素直じゃないアイツは。
いつもいつも、何も無いように振舞ってやってくる。
ある時は寂しくて。
またある時は何かに悩んでいて。
でも、決してそれを表に出さずに。
その様子がまるで構って欲しい子どもみたいで、どうにも突き放せない俺が居るのだ。





























































































遠回しな約束の言葉













































































































「しょーきっちゃんっv」





雑誌コーナーでしゃがみこんでいた男は仕事中の俺を目にすると頬に笑窪を作ってそう言った。
現時点で最も聞きたくない声にしかとを決め込んで棚の整理を続ければ、呼んでもいないのにひょこひょこと近付いてくる。





「・・・何でしょうお客さま」
「お客さまぁ?ああそうだ確かに俺ぁ客だ。客は神様。神様に何を言われようと私たちはいつも笑顔ですそうだろ?」
「・・・何企んでんだお前」
「いやー神様お腹減っちゃったから章吉ちゃんに食べさせてもらおうと思ってv」
「帰れ」
冷たい言葉とセットでツンツンに立てた頭を平手でおもいっきり叩いてやれば、大袈裟な程に痛がる。
っていうか俺の手が痛ぇ。
「何すんだよっ」
「テメーがたかろうとするからだろ!」
「だって今俺お金ないんだもーん」
「給料日目前にあるわけねぇだろ俺だって」







真っ当な理由を返せば、しばし沈黙。























































































「・・・じゃあ貢げ」








































そう、くるか。











「お断りだ。もしお前がカワイイ女の子だったら考えてやってもいいけどな」
「酷いっ!章吉ちゃんと映子の関係はそんなもんだったの?!」
「誰が映子だ誰が。っつーかスタジオ空にして来て大丈夫なのかよ」
「裕介に任せてきた」
「え、よく任せられたな」
「恵美使えばラクショーっしょv」
にぃっと笑みを浮かべピースサインを作る映児。
うわ。
まぁ予想は出来てたけどよ。
「・・・お前ホント最低な兄貴だな」
「んははは。もっと誉めてくれ」
「誉めてませんイチミリも誉めてません」










最初はしかとする気満々だったのに、気付けば映児の相手をしてやってる優しい俺。
しかし、背中に刺さるは店長のキツイ視線。
傍から見りゃサボってる風にしか見えないらしい。
慌てて仕事を再開するも、映児のちょっかいは続く。





「なぁなぁ、章吉ちゃんいつ終わんのー?」
「後2時間くらいだよ・・・んだお前ホント勘弁しろ俺睨まれてんだからな」
「誰に」
「ん」





顎で店長を指せば、映児はそっちを見て。
キョトン、とした表情を浮かべた後店長に向かってんべっと舌を出した。





「何アイツ」
「店長だよ。見りゃわかんだろ」
「なーにをそんなビクビクしてんだ城北のヘッドが聞いて呆れるぜ」
「ヘッドだろうが何だろうがバイト中はただの下っぱなんだっつの。大人しくしてねぇと仕事が無くなんの」
だから帰れ、と言えば口元がふにょんとアヒルのようにとがる。
何だコイツ。
いっちょ前に寂しがってんのか?





って、駄目駄目。
しかとして仕事しねぇと裏でまたぐだぐだ説教聞かなきゃいけないし。
とばっちりを食らう前に、回避しないと。
俺はくるりと映児に背を向けて、棚の整理を再開する。















「しょーきっちゃーん」
「何だよ。まだあんのかよ」
「俺、暇なんだよー」
「知らねぇよ夏みかんのオーディション先でも探してりゃいいじゃねぇか」
「ねぇもん」
「探したのかよ」
「うん。こっからここまで全部」
映児は棚の端から端までを指差してがっくりと肩を落として見せた。




































ああ、もう。
仕方ねぇヤツだな。













































「・・・後2時間したら構ってやっから、大人しく待ってろよ」
俺の言葉に映児の表情たちまちぱぁっと明るくなる。
「ホント?」
「おう」
「いやーやっぱ持つべきものは章吉ちゃんだねぇv」
とか何とか言いながら抱きついてくる映児。
今夏なんですけど。
だからぶっちゃけ暑いんですけど。
ぐいっと頬を押せば、つれないんだからーと膨れた声。
俺をつってどうする。





「・・・お前は俺か裕介しか友達いねぇのか」
「いるにはいんだけどよ、疲れんだよ気ぃ使っちゃって」
「へぇお前でも気ぃ使えたんだな初耳だ」
「何その偏見ー」
「じゃあ今の俺にも気ぃ使えよっていうか使ってくれ正直仕事の邪魔だ」
「やだっ!章吉には気使いたくねぇ!」
「分かった分かった使わなくていいからちょっと黙ってろ」
「・・・・・・章吉ぃ〜」
「んな声出しても駄目」





べしっと頭を叩けば、ようやく大人しくなった。
どうやら俺との約束を取り付けることで映児の目的は達成されたらしい。
全く素直じゃねぇんだから。
映児はあっという間に静かになり、エロ本を手にして堂々と読み始めた。














が。














「しょうきっちゃーん」
「・・・何」
「飽きた」
「いやお前ホント空気読め」














結局バイトが終わるまでの2時間、喋り続けた映児に付き合った俺はいつも以上に疲れ。
楽しそうにはしゃぐ映児の横で眠気と戦い。
スタジオに戻った瞬間、裕介と恵美ちゃんに映児を任せさっさと眠りについたのだった。






END
恵美ちゃんの漢字は適当です(最悪)
2007.6.19