24:おさがり
「昌兄ーーー!これって誰の服ーーー?」
剛がバタバタと廊下を駆けながら大声をあげる。
見知らぬ服があったから尋ねに来たらしい。
くいっと引っ張ったTシャツ。
それを見た昌行と博は微笑み。
そばで鼻歌(ちなみに彼のオリジナルの曲)を歌っていた快彦は目を丸くした。
「剛!それ俺のじゃん!」
「えええ?!マジで昌兄?!」
「ああ」
剛の問いかけに昌行は即答する。
「よっちゃんがちっちゃい頃着てた服だよねー懐かしいなぁ」
隣にいた博も感慨に耽るような表情をした。
「やだよぉ!快兄のおさがりなんてー!」
博兄とか昌兄のだったらいいけど、と後に続いた言葉に。
快彦は不機嫌そうにぷうっと頬を膨らませた。
「別に穴とか開いてないし、着れるだろ?」
「やだっ」
「嫌なら着るなよな!」
弟の反応にふいっとそっぽを向いて快彦は部屋を出ていった。
その様子を見て、上の二人は呆れたように笑い。
剛は少し気まずそうな顔になる。
「快彦のおさがりは嫌か?」
「・・・・・」
優しい兄の問いかけにふるふると首を横に振る。
「そういう年頃だからねぇ。よっちゃんもすっごかったんだよ」
剛の頭をなでながら言う博に、視線を合わせる。
「快兄も?」
「うん。ねぇ、昌兄」
「あー、うん」
まぁな、と言葉を濁す昌行。
彼の様子に剛は首を傾げて見せた。
『よしくん、まぁくんのおさがりやだーー!』
『仕方ないだろー、弟なんだから』
『やだっ!ぜったいきないもん!!』
『よっちゃん、わがままいわないの。ね?』
『だって・・・・』
「『まぁくんのはプーさんだけどよしくんはミッキーのが欲しいんだもん』って言ってたなぁ」
「うわ、くっだらねぇ」
「でも剛だってそんなもんでしょ?」
「・・・・・まぁね」
おさがりじゃなくて新しい服が欲しかった。
それが、剛の本音。
でも、家庭の事情を知っているからなかなか言い出せない。
その気持ちがするっと表に出てしまったんだろう。
正直な彼だから、なおさら。
「・・・・快兄も俺くらいの時、あったんだ」
Tシャツを抓みながらぽつり、と剛が呟く。
「もちろん」
「・・・俺も快兄みたいになるのかな?」
「うん。どんどんおっきくなって、よっちゃんなんかよりもっとかっこよくなると思うよ」
大きく頷く博に、剛はとびきり満面の笑みを見せた。
「で、昌兄はなに黙ってるの」
「・・・・・・」
「どうせよっちゃんのおさがり騒動の一部始終を思い出して傷ついてるんだろうけど」
「な、なんでわかんだよっ」
「当時も見るからに傷ついてたよね、昌兄」
「・・・・・・だってよぉ・・・(泣)」
「はいはい、泣かない泣かない」
>シメはヘタレリーダーとしっかり者の妻で。
2006.8.29