章吉の持っていった俺のメモによって事件は解決した。
最初は裕介も俺の力を疑っていたらしいんだけど、名指しした犯人が自白を始めたので信じるしかなくなったらしい。
っていうか、犯人も何も。
当の本人の斉藤絵里だったわけで。
始めは誰かに取られたと騒いだ彼女が、帰宅するとカバンの中に財布が入っていた。
中身も変わらず、取られたものも何もなかったらしい。
すぐにそれをクラスに言えばよかったのに、彼女は自分の自作自演だと思われることが嫌だったとか。
ま、クラスの殆どが彼女のことを慕っていたから、さして問題も無く。
見つかってよかったね、と事件は終了したのだった。






あ、ついでに。
2日前に俺が殴った生徒指導の先公。
ヤツは空手だのボクシングだのの段を持っていて。
強いと自負していたところに俺の拳を食らったもんだから酷くショックを受けていたらしい。
もちろん、他の先生には『階段で転んだ』と言い訳をして、誰かにやられたということは一切口にしなかった。
理由が言えないもんだから、俺はお咎めなし。
その話をした後、俺も殴っときゃよかった、と章吉がぼやいていた。



































そして、俺。
疎んでいた左手の力を章吉に受け入れてもらって。
学校を休んでる間、どうも暇だから。
最初はトランプの柄を当てて周りをビックリさせてたんだけど。
それもつまんなくなってきて、一緒に学校をサボっていた章吉を触って遊んでいた。
























『俺はもうお前にバレて困ることはひとつもねぇしな』

































さらりと言ってのけたそれは、強ち嘘ではなく。
読めども読めども、アイツの本心は口にしたものと同じで。








「彼女は?」
「いませーん」
「あ、ホントだ。じゃあ秘密は?」
「家に帰ってないこと」
「お、これも当たり。じゃあじゃあ、好きなものは?」
「エロ本」
「まぁこれは読まなくても章吉ちゃんの深層心理だから」
「お前頼むからそういうこと言うな。アイツらが誤解すんだろ」
「えーっていうか健康な成人男子は皆エロ本大好きだろ?!好きじゃねぇヤツなんて変態じゃん!!」
「熱弁することじゃねぇだろう!!!!」







ばっこりと叩かれて痛がれば、レーベルの奴らに笑われた。
ちなみに、コイツらは俺の力を知らないままだ。
章吉が知ってんだから、いつか知る時が来るのかもしれないけれど。
俺はまだコイツらのことを全然知らないし。
いや、章吉のことだってまだ全然知らないっちゃ知らないんだけど。
腹の割りどころが違うっていうか。
俺のことを知ってるのは章吉だけでいいっていうか。
上手く、伝えられないんだけど、そんな感じで。














































ただ。
一度だけ。
これだけ、章吉は嘘をついた。













「しょーきちー」
「ぁんだよ」
「俺のこと好き?」
「嫌い」
「即答かよぉー」
「あっはっは。お前だって俺のこと好きじゃねぇだろ」
「なぁに言ってんのよー俺はしょうきっちゃんラブなのにー!」
「馬ぁ鹿。言ってろ」





べしん、と俺の頭を叩いて、章吉は呆れた表情を浮かべ、部屋を出て行ってしまった。
残された俺は、アイツの座っていた椅子に手を触れる。
残留思念、だっけか。
幽霊が見えるのと同じで、本人に触らなくても、物に残った気持ちは読み取れる。
だから、アイツの心の中は読むことが出来た。






























































アイツの心ん中は。
好きとか、嫌いとかじゃなくて。
ただ、くだらないことで楽しそうに笑う俺と章吉が居ただけだったけど。
好きとか、嫌いとか。
言葉では表せない位の、居心地の良さ。
俺が章吉に対してたくさん感じている、それを。
アイツも同じように感じていてくれていたのが、嬉しかった。





・・・・・・なぁこれって。
少なくとも嫌われてないって、思ってもいいんだよ、な?






































































「・・・・・・あんがと、章吉ちゃん」







ぎゅう、と左手を右手で握りこんで、そっと目を開ける。
俺の言葉はすっげぇ臭くて。
きっと章吉が聞いていたら、笑い飛ばされるんだろうけど。
誰も、居ないし、な。
そう思って、俺はそっとその言葉を口に出し、笑った。





























































































































































































「映児くん!」














次の日。
完全回復した俺は、章吉と並んで学校に向けて歩いていた。
そんな俺の背に裕介の声がかかる。
振り向けばおはよう、とにこやかに挨拶をされた。
「あぁ、はよ」
「よぉ裕介。どうした?」
聞けば、裕介は周りをキョロキョロと見回し、俺の肩を叩いて耳を貸すよう促してきた。
ひょいと身長を合わせてやれば、声。












「あの力、誰にも言わない方がいいよ」












言葉の中に含まれたものが分からず、首を傾げる。
気持ち悪がるから、とか?














