんの匂いなんか嗅いでんのよっちゃん・・・って、犬だもんねぇ」
「納得すんな長野っ!ってかお前なんかって失礼だろ!!」
「だってよっちゃん犬じゃない。ねー?」
「ねー」
「お前も意味わかんねぇのに相槌うつな!!」
「「わーサカモトくんがおこったぁ」」
「キモいからやめろ!!」
「・・・・坂本くん、誰にそんな口聞いてるのかな?」
「ぁんだよ」
「この前の飲み会の後、この家まで送り届けてあげたお礼・・・まだしてもらってないんだけど?」
「うっ」
「どうなってんのかな〜?そこんとこは」
「・・・・・・・・・パーカーどこだっけなー」




触らぬ長野にたたりなし。
俺は大人しくパーカー探しに努めることにした。





「オレイ?オレイってなに?」
「お礼っていうのはねーいいことしてあげたお返しってことv」
「じゃあナガノくんはサカモトくんにいいことしたの?」
「そーだよv」
「いいないいなー!おれにもいいことしてくれよぉー!」
「五月蝿ぇ黙れ捨てるぞこのチビ!!」
「・・・・・・ぅう・・・」
「あぁっ・・・」
「・・だーから泣かれんの嫌だったら泣かすなっつってんだろv」
「は、はい・・・・」





え、笑顔が。
笑顔が怖ぇよ。





「ねぇねぇ、ぱーかーってどれー?」
「お、お前さっきまで泣いてたんじゃなかったのかよ・・・」
「よっちゃん、これだよー」
「うわー!」






もそもそとパーカーを被ってぴょこん、と顔を出す。
俺のパーカーは当たり前にぶかぶかでそれだけで服になってる感じ。
腕元から手は見えてこない。
フードを被せると、耳が隠れるどころか目元まで隠れてしまう。
みえないみえないと五月蝿いから、取ってやる。
・・・フード被ったら五月蝿くするんじゃねぇかよコイツは。
手元を伸ばしくんくんと匂いを嗅いでサカモトくんの匂いがするー、とヨシヒコは笑った。
そんな様子に俺の胸はきゅんとなる。






「あーもーお前ほんっとかわい・・・」
「かわいいよっちゃんっ!!!」
「ふぎゅっ!!」






抱擁したのは俺・・・じゃなくて長野だった。
どうやらお互いに同じ思いを抱いていたらしい。





でも。
先越されたっていうか、なんていうか。
行き場のない俺の手がカワイソウっていうか。
・・・も、戻しとこ。






「あのー・・・」
「もーよっちゃんウチ来ちゃいなよー!」
「ナガノくんのおうちー?」
「うん!ラーメンたくさんあるよー!」
「えっラーメン?!ホント??ならおれナガノくんちにい・・・」
「ヨシヒコーーっ!!!」






ナガノの誘いにラーメンで釣られてしまいそうになったヨシヒコを間一髪で止めた。
きょとんとして俺を見るヨシヒコ。
そんなかわいい顔してもダメなんだよ。





・・・かわいいけど。






「なぁに?」
「お前は、俺んちの子なの」






だからそっち行くなよ。
・・・・・寂しいだろうが。









って、言わないけどさ。
わかれよ。








「おれ、サカモトくんちのこなの?」
「そうだよ」
「そしたらおれ、ずっとサカモトくんといっしょなの?」
「おぅ」





頷いて見せたら、くるりんと長野の方に身体を戻す。






「・・・ナガノくん、おれ、サカモトくんとずっといっしょがいいんだー」





だからごめんね、と。
ヨシヒコは長野に頭を下げた。
それを見て、長野は楽しそうに笑う。





「あっはっはっは。うん、知ってるv」
「じゃあなんでお前ヨシヒコにそんなこと言ったんだよ」
「決まってるじゃない。坂本くんのその情けな〜い面を拝みたかったからv」




言いながらデコピンひとつ。
にっこりと女なら一発で落ちそうな微笑みで俺に毒を吐いた。
撃沈、俺。









>ヨシヒコを職場に連れて行った話はまた今度。
 お付き合いいただきありがとうございましたー!







http://lonelylion.nobody.jp/
リライトさまからお借りしました。
2006.11.1