19:ごめんね





言えない。
たった四文字なんだよ。
でも、言えないんだ。
・・・どうしてなんだろう、家族なのに。





























「・・・で、俺のとこにきたの?」
少し呆れたような笑顔で尋ねる博に、剛と健はこくんと頷いて見せた。






理由は簡単である。
双子は家の中でサッカーをして遊んでいた。
普通外でやるべきだったのだが、外は生憎の雨。
それでもサッカーをやりたい!と双子は手加減をしてボールを蹴っていた。





しかし。
どんどんプレーに夢中になっていき。
ばしゅっと剛が蹴ったボールを健がかわし。
その先にあったボトルに当たってしまった。
がちゃん、と音を立ててそれは下に落ち。
同時に「あああ!」と昌行の絶叫する声が響いたのだった。











「あれ、大事なお酒だったんだって」
ぽつり、と健が呟く。
友達に見つけてもらってようやく手に入った幻の一品だ!とかなんとか。
嬉しそうに言っていたのを博は思い出す。
「どうしよう、博兄」
「俺たち、どうすればいい?」
眼をうるうるさせて見上げる双子に、博は笑みを返した。
「謝ればいいじゃない」
「「でも・・・」」
「悪いことしたな、って思ってるんでしょ?」
聞くと、こくり、と頷く。
「だったら、その気持ちを込めて言えばいいんだよ」
そしたらきっと、昌兄も許してくれるから。
博の言葉に二人は同時に顔を上げ、お互いを見た。
こっくりと頷きあうタイミングまで一緒だったから、やっぱり双子なんだなぁと思う。
「さ、言って来い」
ぽんっと軽く二人の背中を押すと。
少しためらってから、双子は昌行のいる部屋へと駆け出した。





































「「まぁくーん」」
可愛い声が二つ(ただし一つは軽くオカマ臭かった)。
それに昌行は目をやった。
先には楽しそうに近づいてくる快彦と准一がいて。
いつもは緩む目尻も、ショックのためか暗いままである。
「うわ、なにその暗い顔っ」
「うるっせーなー・・・」
「まぁくん、なにかあったん?」
心配そうに覗き込む准一の純な瞳に、昌行はウソをつけなかった。
「・・・・・・これ」
少ない言葉だけを言い、割れたボトルを見せる。
「ああっ!これって昌行くんが大事にしてたお酒じゃん!」
「そうなんだよ・・・剛と健に割られちゃってさ・・・」
「だーから暗かったんだ」
「・・・・・・」





一口、飲んでさえいればここまでショックを受けなかったのかもしれない。
やっと手に入った大事な酒だったものだから、尚更。





でもさ、と快彦が口を開く。
「危ないところに置いてた昌行くんも悪いじゃん」
「・・・・・・」
「それに、剛も健も悪気なんてなかったと思うよ?な、准」
「おん!けんくんもごうくんもいいこやねん!」
必死に首を縦に振る准一。
「・・・・・・わかってる」









わかってたんだ。
あいつらが酷く後悔していたこと。
逃げていく時、不安そうにちらちら後ろを振り返っていたのも。
それが泣き出しそうな表情だったことも。








「おにーちゃんなんだから、そういうとこわかってあげないと☆」
ね?と下から覗き込むようにして快彦が言うと。
昌行は憮然とした顔で快彦をにらみつけた。
「な、なんだよぉ」
「・・・・いや、ありがとな。快彦」
素直にお礼を言うと、ぷわっと快彦の頬が赤くなる。





そして。
快彦の目が昌行越しに何かを捉え、線の様になった。
「ほら、昌行くん」
あいつら待ってるよ、と。
言いながら快彦は昌行の肩をぽんぽんと叩く。
振り向くと、そこには手を繋いだ双子が泣きそうな顔をして立っていた。



























「「ごめんなさい」」
「ごめんな」


















ほぼ同時に言葉が響いて。
それはすぐに笑顔に変わった。





>困った時、誰かが背を押してくれるもの。



2006.8.22