「なんで?」
「物体に残された思念を読み取る力なんてあったら、絶対悪用されちゃうから」





そんなのヤダ、と。
裕介は顔を顰めて悲しそうに俺に訴えた。
ぷわ、と胸に溢れる嬉しさ。
コイツも他の人とは違う。
この能力があることで気持ち悪がったりはするけど、逆に俺の心配をするヤツなんて、初めてだ。











「わーかりました。裕介ちゃんに言われたら断れないから俺」
「ふざけないでよ映児くん!」
「裕介。コイツは元々こういうヤツなの。本当はすっげぇ嬉しいんだぜきっと」
「何でわかっちゃうの章吉ちゃん?!エスパー?!」
「お前は顔に全部出んだよ」
がつっと肘で脇を小突かれ、大袈裟に痛がってみる。
「止めてしょうきっちゃんSなの分かってるからヤメテ」
「誰がSだお前がドMなんだろうが!!」
「二人とも朝からそういう危ない話題止めてよっ!」
「「おぐっ」」
裕介のカバンが俺と章吉の頬を直撃した。
え、ちょっと。
章吉ちゃんの肘より数倍痛いんですけどこれ。
「じゃあね!!」
何故かぷんぷんと怒りながら去って行こうとする裕介を見送っていると。





































「お兄ちゃん!」










































今度は恵美の声に止められた。
振り向けば、恵美の手にはお弁当。
「ぁんだよ」
「ついでに作ったからあげる!」
「・・・ついでかよ」
がっくりしながらも弁当箱を受け取る。
金が無い時、こういう差し入れは正直助かるし。
・・・お兄ちゃん的にはちょっと嬉しい。
さんきゅーと言えば、恵美はにぃっと笑みを浮かべる。
弁当箱を大事にぎゅむ、と抱きしめていてふと、目線を上げたら。
目を真ん丸くして静止している裕介がいて。
隣の章吉も俺を小突くもんだから、ああ紹介しろってことかと気づいて、行こうとした恵美を呼び止める。







「ちょ、恵美」
「何?」
「こっち俺のダチの章吉。あれが裕介」
「おいモノ扱いすんな。恵美ちゃんかー俺章吉。ヨロシクー」
「よろしくお願いします」







文句を言いながらも自己紹介を始める章吉に対して、裕介は未だ恵美を見たまま静止していた。
ははーん、読めたぞ。







「ゆーすっけちゃーーんv」
「うっわっ!」
そろそろと近づいてぽん、と肩を軽く叩けば、大袈裟なリアクション。
あーウブだねぇこの子は。
そっと耳に手を当てて小さく言う。
「もしかして、惚れちゃった?」
俺の言葉に物凄い勢いで裕介の顔が赤くなる。
「そ、そんなこと・・・っ」
「照れなくていいんだぜ?お兄ちゃん的には裕介ちゃんならバッチリオッケーだしv」







っていうか勿体無いくらいだと思うんだけど。
あの俺に似た性格不良女恵美。
見た目も俺に似て結構イケてんだけど、貰ってくれるヤツなんてそうそう居ないだろうし。
・・・・・・多分。
お兄ちゃん放任主義だから恵美の恋愛なんて知らないもーん。
まぁ、友達の裕介ちゃんのために一肌脱ごうかな。
裕介を引き連れてひょっこひょっこと大股で恵美に近づく。











「恵美、恵美。こいつ裕介。すっげぇ頭良いからお前家庭教師でもしてもらえ」
「え、ちょ、映児く」
「いいんですか?!あ、でもウチお金無くて・・・」
「友達プライスでいいよな?裕介っ」
言ってからひそ、と再び耳打ち。
「そん代わし家庭教師中は二人っきりにしてやっからさv」
この条件に、裕介は少し戸惑った後こくんと頷いた。
一回話し始めるとすぐに打ち解ける性格で、裕介と恵美は自然と楽しそうに会話を始める。
うん、いいんじゃないの。
ニコニコしながら見ていると、章吉の肘がまた俺の脇腹に入る。
痛っ。






「何すんだよっ」
「ニヤニヤラブラブしてるとこ悪いんですけど、走らねぇと遅刻すんぞ」
章吉の声に時計に目を落とせば、残り時間3分。
「げ!裕介ぇ、時間ねぇぞ急げ!!」
「ええっ?!あ、恵美ちゃん、またね!」
「はいっ!お兄ちゃん、裕介さん脅したりしないでよー!」
「しねぇよ失礼だな!」
ぷうっと頬を膨らませて見せると、襟首を掴まれぐいっと引っ張られる。
「えーいーじっ!」
「章吉ぃ〜苦しいんだけどー」
「いいから急げって!妹とじゃれんな!」
「おうよしょうきっちゃん。じゃあ学校まで競争ー!」
「競争したくなくても走るっつーのっ!」








べしっと突っ込み。
突っ込み返そうと思ったら、走り出す。
負けじと足を動かせば、横には楽しそうな笑顔があって。
それはもう、前みたいに曇ってたり悲しそうでもなかったから。
思わずつられて俺も笑顔になる。






























































初めて出来た友達。
しかも、二人。
変なところがよく似た、似たもの同士の俺たちだから。
きっとこれからも上手くやっていける。
そんな、人生初の確信を抱きながら、走る。
















もう空は見ないで、ただ、真っ直ぐに。














END
終わった・・・・・・!(放心状態)
最終話が特に難産でした。
というか、話がダラダラしちゃったので切ったら短くなっちゃって。
最終話だけ短いのも何だかなぁ、と。
そんで最初はカットしていた二人のじゃれ合いを加えました。
実は出て行った章吉ちゃんがドアの前で映児の言葉を聞いてたなんて裏設定まであったりして(笑)
妄想は果てしなく続きます。本当に大丈夫ですかね私は(全くだ)
と、いうことで初サイコメ長編でしたが、管理人書いていてとっても楽しかったので、またやるかもしれません。
言うだけ言っといてしかとするかもしれませんが(笑)
楽しんでいただければ、嬉しいです。
2007.7.2