05:だっこ





子供がだっこを強請るわけ。
それを、俺は知っている。






「ひっくん、だっこしてー!」
准一が博の足元に抱きついてそう強請った。
博ははいはい、と返事を返すとひょいっと抱き上げる。
「うわー高いー!」





嬉しそうな顔。
目の前の景色は何も変わらないのに。
そう、思っていた。
でも昔、よっちゃんに言われた言葉で俺の考えは覆された。





『こどもはね、目線が変わるだけで嬉しいんだよ。
 普段見る景色と全然違って見えるし、何よりも相手と同じ目線でものを見ている気になれるから』





高いところに登って景色いいなぁって思ってるのと一緒じゃない?と。
よっちゃんは平然として言ってたけど。
そういうのって大人になっちゃうとなかなか気づかないもので。
子供のまま大きくなったよっちゃんが、ちょっぴり羨ましかった。





「ひっくん、もっともっと!」
「はいはい」





>子供の目線は案外難しいものなのです。




2006.8.12