■セパレイト・ア・シガレット 空に向かって揺らぎながら伸びる紫煙。 先端を赤く染めるそれを咥え、屋上の手すりに腕を乗せて景色を眺める。 どこまでも続く青空、漂う白い雲。 変わり映えの無いその下で時間を持て余している、俺。 ぽろり、と灰を落とすそれを地面に落とし、足で鎮火した。 もう一本を取り出して口に咥え、火をつける。 「おーい」 背中にかかる声は聞き覚えのあるもので。 振り返れば章吉が居た。 「んだよ」 「サボりだっつの見て分かんだろ」 「・・・俺もだよ」 「へーそいつは奇遇だな。奇遇ついでに煙草くれ」 遠慮もへったくれも無く差し出された右手。 俺はため息をつきながら胸元を弄る。 取り出した煙草の箱の中身は生憎空っぽ。 どうやら今俺が咥えた分が最後の一本だったようだ。 「ねぇ。これが最後」 「は?マジで?」 「んー」 「・・・無いと分かると余計吸いたくなってくる」 「買ってくりゃいいじゃん」 「馬鹿。金ねぇの知ってんだろ」 「まーねー」 適当に返事をしていれば、それが気に食わなかったらしい。 むすっとした表情で俺を見返してきて。 何を思ったのか、俺の咥えている煙草に手を延ばし、ぴっと引っ張った。 当然、煙草は俺の口を離れて章吉の手元に渡る。 それを平然と章吉が口に咥えるもんだから、呆れた。 「・・・そんなに吸いたいのかよ」 「吸えないヤツの前で堂々とフカしてるヤツが悪ぃ」 「俺の所為にすんな」 「他に誰の所為だ誰の」 からからと笑いながら美味そうに煙を吸い込む章吉。 いや、ホント、腹立つ。 自分が嫌なことを人に実行するなこの野郎。 煙草を奪い返してやろうと手を延ばせば、紫煙をぶーっと盛大に吹きかけられて、咳き込んだ。 「・・・っげっほ・・・っ」 「馬ぁ鹿。俺から煙草取ろうなんて10年早ぇ」 「それは元々俺のもんだろーが!」 「そう思うならどっかにでかく名前書いとけよ」 「・・・・・・っ」 言い返す言葉が見つからない俺に、章吉はにやりと意地悪い笑みを向ける。 口元には煙草。 もうすぐ役目を終えそうな長さのそれに、俺は悲しみのため息をついた。 「最後の一本だったのにー・・・」 「っな、お前、そこまで落ち込むこと無いだろ」 「俺の大事な一本だったのにー・・・」 「何だよ」 「・・・あ、でもしょうきっちゃんと間接ちゅー出来たからいいやv」 「えすいません何嬉しそうにキモいこと言っちゃってるんですか映児さん」 「冗談だよ。馬鹿かお前」 「馬鹿はお前だろ」 章吉は煙草を踏んで鎮火しながら俺の頭を叩く。 痛いんだけどーと抗議すれば、けらけらと笑い出した。 どこまでも続く青空、漂う白い雲。 変わり映えの無いその下で時間を持て余している、俺と章吉。 一人増えただけのこの空間に、会話と笑顔が増えた。 >サイコメ小話はぽろぽろ浮かびます(笑)映児から煙草を奪い取る章吉ちゃんが書きたかっただけです(え) |