29:今度、生まれ変わっても





今度生まれ変わっても一緒になるって補償はないんだよね。
博の背にもたれながらそう言ったのは、下から二番目の弟、健だった。





「どうしたの、急に」
珍しいね、と博は付け加える。
そう。珍しいことなのだ。
神妙なことを言う健は、静かな快彦よりも珍しい。
健は背中に頭を預け、擦り寄ってくる。
「俺ね、今すっごく幸せなの」
とってもとってもね、と。
顔を見なくても満面の笑みであることは、博には容易に想像出来た。
「兄弟と揃っていられるって、いいよね」
満足そうに零れた言葉は、博にすとんと突き刺さる。























両親が逝ってしまった時。
2年間、兄弟がバラバラになった時期があった。
6人も養うというのは、普通の経済力でも難しいもので。
昌行は自分が何とかするから大丈夫だと言い張ったのだが、周りには当然聞き入れられることもなく。
結局、双子は東京の叔父の元へ。
末っ子の准は大阪の親戚の元へ引き取られていった。
絶対迎えに行くからな!と叫んだ兄の悔しそうな表情を博は今でも忘れられない。
泣くのを必死に堪えていた彼の横で、博は彼の分まで泣いた。
ちなみに、快彦は准と一緒に大阪に連れて行かれたのだが、次の日には家の前に座って泣いていた。






『快彦?!お前なんで・・・?!』
『・・・っうぇっ・・・おれっ・・まぁくんとひっくんと一緒がいい・・・っ』
『准一と一緒にいろっつったろ!』
『離れたくない・・・っやだもんっ離れるのやだっ』
『・・・・・・連絡、入れるからな』
『やだ!やめて!おれここがいいんだっ一緒がいいんだっ』







最初は昌行が連絡を入れて連れ戻してもらっていたのだが。
何度戻されても脱走して来る快彦に、親戚は呆れて連れ戻すのを止め。
それ以来、2年間は兄弟3人で暮らしていた。




























「昌兄と博兄が迎えに来てくれた時、すっごく嬉しかった」
噛み締めるように健が言う。
「『ウチ帰るぞ』って手、繋いでくれてさ。今日はお前らの好きなもんたくさん作ってやるって、笑ってた。涙声だったけど」
「うん」
「博兄も横でずっと笑って、剛を抱き上げてくれててさ」
「うん」
「快兄なんか涙でぐっちゃぐちゃになった顔で俺たちぎゅうぎゅうに抱きしめてくれた」
「よっちゃんが一番激しかったからね」
「うん。すっげぇウザかったけど、その時は嬉しかった」





すっと背中の重みが消え。
博はくるりん、と健の方を向いた。
目に入ってきたのは幸せそうな表情。





「こんなにいい兄弟、俺知らないもん。出来ればずっと一緒にいたいんだよね」
無理だけど、と健は笑う。








兄弟はいつかそれぞれの道を歩む。
自分たちのやりたいことをやるために。
独り立ちしていくものなのだけれど。














「今度生まれ変わってもさ、一緒だったらいいのに」










昌兄も博兄も快兄も剛も准もみんな。
一緒にまた「家族」をやれたらいいのに。
そうしたらずっと幸せなままなのに、と。
健は博の顔を見ながらそう言った。
彼の髪の毛を撫でながら、博はこつん、と健のおでこに額をくっつける。






「そんなのつまんないよ健」
「え?」
「今しかないから、今を大事にするんだよ」






ずっとずっと一緒だったら。
今一緒にいる時を大切なものとは思えなくなるから。
今しかない時だからこそ、大切に、大事に過ごそうと努力して。
その瞬間を宝物のように抱きしめることが出来るんだから。






「それにね。今はまだみんなずっとずっと一緒だから」







昌兄と俺はもうココから動く気ないし。
よっちゃんは離れたくないって駄々こねてたし。
下の子達はまだ小さいから。







「先の心配は俺たちに任せて、いっぱい甘えちゃいなよ」
言って、博は健に向けて笑顔で手を広げ。
健はそうだね、と言って博に抱きついた。








>変わった組み合わせで。ちょっと尻切れ。




2006.9.10