やさしさのぬくもり
ふわぁっと。
息を吐いたら空に向かって白い煙が舞い、宙に消える。
秋って不思議だ。
卵忘れたから買ってきてくれ。
昌兄はそれだけを俺に言い、千円札を渡してからキッチンに消えた。
今日の夜ご飯のメニューはオムライス。
どうしてオムライスなのに卵忘れてくるんだろう。
肝心なところ抜けてんだよな、昌兄は。
「ごーーーーぅ!」
名前を呼ばれて振り向くと。
白い息を吐きながら駆けてくる健が見えた。
俺の元に着くなり、ばふっと何かを押し付けてくる。
「・・・ん?」
「コート!昌兄が寒くなるから着ていけってさ」
健の言葉にふぅんと適当に相槌をうってから、コートに腕を通す。
昌兄も相当な心配性だよな。
ポケットに手袋まで入ってるし。
まだ冬じゃないのに。
家で着てきたであろう健はバッチリ完全防備で俺を見つめている。
・・・・ん?
「お前までなんでコート着てんだよ」
「だって、俺も剛と一緒に買い物行くもん!」
「・・・一人でも行けんぞ俺は」
「いいじゃん!俺も行くのっ」
そう言い放ち。
健は俺の手を掴むとズンズン足を進め始めた。
あれ。
「健、手袋は?」
俺の手を掴んでいる健は素手で。
「あ、忘れた」
そう言ってからまぁいいや、と笑った。
よくない。
冗談じゃない。
風邪引いたらどうするんだよ。
不意に昌兄の言葉が脳裏に浮かぶ。
あー言う言う。絶対言う。
・・・・でも。
俺も健が風邪引いたりしたら、やだな。
たくさん考えて。
俺は物凄く良いアイデアを閃いた。
「・・・・ほらよ」
俺は左手の手袋を外して健に差し出した。
「片方?」
「おう」
「そんなことしたら剛まで寒くなっちゃうじゃん!」
ダメだよ、と首を横に振る健。
言うと思った。
でもそんな心配、いらないんだ。
「こうすりゃ平気」
言って、俺は健の右手を俺の左手でぎゅっと握った。
俺の右手には手袋。
健の左手にも手袋。
そして、お互いのもう片方は手を繋いだぬくもりであったかい。
「これでどっちも風邪ひかねぇ」
考え付いたアイデアが完璧だったことも。
健が風邪引かなくてすむことも、嬉しくて。
俺は知らないうちに笑ってたらしい。
「ありがと、剛」
はにかんだように笑う健の顔を見て。
照れくさくなった俺は、何かを言う代わりにぎゅっと繋いだ手に力を込めた。
いいんだ、言わなくても。
健ならわかってくれるもん、俺の気持ち。
>双子バージョン。
「こんにちはー!准の迎えに来ましたー!」
げんきでおおきなこえ。
たぶん、ようちえんのなかでいちばんおっきいんちゃうかなとおもう。
てにもってたほんをしたにおいて、こえのしたほうへ。
「よしくーーーーん!」
「准ちゃーーーん!」
ぎゅううっとだきしめられて、あったかくなった。
「さ、帰ろっか♪」
「ぉん!」
「ふーたーりー手ーとー手ーをーつーないでーみーれーばっ♪」
よしくんがじぶんでつくったおうたをうたっとる。
しっとるもん。
いっつもうたっとるからおぼえてん。
じゅんもうたいたかったけど、なんかはずかしい。
だって、みんなみとるもん。
「よしくん、みんなみとるで」
「いいのいいの!よっちゃん歌手になるの夢だから、今から予行練習しとくの!」
さぁごいっしょに!ってさそわれて。
ちょっとはずかしかったけどうたった。
「かなーしみーをのーせたーろけーっとはー、なみーだのーあめーをふーらせーてるー」
「お!准ちゃん上手いねー!」
ほめられてどんどんたのしくなってくる。
「「むなーしさーをまーぜたーぷらーいどはっ、とおーくのーおやーまにーとんーでけっ♪」」
ふしぎやなぁ。
よしくんといると、いっつもたのしい。
「・・・あ、准ちゃん」
ちょっとまって、ってよしくんがあしをとめた。
そんで、しゃがんでじゅんのてをとる。
つないでたてじゃないほうのて。
さむくてあかくなってて、ちょっといたい。
「手袋は?」
「じゅん、てぶくろないねん」
「なくしたの?」
「ううん。ないねん」
じゅんのいうことがわからんくてくびをかしげるよしくん。
ないねん、てぶくろ。
あるけどないねん。
「あるけどってことは、ポッケには入ってるの?」
「ぉん」
うなずくと、よしくんはぽけっとからじゅんのてぶくろをとりだして。
そんで、ほそいめをちょっとひろげた。
あなのあいたてぶくろをみて。
「きょうひっかけてあなあけちゃってん。みせたらまぁくんおこるやろ?」
「怒んないって。ちゃんと直してくれるでしょ」
「まぁくんいそがしいのに、そんなことたのめんもん」
きのうもきょうも。
まぁくんはいそがしそうにうごいてて。
ひっくんがかわりにいえのことしててん。
じゅんのてぶくろみせたらまぁくんまたいそがしくなるから。
だからないねん、てぶくろ。
「・・・准ちゃんってば、変なとこ大人なんだから」
じゅんのはなしをきいてよしくんはそういった。
「だって」
「・・・わーかった。まぁくんには内緒にしとく」
「ぉん」
「その代わり、俺がなんとかしてやる」
「・・・・ほぇ?」
「このままじゃ准の手が冷えちゃうもん。よっちゃんそんなのヤダ」
よしくんはかなしそうなかおでそういった。
「まぁくんに迷惑かかんなきゃ准ちゃんはいいんだろ?」
「・・・・ぉん」
「じゃあ決まり!」
にかっとわろうて、よしくんはじゅんをもちあげてかたぐるました。
そんで、じゅんのてをぎゅっとにぎってくれた。
「今日はこれで我慢してね〜」
「ぉん!」
「はーい!それでは目的地に向かいまーす!道案内を准ちゃんヨロシク☆」
「つぎのかどをみぎー!」
「ほいよー!右に曲がりまーす!!」
おっきいて。
じゅんのてがみえないくらい。
そんで、あったかい。
よしくんのては、じゅんのてぶくろなんやなぁって。
そうおもった。
つぎのひのあさ。
じゅんがおきたらまくらもとにてぶくろがあった。
あながあいたとこはぎざぎざって、ぬったあとがみえて。
まぁくんがしたのよりはうまくあらへん。
はめてみたらちょっとかぜがはいってくる。
「准、それどうしたんだ?」
ごうくんがふしぎそうにのぞきこんできた。
「よしくんにな、てぶくろなおしてもろてん」
「あーあ。これじゃダメだろ」
ためいきをつくごうくん。
でもな。
「・・・・ええねん」
じゅんはきのうわかったから。
いうと、ごうくんはわからないふうにくびをかしげてた。
とおくでひっくんがよしくんをしんぱいしとるこえがした。
てぶくろのことかな。
「よしくん」
「あ、准ちゃん」
ごめんね、ってよしくんはあやまってきた。
ひっくんはじゅんのてからてぶくろをとりあげる。
「あーらら。これじゃ穴開いてんのとぜんっぜんかわんないねぇ」
「ひっくん・・・もうちょっと慰めてくれてもいいじゃない」
まぁそのとおりなんだけどさ、ってしたをむくよしくん。
「じゅん、ええねん!」
ええの。
てぶくろなくても、よしくんがいればさむくないねん。
よしくんとて、つないで。
いっしょにおうたうとうて。
でんしゃごっこしてかえれば、さむいのなんてなくなる。
そうやっていったら。
よしくんはみるみるうちにえがおになって。
ぎゅうっとじゅんをだきしめてきた。
「准ちゃんってば、優しーーーい!!よっちゃん泣いちゃう!」
「ないちゃうん?じゅん、わるいこといったん??」
「違うよー!嬉しいから泣くの!もー准ちゃん大好きーー!!」
>准ちゃんとよしくんバージョン。
夫婦話は製作中。